同調性能にこだわった独立式スロットル

MotorLab(東京)



38kgの無垢材から6kgの
完成品を削り出す……
無駄が無駄を超えて機能と
機能美を創り出す!!

……すみません、執筆途中です。10月中旬に再UPします(笑)

……と書いたのですが、いつのまにか11月に突入してしまいました。

ちょっと遅れましたが、原稿書き上げました。

 

先日、ラウヴェルトの中井くんとRISINGの伊藤くんと
新しいポルシェの構想を練る……という企画を立ち上げたわけだが、
そのときの大きなポイントになるのが、独立式のスロットルボディ。

これを作り上げたのが、今日紹介するMotor Labの川畑さん。

あのときは、いろんな話があったので、スロットルボディの
ことについて言及できなかったが、ずっと気になっていたので、
川畑さんの工房を訪ねてみた。

以前、RISINGさんで、L型用のインジェクション仕様
独立式スロットルを見て、その作りの精緻さにびっくりしたわけだが、
そのシステムも、伊藤さんと川畑さんが協力しながら作り上げたもの。

正確に言うなら、以前はテーパー形状のパイプとフランジ部分を
溶接によってドッキングさせていたのだが、今回作ったのは、
アルミの無垢材から削り出したもの。

37、8kgのアルミインゴットから、6、7kgの完成品を
削り出してしまうというのだから、贅沢といえば贅沢、
無駄といえば、これほど無駄なものはない。

しかしながら、無駄というものを、思いっきり消費しないことには、
他とは格段に異なるモノを生み出すことはできない。

ま、これは、いろんなモノに通じる鉄則でもある。

で、完成品は、L型用もポルシェ用も見たわけだが、
どこで、どんな風に作っているのか?
そのあたりは、どうしても知りたい部分でありますね〜。

東京八王子郊外にある、川畑さんの工房『Motor Lab』に、
一足踏み入れて……びっくりした。

NCマシニングセンターが存在するのは予想していたが、
それが1台だけ。他には一般的な機械があるだけで、
NCマシニングと言っても、刃物が上下方向に、
台が前後左右に動くという、非常に基本的なタイプ。

もう何年前になるだろう。アメリカのPRIで展示されていた
4次元のマシニングは、BMWの6気筒4バルブヘッドのポート研磨を
信じられないほどの動きを見せながら稼働していた。
すぐに、こういうものが当たり前になるんだろうな〜と、
感心しながら、未来のチューニング加工というものに、
想いを馳せたわけだが、現実は想像以上に急加速的に進行していった。

いまや、アメリカではポート研磨はマシニングで
行なうことが半常識化している。

川畑さんも、L型のポート研磨を、プログラミングしてマシニング加工で
行なうという作業を実行している。

だが、この設備で、そんなことができるとは思えない。

「マシニングによるポート研磨は、別の工場に出しています。
雛形というか、プログラミングをするまでは、ここでやってます。」

というところで、下の写真を見ていただきたい。

というところで、下の写真を見ていただきたい。

アルミの板が、斜めにセットされていることにお気づきだろうか?
刃物は、垂直に動き、台は前後左右に動くと言ったが、
部材を斜めにセットすることによって、もうひとつの『次元』が生まれる。



工房のいろんなところに、削りかけの部材、

テスト的に削った部材が散乱している……。

 

 

んなふうな冶具をセットすれば、
どのように削れるのか?
刃物の種類と、当たる角度、そして、その冶具を
どのように動かせば、頭のなかで思い描いている
ラインを削り出すことができるのか?

難解なパズルを解くようなやり方で、
いま、ここにある機材を使って、可能な限り使い倒す。

豪華な設備があって、それを駆使して、様々な加工を可能にする。

そういうやり方もあるだろう。
それはそれで、凄いと思うし、可能性の高さにも脱帽する。

しかしながら、旋盤ひとつで、信じられない加工を仕上げてしまう。
そんな職人も存在する。

金属を『掴んで』、『回転』させて、刃物で『削る』。
この3種類の動作を、様々な工程を考え、組み合わせることで、
ただたんに旋盤という機械を使って、信じられない完成品を創り出す。

日本の技術力というのは、そういうところにも存在していたわけだ。

そして、川畑さんがやっていることは、旋盤をNCマシニングに持ち替えて、
非常にアナログな思考を、単調な動作を組み合わせ、冶具を応用して、
複雑な工程と精密な製品を生み出す……ということになる。

人間というものは、面白いもので、ただただ単純にひとつのことを
やっているだけでは、フラストレーションが溜まってしまうので、
なんとか、効率化できないか?とか、もう少し面粗度を上げられないか?
あるいは、もう一歩踏み込んで、ヒトがやっていない、やれないと
決めつけていることに挑戦しようという気持ちが、ふつふつと、
湧き上がってくる生き物なのだ。

