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RB26DETTブロック蘇生術を追求中

ダイヤモンドエンジニアリング (埼玉)

もうずいぶん昔に、取材をしたことのある
ダイヤモンドエンジニアリングさんだが、
そのころとは、なにもかもが変貌していた。
新生ダイヤモンドエンジニアリングでは、
画期的な内燃機加工方法が生み出されていた!

現在、ダイヤモンドエンジニアリングさんでは、
エンジンの内燃機加工全般を請け負っている。


以前(もう15年ほど前になるだろうか)取材したときは、
アメリカから最新の機材を導入して、それまでの加工とは
異なった方法論で、作業をしている模様を紹介した。

そのときに、紹介の労を取っていただいたのは、
当時、東名パワードさんに所属していた渡辺さんだった。
SR20DETの鍛造クランク製造や、独自のプロフィールを
持ったピストン製作、ポンカムの構想、ダミーヘッドボーリングの導入と、
様々な方法論で、新しいチューニングエンジンの方向性を示してくれた。

その後、東名パワードを退社された渡辺さんは、
モンスターインターナショナル(現在のタジマモーターコーポレーション)に
移籍され、その後、なかなか連絡を取ることもなく、現在に至っていた。

しかしながら、ひょんなことから、もうひとり当時から付き合いのあった
浅井さん(タジマモーターコーポレーション)とFacebookで連絡を、
取ることがあり、その縁で、今回の取材が実現した。

ひょんなことというのは、藤本がYOUTUBEで、
キャンピングカーのことを見ていたときに、

「へえ〜、この会社は、他とは違って、しっかりとした仕事を
するな〜。レベルが違うな……」なんぞと、感心しながら見ていたのですが、
その製作会社がタジマモーターコーポレーション……ンッ?
なんだか、聞いたことのある社名だけど……あ、モンスターさんかぁ。

ということでありました。

 

タジマモーターコーポレーションさんが、その事業の一環として、
キャンピングカーの製作をやっていて、いまでは、ダイヤモンドエンジニアリングさんも
タジマモーターコーポレーションさんの一部である……そして、その担当は、
渡辺さんであると聞いて、取材をお願いした。

渡辺さんは、HKSにも勤務されていたことがあり、
エンジン開発にずっと関わってきたスペシャリストであるのだが、
タジマモーターコーポレーションさんでは、代表の田嶋さんのマシンを始めとして、
競技関連の車両の製作を、ずっと続けてこられたと聞きました。

そんななかで、生粋のエンジン屋さんである渡辺さんが、サスペンションや
シャシー、制御系と、クルマの殆どのジャンルを監督しながら、
独自の路線を歩み続けてきたことを、15年以上のブランクを埋めながらお聞きした。

ということで、今回は、ダイヤモンドエンジニアリングで行われている


注目の作業や、開発中のプロジェクトを含めながら、紹介したいと思う。

上の写真は、工場内に置かれていたもので、
たぶん、ローバーとかのエンジンじゃないか?と思うのだが、
確かではありません。しかしながら、注目していただきたいのは、
ブロック内壁がごっそりとえぐられていて、
ブロック上面は、気筒間が削り取られております。

あまり、こういう状態のブロックを見たことがないと思いますが、
これは、スリーブを挿入する前の状態です。

CARBOYでは、10年以上前に、大阪の柿本レーシングさんと協同で、
「RBハイブロックプロジェクト」という企画を立ち上げたことがあります。
コンロッドの中心間距離が短いという性格を持ったRBエンジンで、
ストロークを稼ごうとすると、どうしてもただでさえ短い中心間距離が、
もっと短くなってしまう。その対応策として、シリンダー上面に、
デッキプレートを増設して、中心間距離を稼ごうという作戦だった。
そして、このとき同時に進行したのは、ボアアップによる排気量アップ。

通常のRB26DETT(RB25DETやRB20DEでもいいのですが)の、
ボアアップの限界を超えた口径を実現するために、ブロック内壁を
ごっそりと削り取って、そこにフローティングスリーブを設置。

このスリーブの固定は、前述のアッパーデッキプレートに、
つばをつけて行なう。こうすることで、従来のRBエンジンの
ボアアップ限界を超えることができ、
RB26DETTのみならず、RB25DETやRB20DEをベースにして、
3000ccという排気量を実現することが可能になる……。

