内燃機関 その可能性に挑む!
特集記事(1996年4月)

驚異的な追求力で挑む
大排気量&小排気量チャレンジ
こんな時代も存在……しましたよっ!

今回のご紹介は……ちょっとグレートであります。

国産エンジンをベースにしたモディファイバージョンなんですが、
ひとつの特集企画のなかで、これだけ個性的かつ強烈なインパクトを持つ
エンジンが、3基もあることが、いまとなっては信じられません。

 

 

 

 

まず、トップバッターは、
岐阜のYASHIROエンジニアリングの手になる
1ローターであります。

エンジンチューニングパーツ設計/製作/加工SPL工房誕生!!

YASHIROエンジニアリング 

◎仰天の4ロータードラッグSPLエンジンを世に送り出し、
今回は逆転発想の1ローターを披露してくれた八代さんは、
これまでもドラッグ関係を中心として、様々な加工&
パーツ製作依頼を受けてきた。だけど、これからは
本格的にチューニング&レーシング専用のパーツの設計、
製作、加工等の注文を受けていくために
「YASHIROエンジニアリング」を作ってしまった。
これまでは、八代鐵鋼所のうちで、八代さんが個人的に
していたものを、もっともっと受け入れ態勢&キャパシティを
大きくしようというもので、CB野郎のなかでもドラッグ等の
レース用のワンオフパーツを作って欲しいキミや、
プライベートで必要なパーツを頼みたいキミに大きな力に
なってくれるはず。これまでは、ショップが依頼する
SPL加工の工場でしか頼めなかったが、これからは、
YASHIROエンジニアリングに、難問を解決して
もらうことが……できるようになった!!

 

「走り屋伝説」という本の取材で出会ったのが、
八代さんとの始めての接触だった。

それまでは、CB誌上で4ローターエンジンを作り上げ、
マツダスピードでベンチテスト……そんな経緯だけは
知っていたが、本人と話をするのは始めてだった。

4ローターに関しての自分の知識は「冷却の問題があるので、
パワー測定は予定通りできなかったものの、
プライベーターの枠を超えたチューニング」だといったところ。

結論としては、ロータリーというエンジンは、
なかなか難しいものなんだろうなということだった。

だが、八代さんと会って、4ローターについての
詳しい話を聞いているうちに、自分が勝手に
作り上げていた最初の印象とは
ずいぶん違っていることに気がついた。

八代の4ローターREという意味で名付けられた
「YR26B」は、ドラッグレース用に作られた
エンジンであるということ、だから冷却の問題は、
全然問題とならないこと、パワー測定に関しても、
通常のエンジンとレーシングエンジンの差を考えると、
ちょっとばかりやり方が違っていたこと……いろいろわかった。

そして、自分なりに感じたものは「こりゃ、とんでもないなな〜」
ということだった。プライベーターが頑張って作ったエンジンではなくて、
表面処理や素材加工のプロフェッショナルが、
強度計算を始めとする試算を繰り返して作り上げた
「れっきとした製品」だということだ。

コスワースのDFVのように、レース用に目的を限定して
作り上げられた専用エンジンだったのだ。

極端なことを言えば、ドラッグ用のエンジンなら
ブローするまでに10秒間だけ保てばいいわけだ。
その10秒という寿命のなかで、他のエンジンが
マークするタイム以上のものを実現できれば、
たとえ10秒間しか寿命がないエンジンだったとしても、
それは充分評価されるべき……。

もちろん、YR26はそこまで極端なエンジンではない。
その日のうちに何度もトライを繰り返してもOKだし、
ワンレースで終わりというものでもない。

北海道では、パイプフレームに搭載されてトップクラスの
成績を残しているようなので、そのうちCBでも取材したいと
思っているくらいにポテンシャルがあり、耐久性もあるエンジンのようだ。

