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藤本はKansaiサービスの向井さんのことを……

Kansaiサービス(奈良)


向井さんとは30年くらい前から
いろいろな話をさせてもらったが
ビックリするほど知らなかった?

 

先日、JDDA WESTに向かう途中に、Kansaiサービスの
向井さんのところにお邪魔をした。

当初の目的は、横浜タイヤさんが開発した
ウインドウを使ったボディ補強の話を聞くことだった。

そのうちに、この話も掲載する予定ですが、
それ以上にびっくりしたことがあったので、報告したいと思いました。

というのも、向井さんとは、谷田部の自動車試験場で、
FISCOで、そして、先日掲載した山本さんとの対談や、
それ以外にも様々な場所でお会いして、
『普通の会話』というやつを、何度も交わしてきた。

しかしながら、Kansaiサービスに対する取材というのは、
藤本としては、2回ほどしかしたことがない。

というのも、CARBOYでは、いろいろなライターさんが
いたのだが、高橋くんが向井さんのところの担当と言うか、
そういうパターンになっていて、あとは、尾登くんがいったか……。

編集会議を終えて、担当を決める段になると、
なんとなく、そういう役割分担になっていた。

神奈川系なら渡辺くん、長野系なら日野くんと川崎くん、
静岡系なら尾登くん、新規開拓系の深田くん……と言った具合で、
藤本の場合、新しもの好きなのもあるが、技術系やエンジン系が、
中心に取材を行っていた。

で、Kansaiサービに伺って、久しぶりに向井さんと話をしたわけだが、
それまで、向井さんのことを、まったくと言っていいほど理解していなかった
という事実に、そりゃあもうびっくり仰天してしまったわけです。

これまで、2回の取材というのは、CARBOYのムック本で、
GT-RとEVOを作ったときだったと記憶している。
クルマとチューニングノウハウの紹介で、
向井さんとゆっくりと話す時間もなく、撮影して、必要な
事項を聞いて、「ありがとうございました〜!」と帰ったと思う。

今回、向井さんのところに寄ってみたいと思ったのは、
どこかの雑誌の(Gワークスだったかな?)で、
藤田エンジニアリングの藤田さんが、

「その昔、ターボのことを知りたくて、
向井さんに教えてもらいに行った……」

そういう一文を見たことだった。
そのとき、「そう言えば、向井さんと、時間をとって話したことなかった」
そう思ったので、取材のアポイントを取りたいと思ったからだった。

そして、Kansaiサービに着いて、工場を眺めていたら、
妙なことに気がついた。

キレイ、なのだ。

広い作業スペースが、やたらとキレイなのだ。

もちろん、いろいろなお店で、作業スペースをキレイに
しているところは、いっぱいある。それなりの感覚で、
きちんと掃除をして、モノが散らからないよう、
整理整頓をしている所も多い。

しかしながら、Kansaiサービスで感じた『キレイ感』は、
そのどれとも感触が異なっているように思った。

なんだろう? どこが違うんだろう?

そんな違和感を感じながら、向井さんと話をするうちに、
いろんなことが判明してきた。

藤本は、『Kansaiサービスの向井さん』という認識だったのだが、
それが大きな勘違いの第一歩だったこと。
そしれ、『Kansaiサービスの向井さん』になる前の向井さんが、
考えていたこと、やっていたことが、現在の『Kansaiサービス』であること。
……いきなりこんなことを言われても、訳がわかりませんよね。
ボチボチと解き明かしていきたいと思ってますので、もう少しお付き合いを(笑)

その昔、向井さんはモトクロス少年であり、その後、ダートラ競技を始め、
クルマ作りからセットアップに進んでいったというのだが、
ひとつ印象的な話があった。

「たとえば、ブレーキのことですけど、パイロンの直近を、できるだけ小さい半径で
回ろうと思ったら、どうしたらいいんだろう? そんなことを考えていて、
片側のブレーキをロックさせればどうか?と。で、そういう仕組みを作ってみたら、
本当に速かったですね。当時のレギュレーションに抵触もしないし(笑)」

意外だった。どちらかと言えば、オーソドックな手法で、
カッチリとクルマを作り込むというイメージに縛られていたのだが、
向井さんというヒトは、そういうヒトだったのだ。

結果的に、ダートラのシリーズチャンピオンを手中にしたわけだが、
向井さんというヒトを知るには、そういう『戦績』を物差しにするよりも、
もっと適切なものを、その後の話で発見することになる。

向井さんが青年時代だったころ(なんかヘンな言い方です)、
「ツインパワー」を開業する前でもありました。

 

若僧だった向井さんは、当時切望していたドイツに行くことになった。
もちろん、当時、BMWのチューニングメーカーであった
「アルピナ」や「シュニッツァー」といった『チューニング工房』を
実際に、自分の目で見たかったからだ……。

