日産LYヘッド搭載エンジンのセットアップ LIVE!

TESTAROSSA(静岡)



クロスフロータイプ方式を採用したLYヘッドを
現代に蘇らせるTESTAROSSA流の
モディファイ& SETTINGを紹介!!



テスタロッサの石川さんは、FISCOのレース村にある
スリーテックというレーシングガレージに入って、
レーシングマシンを触り始めた。そして、初めてLYヘッドを
使った仕事をしたのが、サカモトオートZ……。
といって、「あ、あのサカモトZ!」とわかるヒトは、
相当な年配の方に違いない。

もう、30年以上前のことになる。
当時開催されていたドラッグレースは、SCATだったっけな。
CABOYゼロヨンがFISCOに行く前の話。
S30ZにLYヘッドを搭載したサカモトオートZは、
その速さと、作りの本格度で、注目度抜群のマシンだった。

「御殿場の米軍から仕入れた戦車のスーパーチャージャーを
付けてみたら、キャブとの相性が悪くて失敗でしたね」


当時を振り返って、石川さんは笑った。

ニトロを装着して初ウイリーを披露したサカモトオートZ、
エンジン搭載位置を後退させたり、いろいろと意欲的な試みが、
施されていた仕様だったが、よく考えてみると、30年前ですよ。

大阪L型パワーは、まだまだ築港で走っていて、
青山ゼロヨンがあった頃に、スーパーチャージャーだの
ニトロだの、エンジン位置を後退……ですよ。

石川さんにとっての初めてのLYチューンが、
サカモトオートZだった。

©八重洲出版 

そして、テスタロッサとして活動を始めてから、
FJ改を搭載したドンカーブートやサニーを制作する傍ら、
LYヘッドのNA、ニトロ、ツインターボと、様々なLYを手がけてきた。

その様子は、当時のCARBOYゼロヨンでの活躍でもうかがい知ることができる。

上の記事は、NAのLYヘッド搭載のS130Zだ。
懐かしいですね〜。ファクターZ、エスコートZ、シノハラサニー、
APOスターレット、ドライブショップR Z、亀有Z、シマダドラッグZ……
こういう時代があったんですね〜。

下は、ツインターボを装着したLYの取材。
当時でも貴重と言われたLYヘッドに、
自在な形状を持ったEXマニ&ツインターボ



 



©八重洲出版 

 

それから幾星霜、テスタロッサガレージに、
LYヘッドを搭載したS30Zがセッティングされていた。
もちろん、いまのクルマなのでインジェクション仕様で、
ダイノパック上でのセッティングだ。

スロットルボディはイギリスのJenvey Dynamics社製で、
国産エンジン用のインマニを含んだスロットルボディキット等も販売されている。
コントロールはHKSのHKS Fcon VーPro。

いまとなっては(いや、当時から)貴重とも言えるLYヘッドだが、
こいつは日産がレース用エンジンとして提供したもので、
スポーツコーナー等から販売されたが、数も少なかったし、
2868ccという排気量で、公称300馬力を出すというヘッドだった。

 

とまあ、どこの雑誌やWEBサイトで掲載されているようなことを
書いていてもつまらないので、石川さんにLYというヘッドについて、
突っ込んだ話を聞いてみた。
つまるところ、L型標準のカウンターフロー方式のOHCと、
クロスフロー方式のLYヘッドは、ナニが違うのか?

「もともとのポート穴が大きいですよね。それに、カウンターフローと
違って、スペース的な制限が少ないですから、INマニの形状やEXマニも、
自在にレイアウトができるところじゃないでしょうか?」

そうです。IN側の補機類とEX側のそれを反対方向にセットするわけだから、
EXマニの形状も、上にあるインテークパーツの制限を受けることがない。
一般的なL型の場合は、EXマニが下がってセットされる。上に邪魔者がいるから、
当然といえば当然なのだが、ほんとうなら、長さや太さを考えると、
上に逃したほうが自由度は増すのは、自明の理。

「いまでは、L型で300馬力以上というエンジンも多くなりましたが、
それはみんなが切磋琢磨してきた結果でしょう。当時、いろんなことを
やっても、L型は280〜285馬力が、テストベンチで精一杯でしたね。
だけど、LYヘッドを使ってやれば、公称値の300馬力はしっかりと出ました」

標準のクロスフローL型の場合、燃焼室にはINマニから混合気が入って、燃焼後に
UターンするようにEXポートに排出されることになる。
それよりも、INマニから入ってきた混合気が燃焼して、反対方向のEXポートに
排出されるクロスフロー方式のほうが、効率がいいことは誰もが理解できるはず。