もうひとつ驚いたことを報告しておこう。そのとき、
八代さんの仕事場には、何本も何本も4ローター用の
エキセントリックシャフトがストックされていたのだ。

YR26Bというエンジンは、たった1基だけ作られた
試作エンジンではなくて、数は少ないながらも
量産される予定で作られているエンジンだったのだ。

だから、注文する人がいれば、キチンと供給でき、
トラブルがあったときでも対応できる。スペアパーツとしても、
それなりの数のパーツをストックしている。

これは、ちょっと大げさになるかもしれないけれど、
エンジンメーカーとしての当然の姿勢なのだ。

そのとき、ボクが八代さんに言ったことは、
「どうしてローターハウジング作ろうと思わないの?」
だった。素人の怖さである。

だけど、その疑問に対しての答えは
「作ろうと思ってます。図面上ではある程度きてるんですけど、
専用のローターの曲線の設計が難しくて……」というものだった。

そんな八代さんから新しい情報が届いたのは数カ月前のことだ。

「そんなにたいしたもんじゃないんですけど……
ちょっと面白いかな?と思ったもんで」

話を聞くうちに吹き出してしまった。4ローターを
作ったエンジニアが、今度は逆転の発想で1ローターを
作ったというのだ。しかも、もうすこししたら火が入るという。

「ワンローターなら排気量は660oですから、
軽4の範囲で登録できるんじゃないか?と思ったんですよ。
4ローターを作るときは、弟が『そんなもんできるわけない!!』
といったもんで、向きになったんですけど、
今度は反対で『そんなもん作ってどうすんの??』というもんで、
楽しんで作ってみたんです」

確かに、13Bは2ローターで、排気量を考えると、
ワンローター分なら660oの枠に収まる。

八代さんの考えとしては、今回のワンローターは、
八代RE構想の一環で、ローターが2個だろうが4個だろうが
1個だろうが、基本になる考えは同じなのだ。

エキセントリックシャフトの寸法、ロータージャーナルの数、
そして細部の加工ができれば、理論上は可能なはず。

そして、理論が理論だけで終わっては、八代さんは納得できない。

自分の手を使い、頭を使って仕事をしている職人の気質なのだろう。

今回の1ローターエンジン「YR6.5B」(2ローターの13Bの
半分だから6.5B……となるわけだ)は、
インジェクション&ドライサンプ仕様で、
バランスを取って回すところまではやっていきたいという。

「だけど、自分でクルマに積んで公認取って……
そこまでする予定はないんです。
だから、CBさんの誌面上で、こんなエンジンを
使ってみようという人がいたら、素材として使って
もらえればいいかな?と思っています。

軽4のエンジンルームにワンローターSPLっていうのも
面白いんじゃないですか?」

八代さんは、本気でそう言っているので、
その気になったCB野郎は連絡してみてほしい。 

さて、このYR6.5Bと名付けられたワンローターだが、
その原型は4ローターにある。エキセントリックシャフトの
材質、形状、そしてロータージャーナル等のバランス、
表面処理……すべてが、4ローターを作り上げるまでに
試行錯誤しながら作り上げられてきたものだ。

八代さんは、パソコンの内部で設計作業をこなしている。
工業デザイン等の世界でもそうだが、CAD(キャド)システムを
駆使して、細かい寸法、形状、加工の順序等が書き込まれ、
その指示に従って切削機械が稼働し始める。

強度計算、応力計算、そして耐摩耗性能と、
新しくパーツをおこすためには、様々な要素を総合的に
計算し、設計する必要がある。

だが、その緻密な計算のベースになるのは、
人間の発想の力であり、計算ではわからない部分、
予期しないトラブルに対処していくのも、人間の対応力……である。

クルマのROMでもそうなのだが、コンピュータは計算を
する機械であり、切削機械は削るだけの機械である。
この両者を組み合わせて、人間がコントロールする
ことによって有機的なものが生まれてくる。

1ローター用のエキセンには、ノーマルには望めない
大径のオイルジャーナルや、耐摩耗性に優れた
メタルシステム等が採用されている。

これまでREチューンには、SPLパーツと呼ばれるものが
なかった。レース用のハウジングやローター等は
存在したものの、ストリート用のチューンパーツ
というのは、REの場合ないのが現状だ。

