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一本の電話が15年前のことに繋がった……

マツモトエンジン(奈良)


実家で一杯やってるときに
突然電話がかかってきた……


JDDA WESTの最終戦が終了して、
岸和田の実家で、まったりとしていたときに、
突然携帯のベルが鳴りました。

「はい……藤本です」
「藤本さん? 松本です」

「どこの松本さん?」
「奈良の松本です」

自慢じゃありませんが、藤本は記憶力が、あまりよくありません。

でも、話を聞いて見ると……知り合いと話をしていて、
CARBOYの話になって、電話帳をみたら「CARBOY藤本」という
項目があって、んで、電話してみた、とのこと。

どちらも呑んでいたので(笑)
後日、東京への帰り道に寄りますと言って、電話を切った。

 

 

で、聞いた住所まで行ったのだが、
そこから先は迷路。
軽トラで迎えに来てくれた松本さんを見て、
一気に思い出した。

「あ、ガラージュモリの……」
「ええ、いまは、マツモトエンジンという名前で」

2001年に、アルテッツァの取材をさせてもらった
松本さんだった。

 

そのときの記事を、下記に掲載しておきますが、
ボチボチとおじさん同士の話を始めた。

「なんかね〜、娘が結婚して、出ていくことになって」
「これまで、エンジンのことばっかりやってたんだけど」
「そういう時代が、ホンマにあったんやろか?とか思って」
「好きなことをし続けてきたはずなのに……」

「ちょっと前に、エンジンのテストベンチが売りに出てたんやけど、
 買うて、どうするんやろ?と」
「いま、トラックの仕事が多いんやけど、それもオモロイんや」
「なんか、エンジンとか、どうなっていくんやろ?」

松本さんは、奈良の出身で、ツインパワーに勤務したあと、
東名エンジンに入社して、夢中になってレーシングエンジンの
仕事ばかりをして、その後、HKSに入って、そこでも
レーシングエンジンの製作を続けていた。

その後、前述のガラージュモリというお店を開いて独立。
その後、現在の場所に移って、知り合いや、口コミで来店する
お客さんのクルマをモディファイしている……ま、ざっと
故事来歴を100字以内で記述すると、そういうことになる(笑)

 

 

 

その後、RB30のNAチューンの取材をお願いしたのが2003年。
つまり、15年前のことだった。

そこから、先日の電話……でありました。

「松本さん、なんで突然電話くれたの?」

「いやぁ、あのときに会って話した藤本さんのこと、
けっこう覚えてたんよ。他の雑誌社のひととは違うって……」

「そうなん?」

「うん、で、なんか、電話したなって(笑)」


オッサン同士、なんだか、ワケのわからない会話であります。

でも、話していくうちに、松本さんが感じていることが、
藤本自身が感じたことと、オーバーラップすることに気がつきだした。

こんなWEBページを作り出したのも、
CARBOYという雑誌を通して、30年間やってきたことが、
いまの世の中では、なかったことになってしまう。
そんな恐怖感があったからであります。

クルマに、スピードも、フィーリングも、
乗り味も、ロマンも、あこがれも……そんなもの、必要ないでしょ。

タバコが体に悪いから、他人の健康を害する恐れがあるから、
もう、日本全国禁煙にしちゃいましょう!

そんな味噌も糞も一緒にしてしまうような『世相』とかいうやつに、
オジサンなりの反抗をしたいわけです。

ふざけんじゃねえぞ、テメエら、なんでもかんでも、
便利や風潮だけで片付けんじゃねえ……ま、岸和田出身の
藤本としては、なんだか江戸っ子風に話をするのは、
どうも苦手なんでありますが。
とりあえず、そういう気分で始めたCARBOYのWEBページであります。

松本さんが、若い頃夢中になった『エンジン』というものの
可能性や、自分が手をいれることによって、生まれ変わる驚愕。
そういうものを、ずっと追いかけてきたはずなのに、
いつのまにか、世の中が様変わりして、
時代に取り残されたような不安感……。

「でもね、松本さん。オレは思うんやけど、
自分が好きでやってきたことを、オッサンになって、
もう一度、損得関係なしにやってみるというやり方はないかな?
ま、どっちみち、これから先の人生と言っても、
それほど長いわけやないし、現役でやれる時間って、
少ないと思うんやな。そやけど、そやからやらないという
選択肢はないと思う。いまの感じのままで、これまでとは
違ったやり方があるかも知れんし……」

 


今回の記事は、そういう記事であります。
松本さんが、何かを作ったとか、これからこういうものを
やろうとしているという話ではなくて、
もっと、プリミティブというか、男の源泉にひっかかること。
う〜ん、なんかうまく表記できませんね。

