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ターボ時代のサイドポート加工作戦

藤田エンジニアリング(大阪)

藤田さんとは、もうずいぶん長い付き合いになる。


藤本がCARBOYにアルバイトとして入った最初の年に、
大阪のショップ(チャレンジだったかな?)に取材に行ったとき、
お客さんとして来た藤田さんと出会った。

アフロヘアにジーンズ、下駄履きで登場した藤田さんだった。

そのころは、自宅のガレージで、古タイヤの上でREをバラしたり組んだり
していたが、ここで紹介するターボ用のサイドポートチューンも、
やっぱり古タイヤの上で作業がなされていた。

そのうち、自身のお店である藤田エンジニアリングを始め、
関西のREチューンの代表的な存在として、現在に至っている。
当初は、谷田部で行われたCBゼロヨンやゼロセンにエントリーしたり
といった風だったが、次第にその活躍場所をサーキットや峠に移行
……というか、藤田さんは走るのが好きで、いまも現役なのだ。

 

 

そのスタイリング感には独特のものがあり、率先して走りを追求する
方針に共鳴するお客さんが、独自のグルーヴ感を醸し出すお店なのだが、


REチューンに関する熱心さや、実際の使用に応じたメニューやセットアップの
追求と、藤田エンジニアリングならではのREチューンが魅力的で、
取材をお願いしたことは数え切れないほど。

 

今回紹介するのは、そんななかでも、REのポート加工に関するもの。
実践的な藤田エンジニアリング流のノウハウは、
20年近くたっても褪せてはいない、と思う。

 

CARBOY1998年8月に掲載されたものです。
※以下、当時のまま掲載させていただきますので※
※価格、仕様等は変更されている可能性が大です※

 


ロータリーエンジンのチューニングは
ポート形状の変更が大きなカギを握る
ノーマルポートが大きくなってきたが
やはりポート加工がフィーリングを左右し
ターボとの相性、そして極限性能に関わる
ロータリー一筋の藤田エンジニアリングが
現在挑戦するターボ用サイドポートを公開

                                                          ©八重洲出版 


タービンの特性を活かす
ポート形状を求めて……

存続の危機だとか、少数派だとか、いろいろな人間が、
様々なことを言う。ロータリーエンジンというのは、
レシプロエンジン全盛の時代のなかにあって、
本当に少数派であり、特異なエンジンであり、
しかもユニークきわまりないパワーユニットであることは間違いない。

だが、その基本的な指向は「合理的な燃焼効率」であり、
「回転トルクを回転トルクとして伝達する」という
明解きわまりない構造が示すように、対レシプロではなく、
独自の回路から生み出されてきたものなのだ。当然のごとく、
悪口が生まれ、誹謗中傷が日常茶飯事のごとく行なわれてきた。

これも事実だ。


「REは燃費が悪い」
「REはエンブレが利かない」
「REは排ガス垂れ流し……」

いろんなことを言われながらも、REは確実に進歩してきた。

その最大のものは、マツダというメーカーの努力だろう。
コスモスポーツ、プレストクーペ、ルーチェ、コスモ、
RXー3、そしてRXー7と呼ばれるスポーツカー造りのなかで、
REはどんどんと進化を続けてきた。

SA22C、FC3S、FD3Sと、RXー7はそのフォルムを変えながら、
心臓部にも大幅な改良が加えられてきた。細かいシール類の
変更もそうなのだが、一番大きく変わってきたのは、ハウジング類だろう。

その材質、ポートの形状というものは、現行のエンジンに
関して言えば、昔のチューニングエンジンとよく似た形状になっている。

材質は、その昔のスポーツキットと同等の材質が使われ、
表面処理のレベルもグッと向上している。

だからこそ、最近のREマシンは、レシプロだとか、
REだとかといった区分ではなく、若いCB野郎に
支持されている。FD3Sのフォルムもカッコいいし、
ターボチューニングしていっても、レシプロと大差ない
レベルでの扱いやすさ、燃費、そして絞り出される
パワーを手中にすることができるのだ。

だからというわけでもないが、最近では、REのサイド
ポートチューンという言葉を聞く機会が、非常に数少なくなってきている。

NAは別だ。NAに関しては、プライベートレベルで、
様々なポート加工が行なわれ、独自のノウハウが注ぎ込まれた
エンジンが作られている。だが、ことターボモデルに関して言えば、
ポート加工を全面に打ち出しているショップはほとんどないし、
事実、通常のチューニングでは、ポートはノーマル状態でOKなのだ。

だが、REチューンの初期からポート形状にこだわり、
ターボになってもこだわり続けている人間がいる。

CB読者ならとっくにご存じの藤田エンジニアリングの藤田さんだ。
今回は、藤田さんが現在行なっているREのサイドポートチューン、
なかでもターボモデル専用に考えられた様々なチューニングに肉薄してみたいと思う。