L型のクロモリ鍛造フルカウンタークランクシャフトに
相当するものが始めて誕生した……YR26B&6.5B用に
製作されたエキセンのことはそう考えれば間違いない。

そうなると、2ローター、いや3ローター用の
八代SPLのチューニング用に設計されたエキセンの登場が待ち望まれる。

「ええ、それも考えています。できればノーマル13Bの
ハウジング等を最大限流用できるような形で製作できれば、
いまのプライベーターのREチューンの延長線上でチューンが
進められますから……ウン、たぶんなんとかなるんじゃないか?
と思っています」REファンにとってはゾクゾクしてくるような
話だが、八代さんは……本気だ。(藤本愼一)

 

 


続いては、和歌山のプライベートチームである
オートカルザのL型3.5L。

 

当時の最速L型搭載マシンのDATAです。

J.Johnsto DRAGSTAR DATA

●L28改NAチューン
●最大馬力330PS
●スタート回転7500rpm
●MAX回転9500rpm
●シフトUP時回転9400rpm
●ベストタイム8秒66
●終速235o/h
●車重523kg
●ウエーバー55φ×3
●92φピストン(ジャケットフィラー&スリーブ使用)
●LD28クランク
●圧縮比15.6
●燃料130オクタン
●ラジエターなし(ブロック内冷却なし。ヘッドのみ7.6Lの水を電動ポンプで回す)
●水温スタート時71℃/ゴール時93℃
●ミッションTH400改2速
●ファイナル5.30

 

 


以前、自分のクルマにL型3.3Lエンジンを搭載したことがある。
だが、そのエンジンは、自分でアクセルを踏むことなく、
スリーブが落ちてしまってブローした。

L型エンジンの限界ボーリングは90φ……そんな常識が
できてしまったのも、通常のスリーブ挿入では
それ以上は無理だという判断が基準になっているからだ。

スリーブを入れるための寸法を入れたボーリングを
してしまうと、シリンダー内壁はズッポリとなくなってしまい、
ウオータージャケットが顔を出す。

ここにかろうじてスリーブがのっかる段差を付け、
なんとか工夫してスリーブを挿入しても、エンジンが回り、
振動が発生することによって、苦心してセットした
スリーブは無残にもずれたり、落ちたりしてしまう。

で、最近の傾向としては、L型エンジンの常道で
あったストローク83oというのを見直して、
ストローク85oのクランクシャフトを組み込んだ
89φ仕様の3.2Lというのが、
L型の最大排気量……そういうことになっていた。

そう、なっていた、のだ。今回紹介するのは、
その常識に真っ向から挑む大排気量化計画なのだ。

そして、それはアメリカではけっこう
行なわれていることで、無謀でも無茶でもない。

和歌山のオートカルザという
プライベートドラッグチームのことは、
ドラッグに興味のある人なら、当然知っているだろう。

自分たちのドラッグチャレンジとエンジンチューンの
興味の双方が相乗効果を上げながら、次々と新しいパーツ、
方法論を試している集団であり、それなりの結果も残している。

そんな彼らが、今回やろうとしているのは、ブロックの
ウオータージャケットを全部埋めてしまって、
ビッグボアピストンを入れようという計画だ。

実は、これまでのオートカルザのL型では、
半分ほどウオータージャケットが埋められていた。

その結果、水温的なトラブルや、水まわりが
変わったことによるマイナス面がないこと、
より過激なトルク追求の方向から、全面的な
ウオータージャケット封鎖作戦(?)に至ったわけだ。

下の一覧表を見ていただければわかるように、
アメリカではL28改のメカチューンエンジンに
92φピストンを入れ、330馬力仕様のエンジンで
8秒66というタイムがマークされている。

もちろん、コース状況や車重523kgというマシンの
構造等の違いはあるものの、L型メカチューンで
これだけのタイムが出ているということは……
充分日本国内のプロストッククラスで戦える
……ということになる。

オートカルザというプライベートチームは、
本気でL型メカチューンによるプロストッククラス制覇を考えているのだ。

おっと、話がちょっとばかり脱線してしまったが、
その本気のひとつの証しが、今回のエンジンチューン作戦となっている。

以前、CBで紹介した86oストロークのSPLクランク
シャフトは、通常のクロモリと呼ばれる材質よりも
グンとランクアップした素材を使用し、独特の形状を
持ったウエイトを持ち、大排気量化の一端を担っている。

