柿本POWERを追う河西サニー

河西モータース(和歌山)

ビルドサニーとは違ったアプローチで製作された
河西サニーは、DRAGGERの注目の的
独特のサスペンション理論で走り続けた!!

CARBOY1996年12月に掲載された、河西サニーのチャレンジ&伝説を……


©八重洲出版 

 

「一番覚えてるのは、北海道で9秒出したときやな……」

と当時を振り返るように、
河西モータースの和田さんは、話しだした。

車重860kg、L28改3.1L、圧縮比7.2、FJ20ETピストン、
L20コンロッド、LD28クランク、80度カム、OER50φ、
TD06×2、過給圧1.4kg/cm2、インタークーラーなし、
オリジナルEXシステム、FS5C71Bミッション、
H190デフロック、グッドイヤー12-29-15……

そして、ボディが110サニー改。

リヤまわりのサブフレーム&サスペンション、
リンク設計は、すべてオリジナルだった。

 エンジンのパワー、ターボのセッティング、
そしてトータルバランスと、どれをとっても、
当時の最先端にあったマシンということができるだろう。

だが、このマシンの本領というか、真骨頂は、
そのリヤまわりのセッティングにある。

「当時は、オレの考え方は、みんなと違うと思うてた。
違う、違う、そうやない。そう思うて、自分なりの考えで、
サスペンションというか、リンクの位置、角度、
取り付け部分と、全部思いどおりにやった。
当時としては画期的やったな。いまの常識というか、
ドラッグマシンの状況から考えたら、
当たり前になってしもうたけど、当時としては、
他にこんなクルマなかったな……」

和田さんは、これまで作ってきたマシンのなかでも、
一番思い出深いのは、このサニーだという。

河西モータースの名前を冠したマシンとして
知られているのは、15年ほど前のフルチューンL型を
搭載して300馬力オーバーを達成していた箱スカに始まり、
このサニー、オリジナルパイプフレームのはしりである
ピアッツァ、そして現在のフルパイプフレームを持つBENZと、
異色でもあり、革新的でもあるマシンを送り出してきた。

そして、どれもが全国のドラッグファンだけでなく、
ドラッグに参戦してきたショップ、チューナーに、
大きな影響を与えてきた。

河西モータースの作り上げたマシンを見て、
ドラッグに憧れ、ドラッグ界に足を踏み入れた
という人間が非常に多いという事実が、
影響の大きさを物語っている。

そのなかでも、和田さん自身が一番印象深いというか、
忘れ難いのが、このサニーなのだ。

リジッドのホーシングを4本のリンケージで支持し、
そのモーメントの行方、トラクションのかかり方を
コントロールしていくという方法論は、当時としては始めて。

 FISCOに登場する度に、いろんな人間が、
河西サニーの後ろから、そのフレーム&リンクの
取りまわしを覗き込んだ。そして、忘れないうちに、
自分のクルマに応用し、徐々にその走りが変わってくる……。

そういう意味では、当時の目標であり、お手本だった
マシンということができるだろう。

エンジンに関しては、大阪のカキモトレーシングのマシンが、
その目標であり、お手本だった。

だが、シャシー&足まわりに関しては、間違いなく当時の
トップだった(トップレベルではない。トップだった)。

だが、和田さんが、一番気に入っているのは、
当時のマシンの作り方、それを取り巻く雰囲気だという。

 

「あのころは、そのへんにある部品使うて、レースマシンを
作れてた。いまはちょっと変わってしもたな。手作りで、
いろんなとこ切った貼ったで作ったクルマやから、
余計に懐かしいんやろな。誰でも手に入る部品を使うて、
そこで勝負するというのが、ええ感じやったな〜」

 

ウーン、そうだったのだ。みんなが夢中になって、
あるだけの金と時間を使って、あとは自分の頭と
腕の勝負……いい時代だったということはたやすいが、
レベルが次第に高くなってきて、変貌していくというのも
……時間と人間の競争意識が生み出した現実。


9秒ドラッグ世代の代表選手「河西サニー」。
けっこうシビれさせてくれるるマシンだった。

 

 

 

当時、取材のため、何度も和歌山を訪れた。
藤本の実家は、大阪岸和田市なので、和歌山市は近い。
だけど、堺市にあった柿本レーシングは、もっと近い。

ま、住んでるのが東京なので、新幹線に乗って、あるいは飛行機で
大阪から和歌山まで行くわけなのだが……。

河西モータースと柿本レーシングは、約50kmの距離にある。
岸和田からはそれぞれ40kmと10kmだが、それはどちらでもいい(笑)