「RBハイブロックプロジェクト」というのは、そういう企画だった。

で、ダイヤモンドさんの方に話を戻そう。

渡辺さんと話をしているときに、RB26DETTの
シリンダーブロックの耐久性の話になった。

「供給される新品ブロックが入手しにくいということもありますし、
使用しているブロックを再利用しようと思っても、内壁にクラックが
あったり、様々な問題があるんですよね。将来的に、GT-Rを
乗り続けていくために、シリンダーブロックをなんとかしなければ……」

シリンダーヘッドはなんとかなる。他のパーツも、アフターパーツが、
ゴマンとある。しかしながら、シリンダーブロックというやつは、
アルミのビレットブロックを作るという手もあるけれど、
一般的なユーザーが手に入れることができる価格帯で、
状態のいいもの、あるいは将来10年以上使用できるもの、
これを供給することは、なかなかに難しい問題なのだ。

で、ここで必殺技が登場いたします。

「基本的には、補修用ということで、RBのシリンダーを
大幅にボーリングして、そこにスリーブをセットするんですが、
その材質、寸法というものは、従来でしたら限られたものだったんですが、
ダイヤモンドでは、薄肉で耐久性のあるものを供給することができます。
ですから、クラックの入ったシリンダーブロックの内壁を削って、
そこにしっかりとした材質のスリーブを使用することで、
口径も自由に設定できますし、固定方法も、いろいろな方式を
テストしてきましたので、耐久性の面でも安心できるものを作りました。
近いうちに、RB26DETT用として、発表できると思います」

です。

後述しますが、渡辺さんは、一般的な加工方法や、使用する材質に、
留まることなく、よりよいもの、性能的に優れているものを、
様々な方面で追求してきたひとであります。

今回のRB26DETT用の補修スリーブに関しても、
従来ならトラックの補修スリーブ的なものの範疇を飛び越して、
性能と、寸法、耐久性を兼ね備えたものをテストしてきているはず。

 

☆ダイヤモンドエンジニアリング その1 RB26DETTブロック蘇生術


動画が見れない場合は、上のYoutubeを クリックしてくださいませ。

シリンダーブロックにスリーブを設置するためには、
いくつか解決しなければいけない問題点が存在する。

上部の固定方法をどうするか?
ガスケットの形状や面圧の確保をどのようにするか?
スリーブ下部の固定方法をどのようにするか?
スリーブ肉厚はどの程度のものを使用するか?

などなど、でありますが、スリーブ自体の材質から
取り組むことで、問題解決と可能性増大の双方からアプローチを
することができるようになります。

期待度、大っ!であります。

 

 

 

RB26DETTのブロック蘇生術の件は、
今後展開があれば、ご報告したいと思っておりますが、
今回紹介したいと思った事項が、もうひとつ(ほんとはもっと)あります。

ダイヤモンドさんでは、「内燃機加工」の一般作業を行っていると、
言いましたが、工場内を撮影している途中で、イロイロなものを見せていただきました。

上の写真にあるように、各種エンジンのダミーヘッドや、ホーニングマシン、
シートカッター等、以前のダイヤモンドさん時代から受け継がれているものは、
当然でありますが、ポルシェヘッドを連結する方式(プロモデットの小峰さんも
こういうやり方をしてましたね)、整然とした配列がなされていました。

で、ふと気になったのが、ホーニングマシンの『砥石』でありました。

一般的には、ホーニングマシンの砥石は、接着剤を使って固定していることが
多いのですが、これは、ボルトでセットできるようになっています。

「?????」

そうです。付け替えが簡単なんです。
簡単ということは……その砥石の一番いいところを使って、
ホーニングをかけることができますし、砥石を交換して、
そのエンジン仕様に応じたホーニングをすることも可能になるのでは?

 

 

 

疑問を感じたら、率直に教えてもらう。
こいつが、藤本なりの取材方法であります。
こうやって30数年取材を続けてきました。
「???」と思ったことを、バカにされようが、
物知らずと思われようが、しっかりと聞く。
おっと、座右の銘みたいになっちまいましたね(笑)

「そうです。使用用途に応じた砥石を使い分けています。
シリンダー内壁の仕上げというのは、非常に重要なポイントなんです。
ただ磨き上げるとか、ハッチ目を残すといった問題だけではなくて、
そのピストンのプロフィールとのマッチングということが、
最終的なエンジンの性能につながるんです」

 

渡辺さんは、ピストンの設計をずっと続けてきたわけだが、
そのなかでも、最重要的にこだわるのが、

『ピストンプロフィール』

ピストンには、最大口径やピンハイト寸法、ピン径、
スカート形状といった、様々な寸法がありますが、
『ピストンプロフィール』というのは、口径や
上下の寸法等、シリンダー内壁と接する(一番接するのは
ピストンリングではありますが……)部分の形状。

