2017DRAG仕様RISING S30Z製作途中記

RISING(東京)

あのRISINGが、NEWマシンを製作中
そのこだわりと、製作途中ならではの状況を取材
やっぱりRISINGは、あのRISINGでした!!




RISINGの伊藤さんから、S30Zを製作中だという連絡をもらったのは、
今年のはじめだった。塗装に出すために、一度装着した部品をすべて外し、
ドンガラの状態になっているというので、出かけてみた。

何故S30Zなんだろう? どうして、いまなんだろう?
以前、雑誌の誌面上で、ボロボロのS30Zに、フルインジェクションの
L型を搭載したのを見たことがあったけど、あれは、RISINGじゃなかった。
CARBOY時代に取材したRISINGは、いつもスタイリッシュで、斜め方向の
カッコよさに満ち溢れていた。そんな伊藤さんが、仙台ハイランドがなくなった
いま、そして、ストックボディのS30Z……なんなんだろう? そう思っていた。

結論から言うと、RISINGは、RISINGだった。
久しぶりに訪れたRISINGガレージの右側部分に、クルマをぐるぐると
回転させる俗称バーベキュー台に、そのS30Zはセットされていた。

「ボディの補強をするのに、このバーベキュー台は必要でしたし、なによりも、
ボディの底面まで、外装色で塗りたいんですよ!」

わかるヒトにはわかっていただけると思うが、ボディ底面を、外装色に
塗るというのは、非常に面倒な作業であるとともに、どうしてそんなことを
しなくちゃいけないんだ?ということでもある。

サスペンションを付けて、エンジンを搭載して、タイヤを履かせて、路上に置いたとしよう。
殆どの人間は、外観を見て、「きれいなZですねぇ」とか、「こだわりがありますね」といった、
一般的な褒め言葉を並べてくれるだろう。でも、誰も、
というか、ほとんどのヒトは、ボディ底面の色だとか、そういうものは見ない。

だから、RISINGなのだ。これまで作ってきた部品、クルマ、エンジンルーム、
どれもが、他とは異なっていた。そして、その相違の根源は、伊藤さん独自の美意識にある。

ある夏の日に、伊藤さんと会ったことがある。普通のTシャツに、Gパン&ワークブーツ姿だった。
だけど、普通のTシャツの首まわりのセンター部分にハサミが入っていた。4cmほどだろうか。
そのひとつの切込みがあることで、普通のTシャツは、普通じゃなくなっていた。

「伊藤さん、そのTシャツの切込み、いいですね。選択したらホチけてきそうだけど、
それがあるだけで……いいね」
そう言ったら……。
「いやぁ、カミさんが、切ったんですよ。ブチンッて(笑)」

これが、RISINGなのだと思う。

上の写真を見ていただきたい。RISINGオリジナルのインジェクション用の
スロットルボディに、テーパーのつけられた長いマニホールドがセットされている。
こいつが、今回製作しているS30Zに装着される。機能を追求すれば、
機能美というものが生まれる。しかしながら、機能だけを追い求めていては、
機能美以上のものは生み出せない。金属を切削するエンドミルの選択や、
加工工程を見直すことによって、当初から機能美以上のものを求めていく。
その結果が、上のスロットルボディであり、テーパーがつけられたマニホールドである。
フランジ面の薄さも、ひとつの魅力だと思う。

目標重量は900kg以下。
L型メカチューンのフルインジェクション駆動。
現在、ストックボディベースのL型の最高タイムを更新する。

この目標のために、もともとは錆だらけだった(?)S30Zは、
徹底的な軽量化を施され、装着するパーツに合わせて、
目立たない部分が相当にモディファイされていた。

 


制御はMoTeCのM600。既存の配線をすべて撤去し、新たにレーシング配線を
引き直すわけだが、ECU本体の隣りにある、黒いボックスには、プラス配線を
バッテリーから引いたら、そこからすべての配線をセットすることが可能。
この小さなボックスの中に、リレーやヒューズ的なものが全て内包されている。

ここまで話を聞いてきて、なぜS30Z?という疑問が、少しずつ解けてきた。

ストックボディを大胆改造したサニーのドラッグ仕様に始まって、
あのパイプフレームのRISINGサニー、そしてターボ化、別のマシンでの
ターボドラッグ製作ときたRISINGが、新しいS30Zの姿を
求めているんじゃないか?

形はS30Zだけど、それはRISING Zなんじゃないか?

ちょっとわかりにくい話だと思うが、なんとなく、そういう気配がある。
パイプフレームボディを作る際に、外装は一般市販車の形状を使用する。
まったく違ったクルマではなく、自分が乗っている、あるいは知っている
外装にすることで、親しみもわくし、安心感もある。

だけど、ストックボディをベースに、別のクルマを作り上げるというのは、
これまでになかった試みなのだと思う。例えば、S30Zをベースにして、
RB26DETTや1JZ、SR20DETといったエンジンとATをスワップし、
エアコン等の設備も移植する……言ってみれば、S30Zという古臭いクルマを、
現代風にモディファイするという手法があるが、それを更に進めて、
L型エンジンを使いながら、フルインジェクション化して、ボディ重量を軽減し、
最新のコントロールシステムや配線を与えてみたら? それだけでなく、
ボディ剛性の弱いS30Zを強化し、最新のサスペンションとブレーキシステムを装備すれば?

