サイドシールのクリアランスを取る冶具
TOP FUEL RACING(埼玉)

2000年3月 REチューンを追求するトップフューエルの
クリアランスにかける様々なチャレンジを紹介。

※以下、当時のまま掲載させていただきますので※
※価格、仕様等は変更されている可能性が大です)※




強烈なパワーを絞り出すREチューンで
知られている埼玉のトップフューエル
レーシングの内部では、地道なクリアランス
耐久性の追求が行なわれていた
これまでとは違う視点でREを捉える!!



シールの重要性を考え独自の調整法を実施!!


 先月号のCBでお伝えした3ベアリング方式の
13BTエンジンを八代エンジニアリングに
依頼して作り上げたのが、今月紹介する
埼玉のトップフューエルレーシング……である。

 以前からRE中心にチューニング活動を続けてきた
トップフューエルレーシングだが、代表が現在の熊木さんに
なってからは、いちからブーストアップを見直し、少しずつ、
だが確実にセットアップというものに取り組んでいるショップである。

 そして、セッティングの研究と同時に、REエンジンの
可能性の拡大を目標に、いろいろな開発、テストを
繰り返している。昨年度は、ドラッグエントリーで、
600馬力の3ベアリング13BTでいい記録を残し、耐久性を実証してみせた。

 とかく、一般のユーザーや雑誌というのは、
派手な部分に興味を集中しがちである。ま、CBも例外ではない。
だけど、それと同時に、細かい部分、ちょっとしたことで
エンジンの耐久性が上がったり、性能に影響したりという、
非常に地味なさぎょうというものにも、CBでは興味があるのだ。

いや、というよりも、本当のことを言えば、
そういうことにこそ面白みがあると考えている。

 ドラッグチャレンジ、そして、ノーマルタービン
ブーストアップや、フルタービン仕様での国内最速記録に
挑戦するトップフューエルレーシングも凄いと思うが、
その裏で、地道なクリアランス調整のテストをしている
熊木さんという人間も、CBとしては非常に面白いと思うのだ。

今回取材中に、ふとした言葉がひっかっかった。
「すいません、いま、サイドシールのクリアランスを
取るための治具がないんですよ……」という言葉がそれだった。

 サイドシールのクリアランスを取る冶具? なんです、そりゃ??

 一般的には、サイドシールのクリアランスは、サイドシールを
削ってシックネスゲージで取るはず。こういうところに治具が
必要なんだろうか? そう思ったので、熊木さんに聞いてみることにした。

「ええ、そうですね。一般的にはそうだと思います。だけど、ウチは
ちょっと違うことを考えているもんですから、専用の治具が必要に
なるんです。いままでは、自作で作ったものを使っていたんですが、
もう少し精度が欲しいので、岐阜の八代さんに頼んで
作ってもらっているんですよ」なんです? ちょっと違う??

 詳しく話を聞いてみて納得した。そして、どうしてこれまで
こういう考え方で、クリアランスを取るということを聞いたことが
なかったのか不思議に思った。それくらいまっとうな話だった。

 REの内部構造にそれほど詳しくないひと用に説明しよう。
サイドシールというのは、ローター(俗に言うおむすびですね)の
側面に細い溝が切ってあるのだが、そこにセットするシールである。
REは、ローターが回りながら吸入、圧縮、爆発排気という工程を
こなしているのだが、このときに吸い込んだ混合気が漏れないように
する役目を負っているのがシールなのだ。

 ローターの3つの頂点にあるアペックスシール、その左右にある
丸いコーナーシール、そしてローター側面に設けられたサイドシール、
これらが漏れを防いでいるわけだ。

 このうち、アペックスシールは下のスプリングによってローター
内面に押しつけられているし、コーナーシールもスプリングによって
サイドハウジングに押しつけられながら動いている。そして、
アペックスシールとコーナーシールは組み合うようになっているのだが、
サイドシールとコーナーシールは、適度なクリアランスでセットされているのだ。

耐久力に差が出てくる長期展望エンジン!!

 さ、ここまででだいたいのシール構造は飲み込めていただけたかな?
こいつを頭に入れてもらって、トップフューエルレーシングが
こだわるサイドシールのクリアランス調整の話に移ろう。

 先に、サイドシールとコーナーシールには適度なクリアランスが
必要だと言うったが、サイドシールというのは、丸形状、
コーナーシールは棒形状である。このクリアランスはどう取るのか? 
ここです、大きなポイントは。

 熊木さんの考えたクリアランスの取り方は、サイドシールの
寸法を削るという作業は同じなのだが、そのときに、コーナーシールと
同じ口径のリューターで削ってやろうというものだ。

もちろん、そのときのサイドシールの角度が重要になってくるので、
ローターにセットしたのと同じ状態で、コーナーシールが入る部分に
細かい粒子のダイヤモンドリューター、それもコーナーシールと
同寸法の11φのものをセットする。

 これが、先ほどから問題になっている『治具』なのだ。つまり、
サイドーシールの先端に、コーナーシールと同じR(逆Rとなるのだが)を
つけながらクリアランス調整をしようというものなのだ。

 だが、ここまで聞いて疑問が生じた。確かに、それは正解だと思う。
だけど、そのクリアランスを計測するのがシックネスゲージだとしたら、
Rを設けた意味がない……素直にその疑問をぶつけてみた。