そして、実際に見た「アルピナ」や「シュニッツァー」の在り方は、
それまでの日本の常識の範疇にいた向井青年を瞠目させるに充分な
インパクトを持っていた。

まず、立地が違う。

当時は、繁華街から遠く離れた場所に工房があり、
そのすぐ脇に「アウトバーン」がある。
お客さんの利便性よりも、スポーツカーを開発する環境の
ほうを最優先していたわけだ。

ビックリした。

本当に、こんなことを考えて、実行に移しているんだ。

スポーツカーを作るというのは、こういうことなんだ。

ドイツから帰国した向井さんは、自分のSHOPである
「ツインパワー」を開業することになるが、
その場所は、現在のKansaiサービスの向かい側のスペース。
奈良と言っても、奈良市からはずいぶん離れた場所、
言ってみれば辺鄙な場所である。

大阪からも、名古屋からも、新幹線からも、JR線からも、
空港からも……すべての利便性のある都市から、外れている。
しかしながら、『工房』の場所は、西名阪バイパス沿い。
高速道路ではなく、一般道ながら、信号も交差点もない。

そういう『場所』に、自分の『工房』を設けた。

 


つまり、『形』から入ったわけだ。

しかしながら、このような『形』から入ることのできる
チューナーが、日本全国のなかで、何人いるだろう?
…………そんなことを考えながら、向井さんの話を聞いていた。

「藤本さん、裏の倉庫見ます?」

向井さんが、いきなり言い出した。
裏の倉庫? なんのこっちゃ?
そう思いながら、向井さんのあとをついていった。

場所的には、Kansaiサービスの裏手にあたるところに、
広大な倉庫があった。そして、鍵を開けて内部に入ってみると……。

これまでCARBOY等でデモカーとして登場したGT-Rを始めとする
マシンが、ナンバー&車検を取った状態で、ズラッと保管されていた。

「どのクルマも、いますぐ乗れますよ(笑)」


「ボクね、あんまり趣味がないんですよ。クルマが好きで、
デモカーとして作ったクルマは、ほとんど置いてあります。
個人所有のクルマはGT-Rですし、自分が面白そうだなと
思ったクルマを購入して、それをじっくりと研究して、
自分の思うようなクルマに仕上げていくのが、好きなんでしょうね」

「仕事が休みのときでも、あまりすることがないんです。カミさんと花作りの
畑に行ったりするくらいで、スポーツカーを作ったり乗るのが趣味ですか(笑)」

デモカー軍団が勢揃いしている1Fから、階段を降りて、半地下風の
スペースに行くと、壁に作られた棚に、RB26DETTや4G63のベアエンジンや、
スポーツ仕様のSPLエディションエンジンが、びっしりとストックされていた。

「これから、32〜34GT-Rのエンジンや、パーツ、エボのエンジンといったものは、
ドンドンと減少していくことになると思います。でも、オーナーは、これからも
ずっと乗り続けていきたい。だけど、それを引き受ける受け皿が少なくなっていく。
そういうことが起こってくると思います。そういうオーナーさんが、スポーツカーを
長く乗り続けていけるための準備といったら言いすぎかもしれませんが、
Kansaiサービスというところは、そういうところでありたいと思っているんです」

もちろん、新型車やニューモデルの開発も行なっていく。
だけど、これまでの資産であるチューニングカーメインテナンスも、
大切な役目だというわけだ。

「ウチでやったクルマのデーターは、ほとんど保管して、
いつでもそのデーターを使いながら、修理やリセッティング、
ステップアップに対応することができます」

 

アルピナやシュニッツァーというドイツのチューニングメーカー等の
『形』から入った「ツインパワー」というSHOPは、
HKSの長谷川さんと協力体制に入り、
「HKS奈良」ではなく、「HKS関西」という名を冠することになる。
その後、向井さん独自の路線を全面に押し出した「Kansaiサービス」
としての展開を始め、現在に至っている。

そして、この『向井さん独自の路線』というやつが、
和製アルピナであり、和製シュニッツァー
(なんだか、妙にへりくだった言い方が気にくわないんですが……)
であると考えることができないだろうか?