シリンダーブロック側にしても、ヘッドボルトを締め付けることによる
変形や、上下の寸法差と言ったものが存在するし、
それに対応するピストン側にも、種々の寸法が存在することになる。

その『ピストンプロフィール』にこだわる渡辺さんが、
いろいろな種類の砥石を試しながら、適したもの、不敵なものが
ある……という見解に達したわけだ。

ここに、今回ダイヤモンドさんを紹介したいと思った最大のポイントがある。

 

 

 


おっと、ここで、一般常識問題に立ち戻った話をいたしましょう。

『内燃機加工屋』さんというのは、どういう存在であるのか?
ということであります。

エンジンをモディファイする場合、チューナーという存在があります。
こんなエンジンにしたい、こういうふうな加工を施したい。
そういった要望を、『内燃機加工屋』に伝えて、できるだけ自分の
思い通りの加工をしてくれるように、『依頼』するわけです。

一方、『内燃機加工屋』さんは、経験値とノウハウを持って、
チューナーさんの意向を汲んで、最適な加工をすべく、方法を模索したり、
アドバイスを出しながら、要求された加工を実際に施工します。

ポイントとなるのは、チューナーさんの考える加工の範囲と、
『内燃機加工屋』さんができる加工の範囲というものは、
バッチリと符合していればいいのですが、そうでない場合は、
お互いの考える加工の範囲や精度、仕上げ方法というものが
異なってくることになります。

それを決定するのは、大きな部分での加工設備であり、
刃物の能力であり、マシニングのプログラムと言った現実的な装備です。

言いたいことがわかっていただけるでしょうか?

ダイヤモンドエンジニアリングでは、『エンジン屋』である渡辺さんが
責任者であり、『内燃機加工屋』の装備を決定することができるわけです。
だから、エンジン加工に必要な機械、プログラム、使用する砥石等が、
『エンジン屋』さんが要求するレベルで使うことができるということになります。

一見、複雑怪奇な論理の言葉遊びをしているように思われますが、
現実は非常に単純です。

『エンジン屋』さんの理想の加工をすることが可能になるわけです。

もちろん、実際問題として、『エンジン屋』が妥協したり、商売を優先したり、
効率を重要視していけば、話は振り出しに戻りますが、渡辺さんというヒトは、
そういうことができないから、あえてタジマモーターコーポレーション内に、
ダイヤモンドエンジニアリングという内燃機加工部署を抱合したんでしょう。

もっと昔に遡れば、当時加工を依頼していたダイヤモンドエンジニアリングに、
おせっかいにも最新式の機械を紹介し、温度管理を徹底するよう指示して、
ダミーヘッドボーリングを常識化させていったというのも、
自分が考える加工というもののレベルを、できるだけ向上させたかったからだろうし、
それが、自社内にあるということは、もっともっと強権発動(?)させることができる。

ま、そんなことが、藤本の頭のなかをグルグルとかけまわっておりました(笑)

「ピストンのプロフィールと、シリンダー内壁の仕上げがマッチすれば、
同じパーツを組み付けたエンジンなのに、数十馬力の差が出ます。
これは、競技用のエンジンを作りながら、様々なテストをした結果、
本当にそういうことがあるんだということを実感しました。
ですから、砥石の選択から始まって、適合性のテストを、いろいろとやりました」

 

☆ダイヤモンドエンジニアリング その2 PISTONプロフィールについて


動画が見れない場合は、上のYoutubeを クリックしてくださいませ。

上の動画も、あわせて見ていただければわかっていただけると思いますが、
これまでの概念とは異なった内燃機加工が、ここで展開されていますね〜。

冒頭で紹介したようなRB26DETTのシリンダーブロックの蘇生術、
そして、独特の装備で実現する内燃機加工術、
……まだまだ、ありそうです。

とりあえず、今回の紹介は、このあたりにしておくこととしまう。

次回は……どうなるんでしょ(笑)




ダイヤモンドエンジニアリング
〒341-0037埼玉県三郷市高洲2丁目251-2
TEL 048-948-0080
http://www.diamond-eng.jp

タジマモーターコーポレーション
静岡磐田R&Dセンター
〒438-0213 静岡県磐田市竜洋稗原665

 

 


↑できるだけ、いろんな方に見ていただきたいので、
よろしかったら、お願いします。


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