でも、同じようなことを感じているひとは、
日本全国に、いっぱいいると思います。

松本さんに、いま、藤本がやっていること、
全国で、いろんな思いの人間がいること、
そういうことを話しながら、HPの記事を見てもらった。

「えっ? こんなもん作ってる人が居るの?」
「このひと幾つ? えっ?30台? 凄いな〜」
「ポルシェ作るんですか? かっこええな〜、コレ」
「へえ〜、いっぱい、いろんなこと考えてるヒトがいてるんや〜」

これまでの自分がやってきたこと、興味を持ってきたこと、
そういうことが、否定されているような……お、
そうか、ここで言おうと思ったのは、
人間としての『アイデンティティー』のことなのだと思う。

「自分という存在は、何者なんだ?」ということ。

すぐに答えが出ることじゃありませんし、
正解が存在する質問でもありません。

でも、どこかに、自分の気持ちのどこかに、
そういうものが、忘れ去られたかのように装いながらも、
どこかに確実に存在している。

そういうものを、オッサンふたりが、ボチボチと話しながら、
再確認したような再会でございました。

 

工場から、松本さんの自宅に移動した。
そこには、2001年に、CARBOYで紹介したアルテッツァが、
まだ、存在していました。エンジンルームは、
ずいぶんとくすぶっていましたが、
まだ、ありました。

爆音すぎて、エンジンを掛けることはできなかったけれど、
当時、最新鋭のノウハウとチャレンジ精神が作り上げた
エンジンが、まだ、下の写真のように、ありました。

今後の展開があるのか? ないのか?
よくは分かっておりませんが、とりあえずは、ご報告まで(笑)

 

 

最近いろんなところで製作されている3S-G改の
2.2L仕様だが、今回紹介する2.2♀はちょっと
ばかり違う……そうノーマルのVVT-i機構を
活かした状態でセットアップされているのだ!!

 

アルテッツァに搭載されている3S-Gエンジンには、
VVT-iという機構が採用されている。

これは、エンジン回転数やアクセル開度に応じて、
コンピュータが吸排気バルブの開閉タイミングを
連続的に最適化するもので、カムシャフトの作動角を
油圧によってコントロールすることで、低速側では
トルクフルな特性(つまりは乗りやすい)を持ち、
高回転域ではパワー感を実現しようというもの。

だが、この制御は、油圧によってソレノイドバルブを作動させ、
進角度を変化させるというもの。この制御がノーマル状態では
ガッチリとコントロールされているのだが、エンジン仕様を変更し、
カムシャフトの作用角を変えていくと……コントロールは非常に困難となる。

そのせいで、これまではアルテッツァの3SーGチューンのときに、
VVT-i機構は殺されていた。TRDからは、VVT-i機構を活かすための
カムシャフトが発売されているのだが、これまでこいつを使った
チューン仕様というのは聞いたことがなかった
……だが、やっぱり困難に挑戦する技術者がいました。

 

奈良県のガラージュモリは、アペックスのディーラー店。
チューニング部門を担当する松本さんが、
この困難と言われているVVT-iの制御にチャレンジをしたわけだ。

基本的な仕様は、戸田レーシングの87φピストンを使用し、
トヨタ5Sクランクを使った2.2♀。ヘッド部分には、TRD製の
VVT-i用280度カムをIN&EXにセットして
(なにしろデュアルVVT-iだからね〜)組み上げられている。

組み込み作業自体はごく一般的なもの。だが、松本さんは、
キチンとしたNAチューンにこだわりたいと、VVT-iと共に、
ヘッドチューンには徹底的にこだわった。

松本さんは、チューニングメーカー系エンジンパーツ開発&
レース車輌製作等の経歴を持つスペシャリスト。

これまでのノウハウを注入して、ストリートユースの
トルクフルなチューニングNAを作ろうと思い立ったという。

このエンジンのポイントになるのは、ポート形状とVVT-i制御。
まず、ポート形状に関しては、ノーマルの奥に行くほど曲がりが
強くなる形状を作り直すことから始めた。ボンドでポート内部を埋め、
そこからもう一度ポート研磨をするわけだ。

その結果、インテーク側のポートは、キレイなストレートポートを作ることが可能になった。

ボンドで埋めるというと不安に思うひとも多いと思うが、
硬化すればアルミのヘッド材質と同等の強度を持ち、
剥がれもないので、心配は無用。

バルブガイドを埋めるような形で整形されたので、
TRD製の4連スロットルを装着すると、バルブが見える
(バタフライを全開にしないと見えない……当たり前か?)。

NAチューンの性能というのは、パワー値やトルク値だけで
語られるものではなく、その過渡特性や、アクセルを踏んだ
瞬間のフィーリング等が非常に大きなポイントとなる。