「そうです。その通りですよ。だから、板状のシックネスゲージを入れて、
初期馴染みが終わった時点でどれくらいになっているのがいいのか
ということを、時間をかけてテストしてきたんです」

 コーナーシールと形状が違うサイドシールの先端は、
OHやチューン直後には、セットしたクリアランスを保っている。
だが、経年変化で、次第にクリアランスが大きくなってくるのだ。
Rの径をそろえていれば、クリアランスの変化が少ない。

 な~んだ、そんなことか、そんなちょっとしたことだったのか
……と笑った諸君、違うんですよ。確かに、組み上がり時には
それほど差は出ないでしょう。だけど、走行距離が出れば出るほど、
ブローバイの出方、性能の維持という面で、大きな違いが出てくるんです。
こういうところに神経を遣うということに注目してもらいたい。CBはそう思うのだ。

 トップフューエルレーシングには、まだまだいろんな細かい技がある。
だけど、このサイドシールの一件だけで、エンジンの耐久性ということに
気を遣っていることがわかっていただけると思う。時間が経てば
効いてくるチューンノウハウ、こいつに注目していただきたい!!(藤本愼一)

写真キャプション1 13*5
●サイドハウジングのポート形状については、いろんなタイプがあるが、
どのタイプにも言えることが『バリ』の除去。これは鉄則だ。

写真キャプション2 
●ペリフェラルポートは、これまで見たものと少し違っている。というのも、
方向が上から下にという形状を持っているのだ。カッコいい!!

写真キャプション3 13*5
●エンジン室には、新品のハウジング類、シール類と共に、3ローターパーツ
等もストックされている。けっこうな量があるのにビックリ。




■地味なクリアランス作業と対照的に、思いっ切り好き放題に
作り上げられたのが、熊木さんのFC。ベースになっているエンジンは
FC用のものだが、これにオリジナルの変換アダプターを使うことで、
FD用のサージタンクをドッキングしている。というのも、FC用の
サージタンクでは、500馬力あたりが限界となる。
容量の問題もあるし、スロットルバルブのこともある。これに対して
FD用のサージタンクなら、600馬力以上に対応してくれるのだ。
もちろん、ストリートにこういう馬力は必要ない。だけど、このマシンは、
熊木さんがドラッグ用に作り上げたもの。当然、最速記録を狙って
製作されたもので、トップエンドでの性能が重要になってくる。
だからこそのFD用サージタンクだし、FDエンジンに積み替えないのは、
熊木流のこだわり。というか、FCエンジンでどこまでできるのか?
をテストしたいと考えているからだ。このFCには水冷インタークーラー、
大径パイピング、コントロールシステム……びっしり最先端が詰まっている!

写真キャプション4 
●ローターに関しては、ローターハウジングとのクリアランス等
細かく気を遣う。当然といえば当然だが、それが耐久性に影響してくる。

写真キャプション5 
●サイドシール(溝に入るタイプ)とコーナーシール(11φの丸シール)の
クリアランス、そして形状にこだわることでライフを延ばす!!

写真キャプション6 
●8oのo厚さを持つ13B用のバッフルプレートは、エンジンの捻れを防止
するためのもの。加工マウント込みFD用2万8000円/FC用3万2000円。

写真キャプション7 
●FC用13BTエンジンに、FD用のサージタンクをドッキングするための
アダプターは、2万円前後。装着例は上の写真のようになる。

写真キャプション8 
●追加インジェクターをセットするホルダーは、ノズル別で4万3000円。
メインのみでなく追加という考え方も、いまならもう一度あり??

写真キャプション9 
●セラミックのアペックスシールとノーマルの比較。これは現在開発&
テスト中のものだが、スプリングのセット次第で可能性は大きい。

写真キャプション11 15*4
●一見すると普通のFCなのだが、内部を覗いてみると強烈。ドラッグ指向で
作られたSPLというか、熊木さんの個人趣味追求マシン??

写真キャプション12 22*3
●リヤハッチを開けたところ。ここまで作り込まれていると拍手もの。
自分のクルマをここまで好きにレイアウトできたら……いいねー。

写真キャプション13 22*3
●コクピットも強烈。なかでも、助手席にセットされているのは、
水冷式のインタークーラー用の冷却水。う~ん、このデカさに痺れますぜ。

写真キャプション14 22*3
●エンジンルームには、強烈に太いパイピングが引かれている。
テスト用とはいうものの、こういう試みや新しい機材の使用はとても興味深い。

写真キャプション15 22*3
●使用するタービンは、T51R。コンプレッサー側のハウジングは迫力満点。
オイルを噴くトラブルは少なくなったが、まだ若干漏れる??

写真キャプション16 22*3
●このマシンで、それなりのタイムが出れば次のマシン……熊木さんの
予定には、次の、その次のマシンまで入っているようだ。楽しみだ。

写真キャプション17 22*3
●これが興味津々の水冷式インタークーラー。冷却効率もさることながら、
レスポンス等の性能も知りたいところだ。タイムトライが待ち遠しい。

!



トップフューエルレーシング
〒343-0826 埼玉県越谷市東町5-209
http://www.topfuel.jp
Tel 0489-35-1913


 



■ これまでの履歴 ■

 

エキセン加工&クリアランス設定

  Link_2
  Link_3
↑できるだけ、いろんな方に見ていただきたいので、
よろしかったら、お願いします。


TOPへ戻る

↑イロイロな記事がありますので、
Contentsページをご覧になってくださいませ!