 

 

 


以前、Motor LabのHP(現在はリニューアル中)を見たとき、
なんとなくではあるのだが、川畑さんが考えていること、
やりたいと思っていることが、伝わってきた。

川畑さんは30代なかば。高齢化の進む(笑)チューニング業界では、
非常に若手である。最初あったときに、

「はじめまして、藤本です」
と挨拶したら、

「藤本さん、始めてじゃないですよ。TuningPOWERS!のときに、
ナプレックさんのブースに、ボクずっと詰めてましたから(笑)」
と言われて赤面した。

以前紹介したナプレックで、名古屋さんのもとで、修行……というか、
給料泥棒、いや、勤め人として勤務していた川畑さん。

数年前に独立して、Motor Labを立ち上げ、
自分が考えるエンジン部品製作や内燃機の加工を、
いろいろと模索しているときに、RISINGの伊藤さんと
接触し(工場が非常に近い)、L型のテーパードインマニ、
そして独自のスロットルボディを組み合わせることとなった。

おっと、そろそろJDDAのWESTに出発しないといけない時間なので、
続きは、帰ってきてから……10月中旬です。
WESTから取材、そして岸和田祭り(山手編)と、行事が盛り沢山なので……。

おっと、今週末9月30日に開催されるWESTで、
川畑さんのスロットルシステムを展示して貰う予定なので、
実物を見たいヒトは、18番ピットにおこしくださいませ(笑)

続きは、次回……。






と書いていて、なかなか続きをかけないでいた藤本でありますが、
ようやく、手を付けることに(笑)

 

JDDAのピットに展示されたスロットルシステムは、
非常に沢山の方々の興味の対象となりました。
みなさんが共通して感じていたのは、
「すごい精巧に動く」ということと、
「このスロットルがどのように作られたのかが謎」といったことでした。



まずは、みんなが不思議がったスロットルの紹介から……。

下の写真を見ていただければわかるように、
このスロットルボディには、「バタフライ」が存在しない。
「スライドバルブ」でもない。


スロットルボディの側面が、なんともいえない動きでもって、
全閉から全開まで変化していくのだ。

これは、トヨタのF1マシンに採用されている
スロットルボディを参考にして、川畑さんが創り出したもの。

まだ試作段階ではあるものの、
このスロットル内壁の動きときたら……もう大変です(笑)

なんど見ても、どのように動くのか? どうやって加工したのか?
このあたりの見当がつかない。ま、素人目ですが。



 

 

冒頭でも述べたように、川畑さんの工房には、
ごくごく一般的な加工機械しか存在しない。
L型の燃焼室&ポート研磨をNCプログラムで実行するために、


この工房内で、ヘッドの向きを「ああでもない」
「こうでもない」と試行錯誤しながら作り上げた手法と、
同じ工程をたどりながら、作り出されたのが、
このスロットルシステムであります。

そして、RISINGの伊藤さんのところのL型に
装備されている独立式のスロットルボディは、
その真価を着々と発揮しつつあります。

下の写真を見ていただければわかるように、
スロットルボディの軸受けの部分の構成、
リンケージのセットの具合等のおかげで、
バタフライのみがスロットルボディ内で作動するという
方式が可能になっている。

つまり、シャフトがスロットルボディ内に存在しないので、
全開時にはバタフライの厚みのみが残るという次第だ。


このスロットルボディには、上記のような特徴の他、
様々な工夫が盛り込まれている。

なかでも、時間をかけて練り上げられたのは、
リンケージ類のセットアップだろう。

6気筒エンジンの場合、スロットルボディは3基必要となる。
それぞれのボディ内のバタフライが同期することは当然だが、
3基あるボディ内部のバタフライの動きが同期するためには、
それぞれのスロットルボディを連結するリンケージが、
大きなポイントになってくる。

各ボディのバタフライの両端にあるシャフト同士を連結し、
アクセルペダルの動きによって、確実に同じような動きを
させるためには、リンケージの機能的な構成と剛性が必要になってくる。

それぞれに配した削り出しのパーツと、それをロックするボルトの選択。
セッティングが完了するまでは、フリーに動かすことができながらも、
いったんセッティングが終わればずれることがない……この、一見当たり前の
ことが、非常に難しいわけだ。

リンケージというものは、可動するものであります。
だから、その構造によっては、使っているうちにクリアランスが生じたり、
少しばかり作動に無理があれば、経年変化でガタや緩みが発生する。

 