この意味でも、VVT-i機構を採用したままでのチューニングというのは、
これからの時代に要求度がドンドンと大きくなってくることと思われる。

クラッチに関しても、伝達能力の大きさは当然のこととして、
ストリートでの扱いやすさが大きな選択ポイントとなってきているように、
NAエンジンだから、チューニングエンジンだからと、
ピーキーな性能では納得しないお客さんが多くなってきているのだ。

VVT-i機能は、予めセットしてあるソレノイドバルブの作動点で、
油圧がかかってバルブタイミングを進めていくようになる。

だが、ここが難しいのだ。油圧の設定が高すぎると、
予想していた角度よりも大きく動いてしまう(オーバーシュートしてしまう)のだ。

そして、高回転領域と低回転領域のつながり方も問題だ。
ガクンッと段が付いてしまってはいけないし、
あまりにも平板でもダメ。

そして、インテークとエキゾースト側で動きに差があるのだ。
バルブタイミングが変わってしまうということは、
ノーマルでは大丈夫であっても、ハイコンプ仕様となると、
バルブとピストンのスティック(接触)が心配になる。通常のエンジンなら、
バルブリフトとバルタイ、ピストンの頭部形状の組み合わせで
チェックすることができるのだが、バルタイ自体が
変化するのだから……この問題は、パワーFCを使い、
ある程度の余裕を持ってセットアップすることで、
現在はエンジンは正常に回っている。

まさに、手探りのセットアップということができるだろう。

インジェクターは、燃圧を3.9kg/cm2かけて、開弁率89%となる。
ソレノイドバルブは、ノーマルを使って油圧制御をしながら、
5000回転以上の領域では25度(アイドリングでは42度くらいに
設定される)に持っていくようにセットする。

この結果、中間域では、VVT-iと2.2♀への排気量アップの成果で、
トルクフルな乗り味が楽しめるのに、高回転領域では性能重視の
バルブタイミングを選択することができ、ギュイ〜ンっと吹き上がってくれる。

21世紀の先取りチューンバージョンとして、ホンダVTEC同様、
トヨタVVT-iをどう制御するか?がチューナーとしての課題でもある。
いやあ難しいが面白い!!(藤本愼一)


ガラージュモリアルテッツァ■TUNE DATA
3S-G改2.2L戸田87φピストン
3S-GTコンロッド&5Sクランク
戸田0.5oヘッドガスケット
TRD280度カム×2&バルブS/P
IN&EX共VVT-i制御
TRD4連スロットルキット
パワーFCガラージュモリSET UP

 

信号待ちのときに、NAチューンされたエンジンの排気音が響いている。
だけど、あたりを見渡してもどこにもそれらしいクルマはいない。

だが、青信号になったとたんに、隣にいたローレルが、
異様な発進加速を見せつけながら……で、でも、
あのローレルってコーナーポールが付いていて、
ちらっと見ただけだがレースのシートカバーが被されていて、
おまけに後ろの座席には子供がふたりチャイルドシートに座ってた……はず。

その昔、CB編集部では、とっつあんセダンのカローラに
2T-G改2♀フルチューンエンジンを搭載した
「ダサカロ」というモデルを造ったことがある。
このときも、リヤウンドウにはレースのカーテンを付けようと真剣に策を練った。

もちろん、街中では完全に埋もれている外観だった。
でも、フルチューンNAならではの排気音は確かにあたりに
響き渡っている。信号が青に変わったとき、
急激に加速するダサカロの運転席から、
隣のクルマのドライバーの表情の変化を覗き見るのは、ある種快感だった。

来栖さん(いや、来栖一家といったほうが正確かも?)は、
自分のお父さんから譲り受けたローレルにRB30ブロックを
使ったNAチューンエンジンを搭載したいと思いついてから、
関西の様々なショップを訪ね歩いた。だが、どのお店でも
「別にRB30ブロックにこだわらなくてもRB26でいいんじゃないの?」

ま、一般的にはそうだろう。RB26移植なら、
それほど手間はかからないし、加工も最小限ですむ。
だけど、この400cc程度の差が、来栖さんにとっては大きかったのだ。