 

RE特有のポート加工は
タービンとの相性が問題

その前に、どうしてこんなふうにくどくどと前フリしたかを
解説しておこう。さきほども言ったとおり、現在のチューニング業界、
なかでもターボチューンの場合は、ポート加工をするところは限られている。

チューンの度合いも、相当高くなってこないとエンジンから
やるということは少なくなっている。
この状況を考えてもらいたいのだ。エンジンに手を入れない状態と、
手を入れる状態のどこが違うのか? そしてどうしてエンジンに
手を入れていかなくてはいけないのか? これをシッカリと
考えながら、以下のノウハウを読んでいただきたい。

というわけで、まずはREのポートについておおまかに
おさらいしておくところから藤田さんの最新ノウハウ公開を開始しよう。

REは、おおざっぱに言ってシリンダーブロックにあたる
ローターハウジングとヘッドにあたるサイドハウジング、
そしてピストンに相当するローター、クランクと同じ働きを
するエキセントリックシャフトから構成されている。

これらのパーツを連結し、あるいはクリアランスを保ちながら、
内部でローターを回していくために、サイドシール、
コーナーシール、アペックスシールといったシール類があって、
REというエンジンは、回転運動をしながら吸入、圧縮、
爆発、排気という行程をこなしている。

チューニングする場合は、このなかのサイドハウジングに
設けられているインテークポートの形状を変えること、
ローターハウジングにあるエキゾーストポートの形状を
変更すること……これらが一般的に知られているチューニングだ。

ここで、インテークポートを例にとって、レシプロエンジン的に
その役割を解説してみよう。

まず、変形の三角形のようなインテークポートの形状は、
なんとなく構成されているわけではなく、各種シールの
走る部分によって決定されている。つまり、自分の都合で
形状を変更することができないということだ。これはレシプロの場合、
ウオータージャケットの都合で、ポート形状の変更が制限される
ということと同じだと考えていい。

この制限のなかで、どのようなポート形状を作り上げるのか?

ここで考えなければいけないのが、もともとのノーマルポートが
大きく設定されているということだ。昔のノーマルとは違って、
ほとんどサイドポートチューンしたのと同じ程度の大きさを持っているわけだ。

だから、ポートチューン後の大きさの差はそれほどない。
詳しくは、次頁のポート変更図を参考にしてもらいたいが、
これらは、すべてオイルシールの通るライン、水穴、
コーナーシールの通るライン等で制限されている。
上と外側はコーナーシール、内側はオイルシール、
そして三角の2頂点のうち内側の上側はオイル穴、
下側は水穴が通っていて、この範囲内で加工するわけだ。

インテークポートには
削る限界値が存在する!?

こんななかで、敢えてポート加工をするのは、タービンを
装着した場合の、ピーク時の性能ばかりではなく、中間域の
フィーリング等を変更していきたいからだ。

インテークポート、エキゾーストポートの形状を考える場合、
ローターがその穴の脇を通っていくわけだが、これによって、
ポートの上下寸法(正確には上下寸法だとはいえないのだが……)が、
カムシャフトがバルブを押している時間であり、


ポートの左右寸法というか、幅がバルブのリフト量だと
考えてもいいだろう。だから、インテークのバルブ開弁時間を
長く取りたいならポートの上下寸法を長く取り、
リフト量を増やすなら左右寸法を大きく設定するということになる。

レシプロターボの場合でも、ターボチューンが激化していくにつれて、
カムシャフトの作用角は大きく、そしてリフト量も大きくなる傾向になる。
もちろん、インテークとエキゾーストのオーバーラップも大きく設定されていくのだ。

ここで、藤田さんが行なっているサイドポートチューンは、
タービンの特性、風量等によって、ポートの形状、つまり
上下と左右寸法を変えることによって、タービン特有の性能を
活かすという作業になる。

タービンの種類によって
削るバランスが違う??

REの場合、レシプロと違って、カム交換によって
いろいろと試すということができない。バルタイや
リフト量を変更するためには、エンジンをバラして、
ポートを削り直すという作業が必要になってくるのだ。

だから、このポート加工なしで作業を進行していくショップが
多くなるわけだ。NAの場合は必要最小限の作業だったわけだが、
ターボの場合は、ある程度はタービン特性の差が、
チューンの差となって現われてくれるので、そのレベルで
OKを出していくというわけなのだ。

現在藤田エンジニアリングにおいて、13BREに装着している
ターボの種類はTD、TO4R、TO4S、T78、T88と数種類あるのだが、
このなかでは、TDタービン、T78、T88以外はカットバックが
入っているためか、排圧が抜けてくれるのだが、TDは上で排圧が抜けてくれない。

