L20改という2017年の新提案

亀有エンジンワークス(埼玉)



これまで見向きもされなかった
最多存在L型エンジンである
L20をベースにして、今後の
L型チューンを構築していく新発想!!



先日、紹介したのは、

『亀有エンジンワークスは、Tuning Parts MAKERである!』

という事実であった。単なるリプロダクションパーツではなく、
チューニングという基盤の上に立ったパーツ開発を行うメーカーである。
そういうことをお伝えした。これまでも、亀有エンジンワークスの
パーツの存在に、どれほどのL型プライベーター&ショップが、
助けられてきたことだろう……もちろんL型のみに留まらず、
2T-Gや18R-G、S20といった絶版エンジンを搭載するマシンを、
いまの時代に存続させようと思うと、亀有エンジンワークスの
存在の大きさを、あらためて認識させられた。

今回紹介したいと思うのは、

L20型エンジンをベースにしたチューニングの新提案である。

以前、CARBOY誌上で、L型改AT仕様というマシンを紹介したことがある。

L28改の3L(3.1Lだったかもしれない)のエンジンは、
日産68度(実質64度)カムに、ドーム型燃焼室、ちょっとだけビッグバルブ、
そして、日産純正ATという組合せだった。
クルマは、30Zの2by2。

このクルマが、速くはないけれど、実に微妙なマッチングをしていて、
非常に印象に残っていたと、森さんに話していると……。

「それって、○○さんのクルマじゃないですか?」と森さん。

藤本は、すっかりコンと忘却の彼方だったのだが、
そのマシンは亀有エンジンワークス製作だった。
な〜んだ、森さんに紹介してもらっての取材だったのだ。

L型といえば、フルチューン全盛時代のころ、
圧縮比が10.5程度の、68度カム仕様というデータだけを
見たら、「な〜んだ、よくあるソレタコデュアル?」と
鼻で笑われそうな仕様だったのだが、オーナーの使用条件や、
嗜好を優先させた作り方は、CARBOYとして、非常に高評価だった。

ま、それは、昔の話なのだが、それをキッカケにして、
森さんが「実は、そのクルマを評価してくれるなら、
今年から始めた新しい試みも、藤本さんならその真価を
わかってくれるんじゃないですか?」と、教えてくれたのが、
今回紹介する『L20改』のチューニングプランである。

 

まず、使用するベースエンジンはL20型。

これは、現在でも非常に多く現存していて、
あまり、ありがたみもなく使用されているエンジン。

まずは、ベーススペックをおさらいしてみよう。

搭載されたマシンは、105〜130馬力のSUキャブ仕様なら、
セドリック、グロリア、スカイライン、ブルーバード、
ローレル、フェアレディS30Z。

インジェクション仕様の130馬力L20Eとなってからは、セドリック、グロリア、
スカイライン、ブルーバード、ローレル、フェアレディZ、レパード。

ターボをドッキングした145馬力L20ETとなると、セドリック、グロリア、
スカイライン、ローレル、フェアレディS130Z、レパード。

ボア・ストロークは、78.0×69.7oの1998cc。

L28改3.1Lのボア・ストローク、89.0×83.0oの3096cc。
つまり、L20は、3.1L仕様の3分の2の排気量ということになる。

ま、速くもないし遅くもない(いや、遅い)エンジンで、
L28に換装することでクルマの動きは大きく変わったというのが、
昔のL型チューンの原点だった。

ここに亀有エンジンワークスが投入したのは、
L20専用のピストンだった。

現在では、その口径は82φ、82.5φ、83φが発売されている。
材質は鍛造品で、それぞれの口径に対して、複数のピンハイトが用意される。
ピンハイトと聞いて、「なんじゃらほい?」と思ったヒト用に、
簡単な解説をしておくと、ピストンのサイズを表現するには、
数種類の部分のサイズをチェックする必要がある。

一番ポピュラーなのは、口径だろう。円筒形のピストンの『直径』がそれだ。
そして、ピン径。これはピストンピンが入る穴の『直径』のこと。
ピンハイトというのは、このピン径の中心部からピストン上面までの
『寸法』である。ま、ピストンの構成要素には、他にもいろいろとあって、
ピン長やリングの厚み、重量、バルブリセスの深さ、ピン挿入方法等々。