これに組み合わせる超軽量のコンロッド、大径軽量ピストン、
そして高圧縮比、カムシャフト等によって、従来のL型チューンとは、
180度違った視点からL型を見つめ直していこうというもの。

で、ブロックのウオータージャケットの埋め方(?)だが、
これは、REチューンでペリフェラルポートを作るときの
ようなものかな?と予想していたのだが、もっともっと簡単なものだった。

「ブロックフィラー」と呼ばれるセメントの粉のようなものが
アメリカでは売られていて、それをこねて流し込む……これで終わりだ。

当然のことながら、ウオータージャケットは使用できなくなり、
ブロック側の冷却はできない。ヘッド側の水まわりは、
新たにウオーターポンプを新設し、電動でまわすことになる。

アメリカのデータでいくと、スタート時に71℃だった水温は、
ゴールして帰ってくると93℃と、沸騰する以前でOK……だという。

おっと、ここで大きな疑問を抱えている人もいるだろうから、
ブロックのウオータージャケットを埋める「メリット」
について説明しておこう。

まず、最初に言ったように、埋めることによって、
これまで不可能だとされていた大口径スリーブを入れることができる。

そして、ブロックの剛性を上げることができるのが第二の利点。

最後に、ここのところが大事なのだが……ブロックの
温度を高めに設定できる……のだ。

エンジンをジックリとさわったことのあるチューナーが
口をそろえて言うことは「ヘッドは冷して、ブロックを温める!」だ。

これが高出力を得るための秘訣というか、ノウハウというか、
経験値というか、そういうものなのだ。

一般的に考えると、熱はエネルギーなのだ。

だから、エンジンを守るための冷却はギリギリに、
そしてエネルギーを最大限に活かして、エキゾーストバルブから
排出することができれば、それが出力につながる。

まあ、くどくどと説明するとそういうことになるのだが、
実際問題として、ブロックの熱量を奪わない方法で
エンジンが保つのか? それが出力に結び付くのか? 
このあたりはやっていくしかないだろう。

その結果、タイムが出れば、そのやり方は
ある程度いいやり方だということになる。

ただし、ヘッド部分だけに水をまわすとは言っても、
ノーマルの水路を使って、フロントからリヤにかけて
流してやるだけではダメだろう。各気筒の冷却度が
均一になるような水まわり、冷却システムを考えなくてはならないはずだ。

オートカルザ流L型3.5Lは、今年中にはデビューする予定だ。
メンバーそれぞれに仕事の合間に、パーツを集め、仕様を検討し、
そして実際に組み付けテストする。

なにしろプライベートチームだけに、かかる費用や時間は、
みんなで分担し、なんとか自分たちの考える理想の
ドラッグエンジンを追い求めていきたい
……そう考えてはいても、現実は大変だ。

チューニングショップでもない、仕事でもない、
将来的に仕事にするつもりもない。
そういう意味では、完全な趣味なのだ。

一度だけ聞いたことがある。どうしてここまで
パーツを探し、作り、失敗する可能性も高いチューンにチャレンジするのか?と。

それに対する答えは明解だった。

「売ってないもん。欲しいパーツが売ってないから、
自分等で注文して、考えて作るしかない」

たしかに、L型チューンを看板にして営業している
ショップやメーカーには、オートカルザのメンバーが欲しいパーツがない。

だから、アメリカに目が向く。加工、素材、考え方と、
いろいろな面でアメリカのチューニングショップ&パーツメーカーは、
面白いし意欲的だ。ドラッグレースという下敷きがあると
言ってしまえばそれまでだが、エンジンを作る、
あるいは大幅にモディファイするという楽しみを
知っているといういみでは、アメリカやヨーロッパは、
日本人の先輩だと言うことができるだろう。

さあ、ブロックを埋めたL型3.5Lが、4分の1マイルを
どれだけのタイムで走ることができるのか? 
そしてそのためのコンピュータシステムは? 
サスペンションは? ミッションは?と、
オートカルザの動きからは、ちょっとばかり目が離せない。
パーツはそろった。ノウハウも貯め込んできた。

だけど、貸しガレージ2個分のスペースで
展開されていくプライベートチームの、
エンジン&マシンチューンは、まだまだこれからが本番だ。(藤本愼一)

 

 
 

 

 

そして、最後は、おなじみのレーシングサービスYASU製
4A-Gの究極進化形である9A-Gであります。

A-GHI→4.5A-G→5.5A-G→6A-G→7A-G→8A-G→9A-G
バリエーションが豊富になる!YASU流4A-Gチューン!!

