内燃機加工から逸脱した加工屋さん!?

NAPREC(東京)



ボーリング&ホーニング、バルブシート入換、
バルブガイド打ち換え……内燃機屋さんの
仕事といえば、こういう作業が浮かぶのだが、
NAPRECの仕事は、その領域にど止まらない。

ボーリング&ホーニング、バルブシート入換、
バルブガイド打ち換え……内燃機屋さんの
仕事といえば、こういう作業が浮かぶのだが、
NAPRECの仕事は、その領域にど止まらない。

全国には、数え切れないほどの内燃機加工屋さんが存在する。
そして、そのほとんどは、エンジンの補修に関わった仕事を
行なっている……わけだが、東京に一風変わった内燃機加工屋さんがある。

NAPREC(ナプレック)である。

代表の名古屋さんは、その昔JUNマシンショップに在籍し、
その後独立されて、ナプレックを起こした。
そして、一般的な内燃機加工の作業に加えて、性能アップの
ベクトルを志向した作業を、意欲的に行なっていることで、
知られている。今回は、拡張された工場に伺って、
現在のナプレックさんが、どういう仕事をしているのか?
どんな注文に応えているのか?を取材した。

以前の工場と比較すると2倍以上の面積となる
現在の工場に足を踏み入れて、最初に見るのがショーケースである。

「内燃機屋さんで、ショーケース?」

そうです。ここからして変わってます(笑)
実は、藤本が7年間に渡って行なってきた、
「TuningPOWERS!」というテクニカルショーに、
ナプレックさんは、いつも出展してくれていた。
そのときに、CARBOYで取材した記事をパネルにしたものを
会期が終了すると持って帰ってもらうことにしていたのだが、
そのパネルが、ショールームにも展示されていた。

ま、それは、様々なショップさんに行っても、
よくあることなのだが、素人には、内燃機加工って、
なんじゃらほい?というひとがほとんどだし、
その意図するもの、どのような工程を経て、
機械加工というものが行われているのか?を
説明するということは、なかなかに大変な作業なのだ。

ま、それはそれとして、ショーケースの中心部分に、
ドーンッ!と展示されているのが、RB26DETTのヘッド。
ま、こんなものを見せられても、「それがどーした?」と
なるもんですが、じっくりと眺めてみると、ちょっと変わった
ことに気がつく。なんだか、ヘッドがキレイなのだ。

オイルやカーボンで汚れていないという意味ではない。

ポートや燃焼室といった部分が、やけにキレイなのだ。
これは、どういうことか?というと、ヘッドのIN&EXポートと
燃焼室を『機械加工』で削り出しているのだ。

俗に「NC」と呼ばれている機械は、「numerically controlled lathe」
の略で、日本語で言えば「数値制御旋盤」となる。

ボクたちが知っている加工機械といえば、ボール盤やフライス盤だが、
それらを1台にまとめたものがマシニングセンターと呼ばれる複合機。
プリンターやファックス、コピー機を一緒にしたのが複合機というように、
それぞれの加工を1台のマシンでできるようにした発展系。

それに対して、「NC」は、プログラムに従って、切削作業を行なったり、
切削工具の交換や角度の変更等、複雑な工程をこなすことができるように
考えられたものである。

ナプレックでは、独自のプログラムを作成して、RB26DETTの燃焼室や
ポート形状の切削加工を行っているのだ。
この作業は、これまでであれば、チューナーと言われるひとが、
リューターを駆使して、自分の経験をもとにした
形状に変更するために、手作業で行われてきたもの。

人間が削るんですから、6気筒あるエンジンの燃焼室容量を
均質にすることは至難の業であるのは当然だし、時間もかかる。

下の写真は、プログラムに従って切削された燃焼室である。

そして、こちらの写真は、同様にNCで削られたポート。

RB26DETTのヘッドは、ターンフロー型なので、INとEXが、
ヘッドの反対側に位置する構造。そして、ポートの形状が、
意外にストレートなので、このようなプログラミングが
比較的組みやすいヘッドということができる。

しかしながら、いったんプログラムが完成すれば、
あとは機械が削ってくれるわけだが、
それ以前に、ヘッド内の水通路、オイル通路を避け、
ポート内部の口径拡大と、スムーズな形状、
充填効率や排気効率を考えて……となると、
プログラムを完成するまでに、どれほどの時間がかかるのか?
想像するだけでも、気が遠くなる。

ま、それが商売だと言ってしまえばそれまでだが、
普通の内燃機屋さんは、こんな面倒な仕事はやらないし、
頼まれても断るだろう。どうしてかというと、
かけた手間と、もらえる工賃の格差がありすぎるから。

だったら、どうしてナプレックはこういうことをやってるのか?