そんなふうに考えていくと、色んな部分で辻褄が合ってくる。

暴力的なパワー感ではない、突出したエキセントリックな仕様でもない。

話は変わるが、藤本は、以前からKansaiサービスのステッカーが気になっていた。

 

 


書き文字の『K』と標準的な『ansai』が組み合わされて、
非常にスッキリとしていながらも、印象的なロゴだと思う。

そして、それに続く、『SERVICE』という小文字が、
バランスよく配されている。

向井さんに伺ったら、何気なく、大文字の『K』を筆記体風に、
続く文字列を小文字で活字体風に書いてみたのがキッカケだという。
単純そうでいて、決まるときはスッと決まるというのが、
いいロゴの成立条件だと思う。

とにかく、このスッキリとしたロゴは、アルピナや
シュニッツァー的な、トータルバランスを考えながら、
モディファイされる向井流のマシンを、
シンプルながら、きちんと演出してくれている。

このKansaiロゴと対称的なのが大阪の『柿本改』ではないかと思う。
このロゴを作ったときに、柿本さんと話したことがあるが、
「知り合いの書道家に頼んだら、一発目で書きよった(笑)」と
笑っていたことを思い出す。柿本さんらしいロゴだと思った。

ま、それはさておいて、どうしてKansaiロゴの話になったかというと、
Kansaiサービスで製作されたクルマにこのステッカーを貼ったところが、
前述したように、アルピナやシュニッツァーを想起させるのだ。
向井さんが、そういうことを考えていたかどうかは聞き漏らしたが、


藤本的には、そんなふうな納得の仕方をした(笑)

そんな余計なことを考えていると、

「藤本さん、ボクの遊び場見せましょうか」

またまた、向井さんの後をついていくと(犬か、キミは)、
Kansaiサービスの敷地の一角にある建物の中へ……。

「ここは、ボクの遊び場なんです(笑)。いろんなことを
実験的にやったり、サスペンションを作ったりする場所なんです」


内部には、ショックテスターが置いてあり、
ここで、いろんな仕様のショックを製作しているという。

「向井さん、シムやなんかは、どこにおいてあるんです?」
そう聞くと、下の写真の棚を見せてくれた。

ショック内部の部品がぎっしりとスタンバイしていて、
仕様に応じたシムや、他のパーツをセットアップできるように、
なっていた。ショックテスターだけじゃ、なにもできませんからね〜(笑)

 

数時間の取材をするうちに、それまで勝手に作り上げていた
自分のなかの『向井像』というものが、ドンドンと崩れていき、
それまで知らなかったことを知り、これまで断片的に感じていた
事柄が、まったく異なった構成で、新しい『向井像』が出来上がってきた。

結局のところ、藤本は向井さんのことを、な〜んにも知らんかったんであります。

藤本は、最近、いろいろなお店に顔を出して、若いチューナーさんや、
技術屋さんと話す機会が多くなっているんですけど、そのたびに言ってる
ことがあります。皆さん、いろいろなことを研究したり、頑張っていらっしゃるんですが、
なんとなく、「チューニング」という言葉が持つ雰囲気や常識といったものに、
縛られているというか、スタート地点から、ある程度の枠組みのなかで
作業をしたり、仕様を決定したり……そういう感じがするんです。

昔話をする気もないし、昔は良かったと言うつもりもありません。
いまは、イマですし、それぞれの考えや主義主張でやっていけばいいと思ってます。

でも、外国の先輩たちのことを知っていてほしいし、自分たちがやっていることも、
世界的な視野で見れば、同じことなんだ……ということを意識してもらえば、
これからの可能性は、もっともっと拡がるんじゃないか?と思ってます。

どこの世界に、200〜300万円のベース車に100〜150万円かけて、
500馬力の仕様を製作して、そのクルマが渋滞にハマろうが、
寒暖のある気候にも対応することができるでしょう?

そういう意味では、アルピナだろうがAMGだろうが、
「かかってきなさい〜!」という技術力を持っているんです。

そういう現実を直視し、そのうえで、欧米諸氏がやってきたことに、
敬意を払いつつ、取り入れるところは、積極的に導入する。

そんなことを、ついついオッサンの説教口調で語ってしまうこともあります。

でも、そういうことを、30年前からやろうとしているヒトがいて、
いまでも、それを継続しているヒトがいるということは、
口先番長の藤本としては、ビックリさせていただきました。

 





CARBOY 2017 Kansaiサービス 向井さん談


最近、埋め込み方式を教えていただいて、andoroid端末のChromeで再生できるようになりました。
まだFirefoxでは再生できません、申し訳ありません。


とまあ、好き勝手なことを書かせて頂きましたが、
こういうふうな『Kansaiサービスの向井さん』を想定しながら、
先日アップしました

「643km / h対談 RSヤマモトvs Kansaiサービス を 読んでいただければ、

30年ほど前から、向井さんが、どんなことを考えていて、
同じような共鳴要素を持っていた山本豊史というヒトと、
共感を持ちながらしょっちゅう電話をしていたのか?ということが、
別の意味を持ってくるかも知れません(笑)



Kansaiサービス
〒632-0111 奈良県奈良市小倉町1080
Tel:0743-84-0126
http://www.kansaisv.co.jp/index.html



 


↑できるだけ、いろんな方に見ていただきたいので、
よろしかったら、お願いします。


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