この結果、どういうことが起こるか?というと、
エンジンに熱が入ったり、冷めたりすることで、
微妙に各スロットルボディ間の同期が乱れるわけだ。

キャブレターのリンケージを見てもらえばわかるように、
リンケージにはボールジョイントが使われているが、
これが経年変化の結果、ガタが出てくる。
それに応じた燃料を吸い上げる機構なので、
ある程度は、アバウトであっても、同調は取れる。

 

しかしながら、インジェクション制御の場合、
各インジェクターの噴射量は、デジタルデータによって
決定されている。6気筒の燃焼室が、同じ量の燃料を
噴射されながら、吸入空気量が異なったら……というわけです。

 

 


リンケージ部分を、ためつすがめつしながら、ひっくり返したり、
各部を詳細にチェックしたりしてみると、川畑さんの作り上げた
リンケージが、非常に精密に、そしてボルト類によって確実に
ロックされていることが伝わってくる。

微細な調整も、簡単に行えるように考えられている。

たぶん、ここまで来るまでには、相当の時間を費やしただろう。
そう想像させるような、シンプルかつ効率的な部品と、
材質の選択が、現在のスロットルボディを成り立たせている。

下のエンジンルームは、RISIGで製作されている
S30Zのものである。現在の仕様とは、カムカバーの
塗装が異なっているが、このスロットルシステムを、
フィッティングさせた状態が、よくわかっていただけると思う。




話をポルシェ用のスロットルボディに移行しよう。

L型直列6気筒用のスロットルボディは、テーパー上の
マニホールドと組み合わされて、非常に迫力のある外観と、
精緻なメカニズムが、ヘッドにドッキングされたときに、
相乗効果的に作用して、非常にいい感じに仕上がっている。

 

しかしながら、ポルシェのエンジンは、みなさんもご存知のように、
あの『フラット6』であります。大きなピストンを組んでいることと、
左右に3気筒ずつ分岐された構造、コンロッド&ピストンが、
それぞれにズレながら配置されるために、
一気筒あたり独立したスロットルボディ形状となり、
それぞれを連結するリンケージと、燃料のデリバリーが
6個のスロットルボディが必要になってくる。

現在、ラウヴェルトの中井くんと、RISINGの伊藤くん、
そして、今回紹介している川畑さんのチームで、
新しいポルシェチューンを模索している最中であります。

今回取材を行なっている最中に、藤本がふと思いついたことが……。


リンケージの連結に使われている部品には、オレンジっぽいアルマイト処理が
施されていたのだが、ふと考えると、ポルシェのエンジンルームというのは、
ファンの方には申し訳ないが、非常に殺風景というか、機能美が入り込むスキがない
というか、ワーゲンがスタート地点だからというか……。

ま、とにかく、ヘッドもなにもかもが左右に泣き別れしている状態なので、
エンジン上部には、無骨なファンやシュラウドといった殺風景な部品が配されている。

ここに精密なスロットルボディをセットすれば、それはそれなりのものにはなるんだが、
美的な要素が欲しいところ……というのが、前回の会合の骨子だった。

で、ふと考えてみると、なにも、シルバーや削り出しや、
メカニズムそのものの美観ばかりが
かっこよさの素ではないんじゃないか?

安っぽいイタ車に見られるような、非常に安っぽい樹脂製の内装材なんかは、
下手に豪華に見せようとしている国産車の樹脂内装なんかよりも、
潔さというか、安いものは安くていいんだっ!という主義が感じられる。
そういうことから考えると、ポルシェのエンジン上部に配された、
樹脂製のシュラウドを始めとする、純正部品と『調和』をさせてみたら、
一体全体どういうことになるんだろう?

そんなことを、川畑さんと話した。

 

具体的な方法として考えられるのは、リンケージ類や、
デリバリーパイプ等を、ブラックアルマイト(しかもマット気味な)に
してみたらどうなんだろう?ということだった。

実際に、エンジンルームに配置してみないとなんともいえないところだが、
エンジンルーム内に、地味な樹脂やマットブラック的な要素があるなかに、
削りだしのスロットルボディが6本、すっくと立ち上がっていたら……。

ま、ま、これは、まだまな脳内妄想的な段階でありますが、

機械的に、機能的に、非常にピュアに追求されているスロットルボディだけに、
妄想はドンドンと膨れ上がってくるというもんです。
ま、人間というのは、欲望に限りがなく、貪欲な生物であり、
ないものねだりや欲しがりません勝つまでは……あ、コレは違うか(笑)



MotorLabのスロットルボディ

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……いかがでしたでしょうか?

シンプルな工房から生み出される複雑な工程と
アナログな試行錯誤の結果生み出された
非常に精緻なスロットルボディ。

今後、まだまだ発展していくように思います。



MotorLab

〒193-0822 東京都八王子市弐分町489-1

 




 

 


↑できるだけ、いろんな方に見ていただきたいので、
よろしかったら、お願いします。


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