「夢見る、不良少年」という特集
1990年頃

どうしてだか、1990年台のCARBOYには
『不良』というキーワードが頻出する。
どこかに憧れが……あるんだろう。


夢見る不良少年

えらく直球勝負のタイトルであります。
でも、下の、フィルムの切り欠き部分には、
「清く、正しく、美しく……素敵な不良生活のススメ」と
言い訳のような但し書きが添えられております。

いまでは、不良少年どころか、不良青年も不良熟年も飛び越して、
しまっている藤本ではありますが、いまでも、夢見る気持ちには、
それほど変わりがないのが、笑えます。

以前、どこかで書いたかもしれないが、
大藪春彦さんの短編小説のなかに、
ホンダN360のエンジンチューンをする少年が登場する。

アルバイト的な生活をしながら、空冷2気筒エンジンをバラシ、
自分で組み立てながら、ツインキャブにして、火を入れ、
深夜のテストドライブに出かけるというようなストーリーだったのだが、
実を言うと、それほど正確には記憶しておりません。

だけど、その文章のなかから伝わってくるイメージというのは、
少年時代の藤本には強烈な印象を与えてくれた。

CARBOYという雑誌を作っていくうえで、
このときのイメージが、ずっとベースラインとなっている。


汚れた英雄に出てくる主人公が、バイクのエンジンに
自分で手を入れ、性能をアップしていくシーンが、
随所に登場するが、そいつも藤本のなかでオーバーラップしている。

つまり、自分の手でエンジンをばらして、そいつに加工を施して、
再びエンジンルームにセットアップする。当然のことながら、
元のエンジンと比較すれば、性能は向上している。

CARBOYに、アルバイトとして務め始めて、
一番嫌だったのは『修理』だった。
壊れたものを、元に戻すという作業は、
どうにも非生産的で(いまは、そうは思わないが)、
面白みに欠けるように、当時の藤本には思えて仕方がなかった。

で、自分勝手にチューニング方向を向いて行くことになるのだが、
そのときのイメージというか、原点が、冒頭のイメージだった。

 

そして、そのイメージをドンドンと拡散させ続けていった結果、
自分なりの『美学』とでもいうべきものを、少しずつ構築していくことになる。

カッコイイということは、どういうことなんだろう?
かっこ悪いということは、どんなことを指すのだろう?

そういう気持ちが、「ベイブリッジには止まらない」という
タイトルを、ついつい付けてしまう結果となる。

フェラーリやポルシェを、キャッシュでポンポン購入できるような
環境にあったら、少しばかり異なっていたのかもしれない。
当然のことながら、その環境のなかで、どういうことが、
カッコイイということなのか?ということを、考え続けたとは思うが(笑)

以前、キャンプ用のクルマとして、W124のベンツを購入したことがある。
バンは嫌だった。セダンのトランクルームに、機能的なキャンプ用品を、
こっそりと積み込むことに、そのときは精力を注いだ。

で、300Eだったのが不満で、500Eを購入しようと思った。

知り合いに頼んだり、いろいろと手配をかけていたのだが、
なかなか思うようなタマがなかった。

そして、いろいろと考えているうちに、ふと気がついた。

ああいう種類のクルマというのは、しっかりとお金を持っていて、
キチンと遣うことができるヒト用なんじゃないだろうか?

あそこに短パンで乗るとしたら、清水の舞台から飛び降りるつもりで
買ったエルメスの短パンではなく……なんで、短パンなのかは、いまでは不明(笑)
色違いの短パンを数本同時に買ってしまう人種のためのクルマなんじゃないか?

そんなことを思って、結局500Eも、E500も、購入をやめた。

偉そうにいうなら、自分なりの美学というか、
カッコよさ追求であります。

岸和田生まれの、だんじり育ちの人間が、
東京に出てきて、少しずついろんなものを手探りしながら、
自分なりの価値観や、美学らしきものを構築し始めて、
そいつをダイレクトにCARBOYという雑誌にぶつけてみた。

ま、そんなとこですかねぇ(笑)

おっと500Eと言えば、知り合いに、
新部さんというヒトがいて、500Eをベースに、
病気かと思えるほど、細部にこだわりを爆発させている。
彼のブログを見るたびに、ため息が出る。
人間のこだわりというのは、どこまでの範疇をいうのだろうか?
ここまで、やりますか〜? こんなことまで、こだわりますか〜?

念のために、新部さんのFacebookも紹介しておきます。



彼には、藤本が始めたTuningPOWERS!というショーのMCを
やってもらったり、いろんなことのアドバイスを戴いております。

おっと、話がそれました。

この『夢見る不良少年』という企画は、1990年に製作したものです。


つまり、27年前ということになります。藤本は、当時33歳。
イギリスのケータハムに、直接行って、スーパーセブンのキットカーを
買えないか?と交渉したものの、代理店との問題があって、
買えないとなったので、ムシャクシャして、イギリスで見つけた、
パイプフレームのコブラを買い付けて、国内に持ち込んで、
4ヶ月ほどかけて、新規車検を取った頃でもあります。


クルマというものに、『夢』を感じていた時代でした。
いまのヒトには、到底理解していただけないと思いますが、
ピストンを動かして、そいつに火をつけることで、
エンジンが躍動し始め、クラッチを繋げば、
自動車という名前の機械が、とんでもない加速を始める。

単純っていや、単純極まりありあせん。

でも、確実に、あの頃の少年たちは、クルマという存在に、
自分のなかのナニカを重ね合わせて、冴えない自分の
代理戦争を行なっていたように思われます。

そういうことは、スマホにもパソコンにもゲームにも、
……できはしなかったんです。

必死になって情報を集め、つたない噂を信じて、
自分の時間を浪費しながら、年齢を重ねていったんです。

幸せだったんだ、そう思います。

夢中になれることなら、他にもいろいろあると思います。
だけど、クルマという機械を介在させることによって、
ちっぽけな自分が、何者かになれるような錯覚に陥って、
100mを9秒どころか、50m走ったら、息が切れてしまうのに、
アクセルと、ステアリングを操作することによって、
信じられないような世界を体感することができる……。

あ、自分の世界に入ってしまいました(笑)

ま、テキトウに、読み流してやってくださいませ。

 




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