◎7AFEというエンジンが出現したおかげで、
これまでよりも4A-Gチューンのバリエーションが
ググッと豊富になった。RS YASUの4A-Gチューンを
排気量別に分類していくと、ノーマル排気量の
4A-Gハイコンプ→83φボアアップの4.5A-G→HKS
5A-GZクランクを使った5.5A-G→限界ボアアップ85φの
6A-Gというラインナップに加えて、ノーマル7AFEクランク
&ブロックを使用した7A-G→83φボアアップの8A-G→
偏心ストロークアップした9A-G……となる。

いやあ、ホントにすごいわ。4A-Gというエンジンを
中核にして、いろんなピストン、クランク、コンロッド、
そしてブロックが入り乱れてのボア&ストロークアップ争いだが、
どうもこれからはボア83φのラインに、ストローク85.5oと
いったところが、4A-Gチューンのポピュラーになってきそうな
予感がする。ブロック代金等が余計にかかるが、ここは低価格設定を期待したい。

 

 

ロングストローク化を
加速させる7AFE流用SPL仕様登場!!

しかしながら、4A-Gというエンジンは、
しぶといというか、粘り強いというか、
近来まれに見るエンジンだということができそうだ。

1600ccの排気量、DOHC機構、そしてトヨタ製、
AE86というシャシー……いろいろな理由は
考えられるのだが、登場以来数え切れないほどの
チューナー、プライベーターが、そのチューニングの
可能性にチャレンジしてきたという「事実」は、
このエンジンの魅力をなによりも雄弁に語ってくれる。

なかでも異色チャレンジを繰り返してきたのが、
流用チューンでおなじみのレーシングサービスYASUである。

ボアアップ、ストロークアップはもちろんのこと、
限界ボアアップや新型パーツを使ったモデルチェンジ、
キット化、そしてなによりもそのチューニングする
エンジンの数とバリエーションはすごい。

今月は、そんなYASUの最新4A-Gチューン情報が
届いたので紹介したいと思う。

トヨタのハイメカツインカムシリーズの
新しいエンジンである7AFEというエンジンが
登場したことによって、4A-Gチューンの可能性が
ググーンと広がったのだ。

まず、アウトラインから話してみよう。4A-Gと7AFEという
エンジンのブロックは、水穴、オイル穴が一緒なのだ。
つまり、7AFEブロックの上に4A-Gヘッドを搭載すれば、
それだけで動いてしまうというわけだ。

もちろん、細かい部分はいろいろと問題もある。
だが、基本的な部分が共通ならば、あとは工夫と
アイデアでなんとかなってしまうもの。

7AFEのブロックを使うメリットは、ふたつある。

ひとつはなんといってもそのロングストローク。
4A-Gが77oのストロークを持っているのに対して、
7AFEは85.5o。それだけで8.5oの差があるのだ。

L型を例にとれば、L20クランクが69.7o、
L28クランクが79o、そしてLD28クランクが83oだ。

つまり、L20とLD28では13.3oの差であり、
L28とLD28では4oのストローク差がある。

だから、4A-Gと7AFEクランクのストローク差が
8.5oというのはものすごいことだいうことがわかってもらえるはず。

おまけに、メインジャーナル径は同じだから
流用することが可能という面でもよく似ている。

ただし、ひとつだけ違うのは、コンロッド大端部が
入るジャーナル部分の口径が、L型の場合は共通だったが、
7AFEと4A-G(後期型)では48φと42φという差がある
だが、この6oの差が、今回の4A-G改9A-Gのキーポイントだ。

というのも、情報通のCB野郎なら知っていると思うが、
YASUのチューンの特徴は、ノーマルパーツを
うまく流用することだけではなくて、クランクシャフトの
「偏心」加工をミックスさせた大排気量化チューンにもあるのだ。