ま、ここでは、口径とピン中心からの高さに絞って話を進めよう。

ノーマルのL20のボア・ストロークが、78.0×69.7oだから、
亀有エンジンワークス製のピストンのうち、口径が82φのものを
組んだとすると、82.0×69.7oで、排気量は2208ccとなり、
ノーマルの1998ccからは、210cc増大することになる。

同様にして、82.5φなら237cc、83φなら265cc増大する。
でも、最大口径のピストンを組んだとしても、ノーマル比265ccの
アップで2262cc……これじゃ、L24エンジンにも遠く及ばない。
だったらL26とかを載せたほうがいいんじゃないの?
単純比較ならそういうことになる。

しかしながら、亀有エンジンワークスには、まだまだ必殺部品が存在する。
これらのピストンにL28クランク(79o)や、LD28クランク(83o)、
そして亀有L31フルカウンターorハイスペッククランクを組み合わせてみると、
最大2661ccとなるわけだ。


なにも、排気量の数値だけが、エンジンの性能を決定する要素ではない。
圧縮比の設定や、バルブサイズ、組み合わせるカムシャフト等で、
性能というものは大きく左右される。

 

ここで注目しておきたいのは、ロングストロークのクランクシャフトを
L20エンジンに入れようと思ったら、コンロッドの中心化距離
(ピストンピン中心からクランクジャーナル中心までの距離)と、
前述したピストンのピンハイトの寸法が問題となってくるのだ。

だから、組み合わせるパーツ(コンロッドやクランクシャフト)によって、
選択するピストンのピンハイトが決まってくる。

これまでは、誰もL20という貧弱なエンジンに注目しなかったので、
特殊なピンハイトを持ったL20改のピストンが存在しなかったのだ。

逆に考えると、特殊なピンハイトのL20改ピストンを作ったところで、
それに応じたコンロッドやクランクシャフトを製作する……そんな
馬鹿なことは、誰も考えなかった。だから、存在しなかった。

しかしながら、亀有エンジンワークスには、L28をベースにした
様々なコンロッドやクランクシャフトを製作してきたという
『実績』の遺産が、たっぷり存在している。
それらのパーツを最大活用することで、L20改という
エンジンチューンが、現実的になってくるわけだ。

 

多彩な組み合わせが存在するL20改のなかから、
ひとつのパターンを紹介してみよう。
L20改鍛造ストリートピストン2661cc仕様である。

ここで使うピストンは82.5φのピンハイト33.5oタイプ。
ピストン重量単体は289gで、バルブリセスの深さはIN3.7/EX3.7o。
バルブリセスの容量は2.0ccで、これに組み合わせるコンロッド&クランクは、
純正L20か亀有133o(中心感距離)コンロッドに、LD28or亀有L31クランク。
純正のL20コンロッドを使う場合はフルフロー加工が必要になる。

L20改ピストンには、ピンハイトが33.5oのものと、
38.1o/40.1oの3タイプがあるのだが、
その差の5o/6.6oというのは、
L20/L28/LD28クランクのストローク量
69.7o/79o/83oの差である
9.3o/13.3oを埋めるためのものである。

えっ? 計算が合わないって?
ほんとです。合いませんね。
それぞれ、4.3o/6.7o足りませんね〜(笑)

この寸法は、組み合わせるコンロッドの中心感距離で補正するんです。

つまり、コンロッドの中心感距離を短くして、ピンハイトも短くして、
伸びた分のストローク量を帳消しにしてしまうわけです。
この結果、各パーツが組み合わされて、ピストン上面は、
シリンダーブロック上面と面一に……なりません。
ちょっと飛び出るんですが、その寸法はガスケット厚みで消化します。

そういえば、藤本がL24改のファインチューンを作ったときに、
ピストントップが、シリンダー上面から0.5o飛び出していた
記憶があるんですが……あれは、240Zをアメリカで売る場合に、
簡単に圧縮比アップを狙った日産の隠し技?かと曲解しましたが、
間違っていたら、ごめんなさい。