スポーティエンジンと呼ばれるタイプは、そのほとんどがクロスフロー方式を採用している。

逆に言うと、L型のように、カウンターフロータイプで、
高出力を出すということが異常なのだ。

だが、日本では、L型人気が異様なほど沸騰し、日本全国誰でもがL型チューンを
行ってきた結果、いまのL型が形成されてきた。

もしも、の話だが、LYヘッドが、誰もが買える価格で、大量に流通していたら、
現在のL型チューンは相当に変わっていたはず。そして、流通量が少なすぎたから、
LYヘッドは、貴重視され、手を入れる人間の数も、ノウハウも、出力も伸びなかった。

 

そんなLYヘッドを使って、現代風のフルインジェクション仕様をセットアップしていた
石川さんが、ボソッと呟いた。

「L型のハート型の燃焼室って、藤本さん、どう思います?」

「圧縮比を稼ぎたかったんじゃないですか?」

「ですよね」

石川さんは、どちらかというと、口数が少ないタイプ。

だからこそ、このボソッと発せられた言葉の向こうにあるものが、
しっかりと伝わってきた。

L型エンジンのモディファイをしているヒトのなかで、
ハート型燃焼室加工のことを、しっかりと考えたヒトが何人いただろう?
ヘミヘッドやポルシェの燃焼室を例に取るまでもなく、効率から考えれば、
ドーム形状の燃焼室のほうが優れていると、他国の人間は考えている。
ポートの内径が大きく設定でき、空気がいっぱい入って、出るほうが、
エンジンの出力を向上させるには有利なわけだ。
ポート形状の自由度も高いし、EXポートも無理に四角にしなくてもいい。

スキッシュエリアのあるターンフロー型のエンジンの燃焼室として、
ハート型が高性能だとは……はっきりとした実証値があるわけでない。
ただ、OHVのサニーA12のレースエンジンは、その構造上、
ハート型を採用して、それなりの結果を出していた。
ただ、A12の場合はショートストロークだが、L型はストロークが長い。
そのあたりをすっ飛ばして、L型にハート型燃焼室を導入して、
それが常識化していったというのが、本当のところではないだろうか?

 

日本のピストンは、ほとんどがフラットタイプなので、そのピストン形状を
使って、ドーム型をチューニングしていくよりも、燃焼室をフラットピストンに
併せて埋めてやることで、圧縮比を稼ぎ、見た目もいい……そんなところから、
ハート型の燃焼室加工が普及していったような気がしてならない。

ま、このあたりは、オジサンの戯言と聞き流していただいてもいいかもしれないが、
知っておいてほしいと思うのは、

L型というエンジン、そしてそのチューニングは、世界的な視野から見ると異様。

だということ。その昔、30年ほど前に、米国に渡ったL型エンジンは、
ローラーロッカー等を使って、日本国内とはまったく異なった進化を遂げていた。

でも、日本国内では、独自の進化を遂げた……そう考えていただくといいかもしれない。

 

ま、いまとなっては、LYヘッドというのは、ちょっとやそっとで手に入るものでもないし、
そのチューニングノウハウは、L型のそれと比較すると雲泥の差となっている。

日産が、レース用にと投入した技術とノウハウは、ストリートに還元されることなく、
ストリートではストリートの技術とノウハウが、まったく別個に育っていった。
今回紹介しているLYヘッドや、中空バルブ、2868ccの腰下、サファリに使用された
ウオータージャケットが組み込まれたインテークマニホールド……だけど、
よ〜く考えてみると、これらの技術やノウハウは、別のエンジンで結実している。

RB26DETT……です。

クロスフローのDOHC24バルブ、ターボを前提としたカムシャフト設計、
これは、L型には備わっていなかったスポーツ性能を、日産式に注入したものだと、
考えることはできないだろうか?

ただ、RB26DETTの場合は、ターボモデルとして誕生したので、
L型のように、内燃機構造をモディファイするという方向には行かなかったために、
別の道を進むことになった。

そう考えていくと、L型というエンジンは、そしてそれに関わる人間や、
蓄積されてきた技術というのは、非常に興味深い。
ガラパゴス的な要素はあるものの、これが『日本のエンジン』なのかなぁ。

おっと、LYの話からL型に行ってしまいました。
では、テスタロッサで行われていた、LYヘッド搭載のNAインジェクション仕様の
セットアップの様子を掲載して、この項を終わりたいと思います。

 

下の動画は、LYヘッド搭載のインジェクション仕様を
ダイノパックでセッティングしているときの映像です。
素人目には、ナニをしているのかはわかりにくいのですが、
PROが見れば一目瞭然……らしいです(笑)



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