中井流マシンSTYLE原点

中井 啓(千葉)

CARBOY1997年2月に掲載された、
中井くんです。AE86を肌色にペイントして、
同時に興味を持ち始めたポルシェ沼に
足を踏み入れていく時期でした。

    ※以下、当時のまま掲載させていただきますので、※
    ※価格、仕様等は変更されている可能性が大です)※


 公道を走らせれば、絶対に負けない!と中井クンは言う。高速じゃパワーの差でおいていかれるけど、一般道で勝負となったら、オレは速いですよと言う。なにしろ、階段でもどこでも、クルマで降りてしまう中井クンである。
 チーム名である『ROUGH』は、荒っぽいとか、粗野なという意味を込めている。上手いドライバーだと言われるよりも、熱いドライバーと言われたい。これが中井クンだ。
 峠歴は長い。AE86一筋で、ハイパワーマシンに乗り換えることなく、自分なりのスタイルを保持しながら、いつの間にか「中井啓という生き方」があるんだと、相手に印象づけてしまうようになってきた。


 もちろん、まだ若い。まだまだ足りないところがいっぱいある。だけど、ちょっと足りないくらいが、ちょうどいいのだ。全部が全部バランスとれていたり、全体的にまとまっていたりすると、人間ってのは、どうも魅力に乏しくなってくる。
 そういう意味で、中井クンは、ほどよくアンバランスである。
 礼儀正しい面と、助手席で土足のままドーンとダッシュに足を投げ出す面とが、ほどよくミックスされているのが、「中井啓という生き方」なのだ。カッコイイ。そう言えば、中井クンは、メチャメチャ照れてしまうか、ブスッとしてしまうだろうが、年上から見ても、年下として接しても、なんだかいいのだ。


 ただ威勢がいいだけじゃない、ワルぶってるだけでもない。自分なりの法則にしたがって、自分を作り上げてきた……のだろう。あるとき別の用事で、中井クンと電話をした。
「カッコ悪いってことのなかに、カッコイイということがあると思うんですよ。なんかヘンな言い方ですけど、誰が見てもカッコイイというのは、どうも好きじゃなくて、ま、そうなれないということもあるんですけど、そうじゃないカッコよさってのが、うん、オレは好きですね~」
 その昔、ジャックスというバンドがあった。ちょっとマイナーだったが、曲のタイトルに「カッコイイってことは、なんてカッコ悪いんだろう」というのがあった。


 ちょいとひねくれてはいるが、ボクたちの真理のひとつではある。
 中井クンのAE86歴は長い。イメージとしては、ずっとAE86に乗り続けている……そう言ってもいいだろう。ボロボロのAE86で、強烈な印象が中井AE86だ。鬼キャンに始まって、タイラップ吊り使い捨てバンパー、リベット留め、艶消し塗装、戦車色、そして今回の肌色AE86と、実にユニークだが、その基本ラインは一貫している。
 単純なパターン変更ではない、思い付きではあるものの、その『色』は中井カラーである。一見異様、ジックリ見ても決してカッコよくない。だけど、それがどうも気になってしまう。最初はヘンテコなクルマだなと思っていても、時間がたつにしたがって、カッコよく見えてくる。
 こうして、中井流のクルマ作りは、全国の走り屋の注目の的となる。
 その中井クンが、もう一台のクルマを持っているということは、意外に知られていない。しかも、それがポルシェのスピードスター(レプリカなんだけど、そこがまた中井クンらしい)とくれば、「エッ? ほんとかよ??」である。


 だけど、あの鬼キャンの発想ポイントが「ランチャストラトスが好きで、あのフェンダーとタイヤのラインを出したくて、思いっきりキャンバーをつけたんです。でも、そこでタイヤがフェンダーから出ると、ちょっと違う。だから、鬼キャンってのは走りのためでもなんでもなくて、カッコ追求だけ。あんなの乗りにくいだけですよ。だけど、乗りにくいのを乗りこなすってのが、けっこう好きなんですね、これが」である。外車好きなのだ。というか、外車も好きなのだ。
 中井クンの趣味指向にあってさえいれば、国産だろうが、外車だろうが、なんだってOKなのだ。
 その昔、軽四にツナギ姿で六本木に行ってナンパしてた中井クンである。ひとりっきりで、どこまでもどこまでもドライブし続ける中井クンである。ポルシェでチェーンレスのまま、草津までスキーに行ってしまう中井クンである。


 独特の美意識は、一般常識からは奇想天外に見えてしまうのだが、中井クンの内部では、キチンとスジが通っているわけだ。
「このスピードスターのボディって、世界で一番タイヤがなかに入ってるボディなんです。それが気に入ってて、ええ値段ですか? 100万円です。レプリカですから。でも、それってオレっぽいでしょ。インターメカニカってドイツのメーカーが作ったヤツで、けっこう作りがいいんですよ。探して、やっとこれならってやつを中古で見つけたんです」
 ホロ骨が高くてカッコわるいので、自分で切った。おかげで、ホロを上げてると、メチャメチャ狭くなった。だけど、それはそれでいいのだ。エンジンはガンガンチューンする。で、めいっぱい足代わりに乗りまわす。そんな『乗り方』が不思議に似合ってくる。
 AE86の方はと言えば、ハッキリ言って汚い!! エンジンオイルはダダ漏れ状態だし、キャブのジェットカバーもついていない。タイミングベルトにオイルが付きそうで、配線もテキト~。こんなエンジンルームってあり?という状態だ。