ともあれ、このように、各パーツの寸法を追い込んでいくことで、
L20型をベースにした多彩な排気量アップが可能になります。

 

ただし、L20ブロックを使用する際に、気をつけておかないといけない
ことがあるんです。したのピストン上面の写真を見てもらえば、
おわかりかと思うですが、上のバルブリセスが、途中で終わってます。
これは、バルブの傘が、ピストン内に収まらずに、ブロックと
接触することを意味しています。


そこで、これを回避するためには、シリンダーブロック側にも
バルブの逃げを設ける必要性が出てくるわけです。
詳しくは、下のボア径とバルブサイズ等の相関関係表を
見ていただければいいのですが、使用するカムシャフトの
リフト量と作用角によって、突き出し量&時間が異なります。

ま、L28ベースの場合と異なるのはそのあたりでしょうか。

 


ここで、ふと思い出したのが、大阪の柿本レーシングさんと
CARBOYが共同開発していたRBハイデッキ仕様のことです。

排気量アップがままならないRBエンジン(RB26DETTも
RB25DETやRB20DEも)で、なんとかL型みたいな
多彩な排気量アップができないもんだろうか?と考えた結果、
大胆にもブロックを削り取ってしまって、
代わりにフローティングスリーブ(下面を固定しないタイプ)を
入れ、コンロッドの中心感距離が短いという欠点を持っている
RB型エンジンの弱点を補うために、シリンダーヘッドとブロックの
間に厚いスペーサーをセットする……というものでした。

これに組み合わせるロングストローククランクは、
RD28クランクの無垢素材から削り出したもの。
ピストンやコンロッドは、チューナーのお好きに……。

そして、このスリーブ&アッパーデッキ、クランクを
できるだけ安価で提供したいというのが、目的でした。

そうすると、L28改3Lや3.1Lのように、全国のチューナーが、
RBというエンジンをベースにしたNAチューン(そしてターボも)を
展開するという、なんとも楽しい状況を作り出すことが
できるのではないか? そう考えておりました。

残念ながら、耐久テストを終えて、十分な耐久性を実証したところで、
計画は頓挫しましたが、その構想は、非常に面白いものだったと
いまでも藤本は考えています。

そのときに、副産物としてできるのがRB20ベースのチューニングでした。
ブロック内壁を削り取ってしまうわけですから、RB26DETTだろうが
RB20だろうが関係ありません。アッパーデッキとスリーブをセットすれば、
RB20改3Lという仕様が可能になるんです。これをベースに、NAチューン
していけば、新しいR32スカイラインのチューニングが展開できる……。

ま、いまとなっては昔話ですが、本当にそういう展開を考えていました。

で、亀有エンジンワークスさんの話に戻ります。

これまで見向きもされなかったL20というエンジンが、
新機軸のピストンを作っただけで、十分にチューニングベースに
なりうるエンジンに変貌してしまうのです。

これは、上記のRB20ベースの3LNA仕様と、相通づるものが
ありはしませんでしょうか? それまで検討の対象とさえ
なっていなかった(例外としてNERの中島さんが製作した
RB20改2.3LのNA仕様というケースがありますが)エンジンが、
新たなチューニングベースとして脚光を浴びるわけです。

こういう観点から、藤本は、亀有エンジンワークスさんの
『2017年新機軸L20エンジンTUNE』に拍手を贈りたいと思います。

これまでの蓄積があってこそのものだと思いますが、
L28ブロックが入手困難に鳴り、L14コンロッド、LD28クランクが
製造中止となっている現実問題を踏まえながら、新しい可能性を
見せてくれるチューニングプラン……いいと思います!!

 

下のビデオは、「CARBOY2017」というタイトルで、
FRESH!アメーバ を通じてインターネット放映されたもののです。
また、そのアーカイブを、Youtubeにアップしたものです。
他にもイロイロと作っていきますので、
よろしくご支援くださいませ。



CARBOY 2017 reborn #15 亀有エンジンワークス Part1

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  L20改という2017年の新提案
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