L型エンジンに換算すれば、RB26をNAで搭載するのは
L26ブロック流用。対してRB30ブロックならL28改の3L仕様である。

この差は大きい。ターボを使うならまだしも、
NAでモノを言うのは基本的な排気量なのだ。

だが、どのお店も心よくは引き受けてくれない。
大阪、京都、兵庫、滋賀……来栖さんのお店巡りが続いたが、
どこもふたつ返事で引き受けるとは言ってくれない。

そんなとき、たまたまCBを読んだ。
奈良のガラージュモリというお店の記事が出ていた。

そのときは3S-G改のNAチューン、
しかもバルブタイミングを独自にバリアブル
コントロールするという、
どこのお店もやっていないチューンにチャレンジしていた。

「ここなら……」秘かに期するところがあった来栖さんが、
ガラージュモリの松本さんに出会って開口一番、
これまで言い慣れたセリフを言った。

「このクルマにRB30ブロックを使った
NAチューンエンジンを載せたいんですけど……」

「いいですよ」

「…………エッ??」

あっけなかった。あわててお店から出て奥さんに電話をかけた。

「ここでやってくれるって言うんだけど、ええかな?」
「ええんとちゃう?」これで決定である。

 最初はどんぶり勘定でチューンを引き受けた
ガラージュモリの松本さんだが、作業を進めていくうちに、
最初の予算150万円では、全く合わないことが判明した。
だが、予算を上げてくれとは言いにくく、
近所のお店や知り合いを辿りながら、中古パーツを多用して完成させた。

「いやあ、本当ならもっときついカムも入れたかったんですが、
動弁系にお金がかけられないので東名さんの
ポン付けカムを使いました。奥さんも乗られる
ということだったので、扱いやすくてトルクフルな仕様を目標に作りました」

OS技研のツインプレートも、RB26用のラジエターも
中古パーツをリフレッシュして組み合わせた。
奥さんはこのクルマに乗るときは靴を履き変えて
(踵のないタイプ)ツインプレートを踏んでいるという。

出かけるときはいつも家族4人。

たまたま今回の撮影時には他の3人が風邪を
引いてしまったようだが、後ろの座席では、
子供さんがチャイルドシートに座って、
近くを通っているロールケージに捕まって

……いやあ、強烈な一家がいます。

近日中にレースのカバーは新調予定!?2
CB注目POINT!

■今回のチューニングの最大のポイントは、
なんといってもRB30ブロック。以前は数が
まとまらなければ手に入らなかったり、
中古品を使用したりと苦労していたのだが、
最近では注文すれば新品が手に入りやすくなっているという。
このブロック(ショートブロックで購入したのでクランク、
コンロッド等も含まれている)をベースにNAチューンを
施すわけだが、組み合わせるピストンをいろいろと探した結果、
最終的にRB25DET用のピストン(写真下右)。
ただし、リセスの加工が必要なので、
ガラージュモリでIN&EX共にリセスを切り直した。
バルブとのクリアランスはIN1.5o/EX3.4o。
ピストントップ位置を合わせるためにコンロッドの
中心間距離を1o延長してある。
そして、ヘッドはRB26DETTを面研1.7o。
ポート&燃焼室も加工されている。
東名パワード製の260度ポン付けカムは、
バルタイ設定がIN106/EX107度でとられている。

来栖ローレル諸元

RB30ショートブロック改
RB25ピストンリセス追加加工
コンロッド1?オフセット
RB26DETTヘッド面研1.7?
東名260度カム×2 
アペックススライドプーリー
N1オイル&ウオーターポンプ中古
フジツボRB25DET用EXマニ改
アペックスパワーFC DJ仕様

キャプ1 
▲このマシンを見て、まず度肝を抜かれるのが
レースのシートカバー(?)。
そして、そいつが室内に張り巡らされた
ロールケージとの組み合わせは??

キャプ2 
▲もともとはRB20DETが搭載されていた
エンジンルームだが、ここに3000ccの排気量を
持つNAエンジンが搭載された。昔のL28改3♀と同じ感覚。

キャプ3 
▲コーナーポールは、室内のレースのカバーと
セットで自己主張をしてくれ(?)る。
お父さんから譲り受けたときのままの状態で毎日走っている。

キャプ4 
▲吸気まわりのパーツはほとんどRB26DETT用を
流用している。RB26DETTエンジンを
見慣れているもんだからついつい見逃してしまう?

キャプ5 
▲RB26DETT用のNAマニは市販されていないので、
フジツボ製のRB25DET用のフランジを作り直して
RB26DETTヘッドにドッキングする。

キャプ6 
▲インジェクターはRB26DETT用の444ccを6本使用する。
現在のところ、6000回転で55%程度を消費しているというからまだまだ余裕あり。

キャプ7 
▲燃料&点火コントロールはアペックスのパワーFCの
Dジェトロ仕様。ガラージュモリはアペックスの
ディーラーでもある。A/Rは12.5程度。




☆2017.12.11マツモトエンジン での話

Flash Playerが入っていないブラウザー&Android端末の場合は動画を見ることができませんので、
上のYoutubeボタンを クリックして見ていただけますよう、お願い致します。
 


マツモトエンジン

〒632-0067 奈良県天理市吉田町
Tel:0743-62-2303


 

 


↑できるだけ、いろんな方に見ていただきたいので、
よろしかったら、お願いします。


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