つまりは、RISING Zというクルマは、S30Zというボディ形状を借りた、
新しいクルマを作るという試みなのでは?と思うのだ。

 

上の写真を見ていただきたい。エンジンルーム側は黒く、ボディ側は
白く塗装の下処理を施されている。しかしながら、ノーマルのS30Zとは
異なった部分がある。ホコリにまみれた部分を手で触ったあとがあるが、
その部分あたりは、ノーマルのS30Zでは、凸凹しているはず。ブレーキや
クラッチ関連のパーツの逃げを設けるために、タイヤハウスは凸凹に
整形されているのだが、それがタイヤなりにスムーズな曲面に整形し直されている。

 

反対側も同様に、バッテリーの逃げもなくされている。バルクヘッドが
直接見えるような形になっていて、エンジンルーム内に存在するのは、
エンジンとその周りの直接的な補機類や配線&配管のみになる予定だ。

 

室内も、余計なものは全て取り外され、
こちらにはドライカーボン製のダッシュパネルがセットされる。


室内も、余計なものは全て取り外され、こちらにはドライカーボン製の
ダッシュパネルがセットされる。
ペダルシステムは、床にセットするTilton製が採用され、
ダッシュパネルをボディにセットするステーも、RISINGオリジナルの超軽量タイプ。


このダッシュボードステーを見て、びっくりした。細いパイプを組み合わせて、
超軽量であると同時に、薄板をバーリング加工したものを使って、
きれいな補強が施されている。この手法は、RISINGサニーの
各所に見られるもので、伊藤さんが独自に考えだしたものだという。

「ただね、この20年ほど、エンジンばっかりやってたんで、
溶接の腕がなまってたんですよ。新しい溶接機を入れて、
とにかく溶接ばっかりやって、カンを取り戻すまでに、ずいぶんかかりましたよ(笑)」

 



フルインジェクションのL型に組み合わせるミッションは、
ジェリコのエアーシフター……ここまでくると、
さきほど言ったように、S30Zというボディを借りた
新しいクルマの姿が見えてくる。要するに、レーシングDragマシンなのだ。

だから、RISINGサニーを作っているときと同じ感覚で、
ストックボディをモディファイしていると考えればいいだろう。
ちなみに、RISINGサニーは伊藤さんともうひとりの二人だけで作り上げたという。

 

取材後、塗装から上がってきた状態の写真を
送ってもらった。艶のあるレッドと、ブラックのツートンに
塗装されたRISING Zの組付けが、もうすぐ始まる!!



塗装を待っている間に、搭載するエンジンの整備を行った。

ベースとなるのは、RISINGサニーに搭載されていたもの。
もう10数年前に降ろしたきり、そのまま保管されていたものだが、
内部の状態をチェックしてみると、ほとんどOK。

ただし、バルブスプリングは、押された状態のまま放置されていたので、
張力が劣化していたものがあった。これは、交換。
その他の部分は、ほとんど問題がないので(というか、RISINGサニーに搭載されていた頃から、エンジントラブルというのは、殆どなかった)、
最新の6連スロットルシステムとドッキングして、MoTeC駆動される。

 

 

 

伊藤さんから送ってもらった写真の中に、ブロックの写真があった。
メインジャーナルの左下方にノーマルでは見かけない『穴』が開けられている。
これは、駆動時にブロック内の内圧を降下させるために設けられたもの。
多分、何食わぬ顔で、この一枚を混ぜ込んで、藤本が気づくかどうか?
覚えてるのか?とこっそり楽しんでいるのではないかと思う(笑)

そうです。この『穴』の件で、CARBOY時代に一本取材しましたね(笑)

とまあ、それはどっちでもいい話ですが、以上のように、バラバラの部品と、
ボディに施された加工箇所を見ていくうちに、RISINGの狙いが、
うっすらとではあるが読めてきたようなきがする。
伊藤さんが意識しているかどうかは別として、
前述したように、S30Zというストックのボディを借りた
RISING流のマシン製作術。極端なことを言ってしまえば、
S30Zだろうが、なんでもよかったのかもしれない。


出来上がるのはBUILD by RISINGということなのだから。

 

下のビデオは、「CARBOY2017」というタイトルで、
FRESH!アメーバ を通じてインターネット放映されたもののです。
また、そのアーカイブを、Youtubeにアップしたものです。
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RISING
〒192-0151 東京都八王子市上川町3515
Tel 042-652-9449


http://www.rising-web.jp/



■ これまでのRISINGによるエンジン開発の履歴 ■

  新展開…… L型用インジェクションスロットルSYSTEM
 

CARBOY2000年11月掲載…… RB26改29ハイデッキ

  CARBOY2005年3月掲載…… RB26改RVCSシステムSTEP 1
  CARBOY2006年5月掲載…… RB26改RVCSシステムSTEP 2
  CARBOY2006年5月掲載…… RB26改RVCSシステムSTEP 3
  CARBOY2006年5月掲載…… RB26改RVCSシステムSTEP 4
  2017取材…… RB26改RVCSシステム2017の状況変化
  2017取材…… DRAG仕様RISING S30Z製作途中記
   
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