 だけど、中井クンに言わせれば、これくらいでいいのだ……となる。これまで8年ほどAE86に乗っていて、エンジンを壊し、クルマをぶつけ、本当に酷使しながらも、だんだんとAE86&4AーGのコツみたいなものがわかってくるというのだ。
 ここだけはちゃんとやっておかなくちゃダメな部分、全然平気で放っておいてOKなところ、そういう区分分けがあるというのだ。だから、一見するとメチャメチャだらしない中井AE86だが、あの荒っぽい中井クンの走りを支えている。
 峠で中井クンの走りを見たヤツは、口をそろえて言う。
「中井クンって、AE86に乗ってるからわかりにくいけど、メチャメチャ上手いよ~!」
 だけど、中井クンは、自分のことを上手いとも思ってないし、そう言われても嬉しくない。やっぱり「熱い走りをする」ヤツだと言われたいのだ。そう言ってもらうことが一番嬉しいという。
 チューニングの世界が、グングンと変わってきている。ちょいと昔なら、クルマをいじって、全開させてるヤツというと、やっぱり暴走族なのだ。一見するとコワモテで、ちょっと近づきにくい雰囲気があって、遠巻きにしてるだけで、なかなか近づけない……そうだったはずだ。
 それが、規制緩和だかヘチマだか知らないが、誰も彼もがチューン、チューン。スズメじゃないんだから、い~かげんにしてほしいぜと思う。別に、チューンが市民権を得てほしいとか、そんなことを考えてるわけじゃないのだ。


 自分のやりたいようにやる。他人と同じじゃ納得できない。オレが一番速い。こんな気持ち他のヤツらにわかってたまるか。こうなのだ。
 硬派なんだかどうだかしらないけれど、オトコでありたい(別に女の子だって同じなんだけど)と思い続けているわけだ。
 昨今のチューニング兄ちゃんは、パワーと情報だけは持ってるけど、肝心の、ここ一発という部分のオトコ感が希薄なのだ。もちろん、そうじゃないヤツもいる。だけど、その数は、チューニング人口に比べてビックリするほど低いのが現実だ。
 その数少ないオトコの匂いがするヤツのうちのひとりが、中井クンなんだろうと思う。ときには少年であり、やけにオトナであり、たまにはバカやってる。だけど、その根本のところで、オトコの匂いがプンプンしている……ちょっと誉めすぎか?


 カッコだけのヤツならゴマンといる。能書きだらけのヤツも数え切れないほどいる。だけど、本気でストリートを攻めれるヤツってのは、そうそういないのだ。
 能書きをたれてるヒマがあるならアクセル踏め! これがチューン入門者にいいたいことのひとつだ。いろんなノウハウを持つのはいいことだ。情報だって必要だ。だけど、それらの根底には「危ない領域に踏み込む!」という大原則があるのだ。
 ここが、チューニングカーと、他の自動車のブームとが違っている大きなところなのだ。どれだけでかいスピーカーを積んでいようが、遊びにいくときに便利だろうが、だからといってバンには乗らない。
 不便でも、金がかかっても、スピードを追求している限りは、そんなこたあ二の次、さよ~なら~なのだ。たぶん、これから先も、中井啓という人間は、ドンドンと変わっていくと思う。ヘンテコなことを考え出して、自分で悦に入って……そしてガンガンにアクセルを踏み込んでいくのだ。たぶん、そうだと思う。
 そう思ってポルシェを眺めると、どうも中井色がかかっているような気がしてならない!?




●ご存じ鬼キャン……である。だが、その根拠が、ランチャストラトスのフェンダーからタイヤにかけてのラインを模したものだとは。おっとDTMだという噂もあるけど??

キャプ2
●8年ほど乗っているので、4A-Gの弱点も、手抜きOKポイントもしっかりと把握している。てきとーに使っていても壊さない。このあたりが年季ってゆうんですか?

キャプ3
●キャブレターの上の蓋がない。普通ならちょっと首をかしげるのだが「あ、大丈夫ですよ。ジェット換えるのも楽だし」でチョン。中井流の大雑把さであります。

キャプ4
●プラグキャップのまわりには、ドシャーッとオイルが溜まっている。でも、今日はこれでも少ない方だという。別にこれで問題出るわけじゃない……う~ん、やっぱ中井流だ。

キャプ5
●シフトノブは、いつのまにかなくなったので、ビニールテープをグルグル巻きにしてそのまま。そこに引っ掛けたソニアリキエルの紙袋が、ゴミ袋となっている。シェーッ!!

キャプ6
●ラフワールドのステッカーである。荒く、荒っぽく。そういう気持ちを代弁してくれるのがラフという言葉。中井自身のドライビングのひとつの目標でもある。

キャプ7
●ベタベタの肌色AE86に比べて、ポルシェのほうは、シッカリと、シットリとしたシルバーに塗装されている。この落差が、バランス感覚が中井風なのだ。

キャプ8
●こちらのエンジンは、けっこう面倒を見ている。VW改のチューンドタイプで、スピードはAE86よりもこっちのほうが出るくらい。でも、止まれないんだよな~。

キャプ9
●やっぱしナルディである。しかし、どーもおかしい。ジックリ見ると黒のレザータイプを“塗装"したもの。ところどころボロボロと剥がれているとこが、やっぱり中井式。

キャプ10
●AE86がフェンダーラインとタイヤにこだわったように、この思いっきり奥に入ったバランスが好きで、このクルマを買った。うん、両方あってバランス感覚の帳尻が合う??
●なかいあきら●プロフィール

 本名=中井 啓。職業=塗装工。特技=荒っぽい走り。賞罰=秘密。一世を風靡した鬼キャン元祖である中井だが、それ以外にも走り屋の流行発信基地でもある。艶消し塗装、リベット打ちときて、今回のAE86は肌色……もうここまできたら、矢でもコテッチャンでも持ってこ~い!



ラウヴェルトペグリッフ
www.rauh-welt.com



 



■ RAUH Welt 中井 啓 Link ■
 

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