両者が相まみえるのは、いつもはFISCO。CBゼロヨン、RRCドラッグレース、
そこで、NA&TURBOの両仕様で鎬を削ってきたわけだが、
エンジンパワーで勝る柿本レーシングに、なんとか勝負を仕掛けるためには、
サスペンションやフレーム、車重といった様々な要素を追求するしかない。

あるとき、CARBOYの原稿で書いたことがある。

河西モータースと柿本レーシングを隔てる距離は50kmだが、
タイム差は0.8秒ある。50kmの差は、飛ばせばアッという間なのだが、
たったコンマ8秒には、とてつもない開きが……ある。

ま、その後、コンマ8秒という差は、仕様の変更や、コースコンディションに
よって、様々なタイム差となっていくわけだが……。


そんな当時の和田さんに、サスペンションの取材をした。

1990年の2月号の様子も、当時の和田さんの心情が現れていると思うので、
ぜひ、ご一読いただきたいと思います。

 

©八重洲出版 

ドラッグマシンが、その限界を伸ばしていくためには、
エンジンにパワー&トルクがなくてはならない。
しかし、それだけでは思うほどタイムは縮まってはくれない。
つまり、タイヤがエンジンの回転力を受けて、
路面をかいていく『力』がそれだ。

エンジンのパワーがそれほどでもないときは、
これは難しいことではない。フロントサスペンションの
トーインや、メーカー純正(?)のリヤサスペンションは、
間違いなくまっすぐに、マシンを400m地点まで
運んでくれるはずだ。

しかし、500〜700馬力という化け物エンジンが
発生するパワーは、ボディをどこへ連れていってしまうか
しれたものではない。ランナップスポーツZの
パワーに対抗する河西モータースサニーは、
ドラッグマシンのサスペンションを徹底的に
煮つめることによって、日本初の8秒台への意欲を燃やしている。

「いま一番欲しいのはラダーバーの長さかな? 
これがドラッグのスタートのキーポイントになっている。
ウチがつくっているシステムでも、けつこう角度や
長さはとってるんだけど、まだ……」

ラダーバーというのは、ホーシングタイプのデフと
ボディをつなぐパイプなのだが、このパーの取り付け角度、
ボディの重心位置、そしてフロントタイヤの接地面等によって、
スタートしたときの、タイムロスが大幅に少なくなる。

河西モータースサニーの歴史は古い。
エンジンやタービンはいうにおよばず、
サスペンションもずいぶんとセッティング
変更されている。初期の河西サニーのスタートは、
リヤが沈み込む通常のものだった。

しかし、そのうちにリヤが持ち上がるスタートに
変化してきた。「おかしいな?」、そう思っていると、
今度はリヤが上がりもせず、下がりもせず
……このころから河西サニーは、異様に速くなった。

 

「タイヤがきちんと路面をかくためには、
クラッチミー卜して瞬間的にトルクがかかったときに、
クルマを前に押し出す動きをしなきゃだめやろね。
このとき、クルマを前に押し出すのがラダーパーだと考えても
いいと思う。これがクルマの重心位置より高すぎたり
低すぎたりすると、クルマの動きにムダが出てくる」

 

いま、河西サニーのラダーパーは、Aアーム形状で、
ボディの床面付近に後続されている。
しかし、これでもまだまだ8秒台のためには短すぎるし、
取り付け件誼も変更したい。
「やっぱり4リンクにするしかないかな?」である。

4リンクにすることによって、理論上はラダーパーの
支点がずっと前にくる。パワーのあるエンジンを
一気にクラッチミートしも、クルマはタイムロス
することなしに素早く加速状態に移る。

タイムの統計をみてみると、400mを走るときの
タイムロスは、圧倒的に0→200m区聞が多い。
それも、スタート地点でのロスが最も大きい。
そして、0→200mのタイムを縮めることは、
200→400m区間のタイムを縮めることよりも
はるかに簡単なのだ。

エンジンの馬力をいまの限界以上に上げることが
難しいし、トルクがついてくる回転域を1000回転
上げること同チューナーにとっては非常に
困難な作業だろう。しかし、200mまでのタイムロスは、
サスペンションのセッティング等でまだまだ改良の余地がある。

 

圧倒的なパワーを誘るランナップスポーツZを抑えて、
目白サニーが8秒台を狙うためには、
アプローチの方法を転換するしかない。

 

 

条件さえよければ、
そしてエンジンがもってくれれば……
河西サニーの足はいつも狙っている。



河西モータース
Tel:0734-55-0807
〒640-8401 和歌山県和歌山市福島693





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河西モータースプライベートドラッガー取材

  柿本POWERを追う河西サニー
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