「最初は、ボクもゼロヨンをしたり、クルマをいじったりする
CARBOY的な普通のプライベーターだったんです。そのころ、
加工を依頼していたのがJUNさんで、いつのまにか、そこの社員に
なっていて、仕事として、内燃機の加工をやっているうちに、
フッと気がついたんです。あ、自分は、こういうことが好きなんだ。
鉄やアルミを削って、部品を作ったり、加工を施したり、
そういうことの結果として、エンジンのパワーアップが可能になったり、
もっともっと……で、自分がやりたいことを、自分が納得するまで、
やってみようかって、だから、こんなになってしまったんです(笑)」

やってみたかった……んだ。

普通の内燃機加工じゃ、楽しくなかったんだ。

以前、といっても25年以上前のことになるのだが、
CARBOYで、カキモトレーシングのL型レプリカを
制作するという企画をやったことがある。
柿本さんから、パーツの洗選択、加工方法等を、
細かく聞いて、そのとおりにレプリカを作るという企画。

そのときに、加工を依頼したのがJUNさんであり、
そこの工場長が名古屋さんだった。

いろいろなパーツ加工のなかで、頭を悩ましたのが、
クランクキャップのラインボーリングだった。
名古屋さんもやったことがない作業だというし、
藤本とふたりで、ああでもない、こうでもないと、
いろんな話をした覚えがある。

クランクキャップボルトのサイズアップ、
バルブ突き出し量の指定、ロッカーアームのレバー比、
コンロッドの軽量加工、カムホルダーのラインボーリング等々。

本当に、こんなことやってんのかよ?と思うほど、
注文は多かった。でも、そのひとつひとつの積み重ねが、
L型の柿本を形成したんだろうと、なんとか加工を重ねた。

そういう意味では、あのとき、藤本は名古屋さんを『盟友』のように
考えていた。金属の加工作業の向こうに、強烈なパワーを発揮する
エンジンが、高回転で回っていることを夢想しながら……。

おっと、思い出に浸っている場合ではない。
現在の名古屋さん、いまのナプレックのことに話を戻そう。

 

工場内を案内してもらっているときに、
なんだか、妙な棒を見つけた。

これは、バルブガイドを作るための素材だった。
昔のL型時代は「リン青銅」を使っていたのだが、
いま、ナプレックでは、「ベリリウム」と「アルミ青銅」
そして従来の「リン青銅」の3種類の素材を使って、
様々なエンジンに対応させている。

純正部品は、「鋳鉄」を使っているが、圧入時に内径が
変化したり、経年劣化で内径が拡大したりする。
そこで、耐摩耗性に優れた材質を使ったバルブガイドが
必要になってくるのだが、一般的な補修では、
こういう部品を要求されることはまずないし、
内燃機屋さんが、独自に材質や形状を作り出すという
ことも、ほとんど行われていない。

だけど、ナプレックは、やるのだ。

一般人からすれば、バルブガイドの『材質』や、『耐久性』と
いうものは、考えたこともないし、その必要性もわからない。
だけど、鉄やアルミの組合せで、エンジンが構成されていて、
高回転を狙うため、寿命をのばすため、高過給に耐えるため、
こういう部品が必要とされてくるわけだ。

大雑把な言い方をすれば、これらの材質の耐摩耗性は、
「ベリリウム」>「アルミ青銅」>「リン青銅」>「鋳鉄」となる。
ベリリウムに至っては、ほとんど摩耗しないとまで言われている。
ただし、素材の力だけでは決定しないというのが、面白いところ。
対するバルブの材質によっても、相性がある。

そして、熱が加わるEX側に比べると、IN側のバルブガイドは、
それほど材質にこだわらなくてもいいということもある。

だから、RB26DETTでも、ロングタイプの「鋳鉄」タイプが
使われるケースが多い。

また、ナプレック製のバルブガイドを見て、気がつくことがもうひとつ。
ヘッドに圧入するわけだが、上側になるほうの部分に、落下防止用の
鍔がつけられている。これは、以前プロモデットのポルシェ
ヘッドの解説をしたときに紹介したように、高回転対策でもあり、
高性能エンジン用に考えられた形状である。


とまあ、今回紹介したのは、ナプレックが独自路線で展開する
内燃機加工の領域を踏み越えた『加工』と『素材選択』。
まだまだ、加工秘密基地のナプレックには、様々なことが
あるのだが、それは、また、別の機会に……。

下のビデオは、「CARBOY2017」というタイトルで、
FRESH!アメーバ を通じてインターネット放映されたもののです。
また、そのアーカイブを、Youtubeにアップしたものです。
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ナプレック
〒192-0024 東京都八王子市宇津木町796-1
Tel:042-696-3733
http://www.naprec.co.jp

 

 


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