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TUNINGノウハウ伝承の仕組み

和田多博 河西モータース(和歌山)



往年の名メカニックと
現役のマシンビルダーが出会うことで
新たな可能性の幕が……開く?

和歌山の河西モータースさんに寄ったのは、
久しぶり……でありました。

CARBOY0→400mが終了してから、
会う機会もなくなり、一度だけセントラルサーキットで
会ったときは「藤本くん、なにしてんの?」
「いや、JDDAで」「あ、やっとったんや」
「和田さんは?」「いや、カートの件で」

若い頃、カートに夢中になり、西日本チャンピオンにまで
なった和田さんが、ゼロヨンにはまり、次々とクルマを作り始め、
『和歌山に河西ありっ!』と知られた時代を経て、
再びカートに戻り、現在は、若手の有望選手のバックアップと、
独自の視点で組み上げられるレーシングシュミレターの開発に、
『夢中』になっている。

家業の認証工場は、息子さんが実質的に受け継ぎ、
楽隠居的な存在となった和田さんは、
それこそ、思いっきりシュミレター開発にはまり込んでいる。

そんな和田さんと、セントラルサーキットで再開したのは、
2017年のことだった。RISINGの伊藤さんが作ったS30Zを見たいと、
セントラルサーキットに来るようになったのだ。

そんな和田さんと、コース脇で立ち話をしているときだった。

「スタートが遅いな〜。エンジンは力出てるんやから、スタートが
しっかりできれば、もっともっと速くなるで〜っ!」

どのクルマのことを言っているんだろう?と、
コース上を見てみると、ブレイブの木村選手のスープラのことだった。

現時点で、FRマシンのなかでも、最速カテゴリーに属するマシンで、
長い時間をかけて、木村選手が8秒台に入れてきたマシン……である。

アッと思って、和田さんに聞いてみた。

「スタートが遅いって、ナニと比べてるの?」
「いや、FISCOでも8秒出てた時代と。路面も、エンジンも、
タイヤも、いっぱい違うけど、スタートはあの頃のほうが速かった」

オジサンの昔話自慢かぁ〜、と聞き過ごすには、真剣だった。

 

 

木村選手とも、いろいろと話したことがあった。
様々な方法、考えつく手段で、クルマを速く走らせようとしているのだが、
現状で、効果的な方法がわからないというか、決めかねている。

「和田さん、ちょっとお願いがあるんやけど……」
「なに?」
「さっきのスープラのヒトね、サスペンションのことやなんかで、
いろいろと悩んでるんやけど、力になってくれません?」

いきなり、そう切り出した話に、5秒ぐらいの沈黙があった。

「………………ええよっ!」
「ホンマにええ? 電話して、何度も電話して、繰り返し聞いて、ホンマにええの?」
「ええよっ!」

このやりとりで、九州の木村さんと、和歌山の和田さんの接点というか、
技の伝承システムができるかもしれない。

                    


 

 

 

その昔、L型チューンをしていた和田さんは、
それまででトップランクの出力を叩き出していた。
しかしながら、そのパワーを、ほん近所の柿本さんが、
一気に覆してしまった。

そして、パワーでは勝てなかった柿本Zを追って、
サスペンションや、スタートタイムを縮めることに、
ずっとチャレンジし続けてきた。

その過程で積み重ねてきたノウハウや、技術といったものは、
和田さんがドラッグから退いたら、まったくなくなってしまうのか?
そう思っていた。

蓄積してきた『ノウハウ』が、別の人間に伝わり、
その『ノウハウ』をベースにして、また違った『ノウハウ』が生まれていく。

そういう伝承をするには、チューニングという世界は、
世代交代が激しすぎるし、伝承のシステムというのが確立されていない。

 

 

その昔、谷田部の自動車試験場に、
カキモトレーシングが持ってきたマシンは、
いまから考えても、その後のドラッグマシンの
基礎になるものだった。

チョップドルーフのS30Zに、
ホーシングタイプのデファレンシャル、
4リンクの支持構造に直立式のサスペンション。
アメリカンドラッグマシンを、日本風に解釈したら、
このようなマシンになる。そんな感じを現車にしたような
一歩も二歩も進んだ仕様で武装されていた。

それに対抗してというか、勝てるクルマを作るために、
最初は軽量のサニーボディにホーシング仕様、
そして、フルパイプ構造のピアッツァ、ベンツ……。
それらは、現在も認証工場として可動している、
上の写真の工場で制作されてきた。

水平を出すために鉄板を敷き、
そこから垂直の柱を立て、
曲げたパイプを使って、
レーシングフレームを作り上げる。

 

たぶん、その間、認証工場としての仕事は、
屋外でやっていたんじゃないだろうか(笑)
奥さんに呆れられながら……いや、奥さんは、
和田さんよりも気が強いと聞いているので、
「ここまでやって、負けたらしょうちせんで〜!」と
異様なプレッシャーをかけていたかも?

ま、勝手な想像をしてすみません。

現在では、工場のスペースを使って、
下記のようなレーシングシュミレターの製作&改良に
余念のない和田さんでありますが、
シュミレターに関しては、また別稿で紹介したいと思っておりますが、
その細部を見ると……工作精度、剛性、そして、システムとして、
『正常な反応』ができるように工夫され、モディファイされていく光景は、
やはり、というか、以前パイプフレームを、そして独自のサスペンションを
作り出していった頃と、ほとんど変わっていないように見受けられる。

 

   

  

 



☆河西モータース和田さん「L型昔話」


動画が見れない場合は、上のリンクのを クリックしてくださいませ。

 

後日、九州の木村さんに電話をした。

「和田さんに電話した?」
「はい、それで、一発で言われましたっ(笑)」

「???」
「リヤのフレーム切れって。そのほうが話が早いって。
自分でも、そうかな〜と思っていたんですが、一発目で(笑)
迷っていた気持ちが、スーッと決まりました」

その後の経過も、また後ほど聞こうとは思っているのだが、
とりあえず、ナニかが進み始めたようであります。

そのままなら、死に絶えていったかもしれないノウハウが、
現役世代に受け継がれて、そこからさらなる高みにのぼっていって
くれれば……切に、そう願っております。

おっと、こういうのも、『コラボレーション』っていうんですかね?
先日の『クラウドファンディング』に続いて、
横文字の連発であります。
ま、私ら世代にとっては、横文字はかっこよさと同義でしたから(笑)

 


河西モータース
Tel:0734-55-0807
〒640-8401 和歌山県和歌山市福島693



 

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TEL 029-888-3066
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これまでの河西モータース和田さんのHP記事です。

●河西モータースPRIVATE DRAGGER取材

●柿本POWERを追う河西サニー

 

 


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よろしかったら、お願いします。


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