つまり、48φというジャーナル径を、ただ4A-Gの42φに
合わせて削るのではなく、削る中心をオフセットさせる
ことによって、ストロークを延ばしてやるわけだ。

もちろん、この加工には、高度な技術と長い加工時間を
必要とする。YASUでは、この加工を信頼できる内燃機加工屋さんの
「カトー」に依頼している。バイトの刃を送りながら、
その材質の硬度、密度等をチェックしながら、削る量を
決定するためには、長い経験と豊富なノウハウが必要とされる。

だから、他のチューニングショップでは、
この偏心加工が一般的ではない……のだろうが、
チューニングの方法論としては秀逸である。

とまあ、ちょっとばかり芸の入った加工によって、
7AFEクランクは4A-G用のチューニングクランクに生まれ変わる。

ふたつめのメリットは、ロングストロークとも関連してくるのだが、
7AFE用のブロックは4A-Gよりも15o高いのだ。
この結果、コンロッドの寸法は長くなる。

チューニングエンジンの傾向として、ショートピンヘッド化
していることは、詳しい人なら知っているだろう。
これは、できるだけコンロッドを長くして、
振る角度を小さくしたいということでもある。

4A-Gチューンに、7AFE用のブロック&クランクを
使うメリットというのはわかってもらえただろうか? 
おおざっぱな計算をしてみると、偏心加工した
ストローク&標準的なボアアップを組み合わせてみると、
チューン後の排気量は、4A-Gの81φ×77oの
1586ccから83φ×90.5oの1958cと、372cの増加となる。

しかも……4気筒である。この372oという排気量の
増加率が、どれほどのものかを想像してもらいたい。

4A-Gで、1気筒あたり約500oなのだ。
往年の2TーG改2Lに相当するわけだが、
当時とはバルブの数も、燃焼効率も違っているので、
その性能差はもっともっと大きくなるはずだ。

各部の加工や、パーツの選択等の細かいデータに関しては、
ノーマルパーツとの比較写真やデータを参考にして
もらえばわかりやすいと思うが、流用のYASUの名に
恥じないだけの内容充実&低価格指向は、ハッキリとわかってもらえるはず。

今回の9A-G計画で、最大の難関となったのは、
コンロッドの選択とタイミングベルトだった。
ベルトは、国内のものではちょうどいいものがないのだ。
工業用のものならあるのだが、耐久性の面で不安が残るので使えない。

コンロッドも、帯に短しタスキに長し……いろんなコンロッドを
注文して実測し、組み合わせを考えた結果、いまのところは
5AFE用を使用する予定だが、これだけは変更になる可能性もある。

排気量が飛躍的に増大する9A-Gだが、ただ排気量アップに
よるトルク増大だけを狙ったエンジンではない。
少し前のCBでも紹介したように、YASUでは
「キャブ仕様に負けないパンチ力のあるインジェクション仕様」を目指している。

だから、インジェクションシステムを最大限に活かすバルブタイミングで
セットするハイカム(320/304程度)を組み込む予定だ。

もちろん、ストリートに対応するために、アイドリング問題を
解決するコンピュータ&フューエルシステムが必要になってくる。

これについては、アイドリング系統を別経路でとった
ツインインジェクターシステムを開発中だ。
ツインインジェクターとは言っても、ノーマルのノズルを
ツイン使用するので費用的にも安心だろう。

このためのサージタンクは、ノーマル比で2.5倍の容量を持ち、
排気量アップ&高回転域に対応するように考えられている。

トヨタでは、ロングストローク化に対応して、ジャーナル経変更、
ハイブロック化等の設計変更をしたつもりの7AFEだが、
その変更パーツを使ったチューンバージョンが、
こんな形で登場するとは……予想できなかったはず。

でも、「立ってるものは親でも使え!」と昔から言う(?)ように、
ノーマルパーツの性能向上が著しい最近のエンジン事情だから、
コストがかからずに高性能を期待できる流用チューンは、
その効果が2倍、3倍と期待できそうだ。

早く火を入れてみたい。初体験の4A-G2Lのトルクを
味わってみたい。ワクワクドキドキの4A-Gの
NEWバージョン……こいつはホントに楽しみだ!!(藤本愼一)

 

 



■CARBOY企画特集 ■

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よろしかったら、お願いします。

 
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