このあたりのこともあって、ポート加工が行なわれている。
それと同時に、タービンの羽根を尖らせてやるという
「カットバック加工」を施して、上で抜けるようにしてやることも効果的だ。

インテーク側の加工は、ポート出口の形状変更だけではない。
内部の構造が重要なポイントとなってくる。ただし、
これは3次曲面になってしまうので、図解が難しい。

で、できるだけ詳しく文章にするなら、ポート入口から
出口にかけてのカーブを滑らかにすること、そして上部の
曲がりは、できる限りえぐり込んだような形を取りながら、
吸入気を巻き込んでいくような形で、ポート出口まで
持っていく……ということになる。

ただし、このあたりの加工は、ベースエンジン(ハウジング)に
よって変わってくる。というのも、FCの時代には、インテーク
ポートの形状は、サイド部分から一直線に入っていたのが、
FDになってからは、ポート入口から徐々に下がってくるような
ダウンポートとなっているのだ。だから、この変化を考えながら、
そのノーマルポートに応じた変更を加える必要が出てくる。

できることなら、FDのポート形状をベースにしてセットすることが
理想だ。そして、これをベースにしながら、ポート上部を削り込んで
いくわけだ。そうすることで過給された吸入気が、スワール気味に
燃焼室(というか、ロータリーハウジング内)に吸い込まれていくことになる。

これがトルクアップのひとつの秘訣である。もうひとつの秘訣は、
ロータリーハウジング下部に設けられているエキゾーストポートの加工方法にある。

これまで、エキゾーストポートを拡大することは、低中速回転域での
フィーリングを悪化させるものとして、慎重に削る必要があった。
だが、ターボという補機類がセットされたことで、排気ポートを
拡大しても、一度タービンを通過するわけだから、ここでトルクが
なくなったりすることはなくなってきたわけだ。

どれだけポートを大きくしていっても、最終的にはタービンの
エキゾースト側で絞られてしまうのだ。これはレシプロも同じ原理だ。
排気ポートを大きくしていっても、タービンで絞られてしまうので、
下が大丈夫。だから、大きなタービンを使い、高過給をかけていく
場合には、可能な限り大きくする……この作業はレシプロでも行なわれている。

 

排気ポートの削り方で
過給の具合が変わる??

ただし、REのエキゾーストポートに関しては、上側を削るか? 
下側を広げるか?という問題には、微妙な差異がある。
上側は、高回転&大パワーを狙う場合に削っていく。つまり、
トルクを発生する回転域を高回転側に移行してやるわけだ。

それに対して、下側を削るということは、タービンの
インターセプトに関わってくる。大きいタービンを下から
回してやろうとするならば、下側を削ってやるといいわけだ。

トルクを大切にするために、タービンの組み合わせで、小さめの
エキゾーストをセットして、カットバックを入れてやることで、
そして、エキゾーストポートの加工で、タービンはすぐに過給状態に
入り、上での抜けもいい……このような状態になるわけだ。

このあたりに、藤田さんのポート加工にこだわる要因が潜んでいる。
ただポン付けで付けたタービンと、ポートとの二人三脚で
作り上げる仕様とは、細かい部分で、そしてそれが大きく
ものを言う部分での差が出てくるということだ。

 

これまで見たことのない
ローター加工に挑戦!!

藤田さんは、ポート加工だけではなく、現在試験的に、
ローターの側面加工を行なっている。ローターの三角形の
弧の部分の角を切削することによって、ポート加工と
同じことをさせようというわけだ。

通常、ローター側面は燃焼室面に対して垂直になっている。
この角を落としてやるということは、本来なら閉じてしまうべき
時点で、ローターの角がない分だけ、まだポートが開いているわけだ。

この削り具合をコントロールすることで、ノーマルポートでは
限界のあった作用角的な部分、リフト量的な部分を、ポートの
削れる限界を超えて変更させてやれるわけだ。

もちろん、削り始め、そして削る量、どこまで削るのか?
といったところの計算は複雑になってくる。言ってみれば、
カムシャフトのローブを作る作業と同じである。おまけに、
カムシャフトの場合は、それ単体で考えればいいのだが、
ローター加工の場合は、ポートとの連係プレーで考えなくてはいけない。

同じように削ったローターでも、ポート形状が違うと、
その作用は全く違ってくるわけだ。
いまのところ、このローター加工は試験的なものらしいが、
データが集まってくれば、これまでのREチューンの常識を覆すに違いない。

昔ながらにタイヤの上にハウジングを置いてポート加工をする
藤田さんだが、メーカー側が素材や形状を変更してきたように、
チューニングサイドも徐々に変わってきている。
これからが楽しみだ。(藤本愼一)


藤田エンジニアリング
599-8101 大阪府堺市東区八下町1-82-1
Tel072-258-1313

 



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