OS技研TC24DOHC4バルブHEAD創生期

1982年


岡山のDrem FACTORYが創り出した
DOHC4バルブ機構を持つTC24ヘッド
当時の雰囲気を感じ取っていただきたい!

 

DOHC4バルブのメカこそ、もっとも魅力的……という岡崎氏の
回答が、このTC24-B1直6DOHC24バルブエンジンだ。

4月30日(1982年)に発売されたこのエンジンは、日産のL28型
ブロックをベースに、ヘッドまわりを中心に、OS技研が作り上げた
魅力的ツインカムだ。

OS技研は、5年ほど前に、4気筒のL18をベースにDOHC16バルブエンジン
(TC16-A1型)を、約30基製作している。そのノウハウを注ぎ込んだのが、
この6気筒だ。

それだけに、この両ツインカムのメカニズムは酷似している。

開発はかなりスムーズに行われたようだ。というのは、4気筒を作り上げた
ノウハウと慣れがあるからだという。開発コストも4気筒に比べて、約3分の1だという。

このエンジンの諸元は、総排気量2870cc、ボアストローク87.8×79o、圧縮比11
最高出力325馬力/7400回転、最大トルク33.0kgm/9100回転、鋏角20°、20°の40°、
インテークバルブポート相対角35°、INバルブ径35.2φ、EXバルブ径30.5φ、
バルブ作用角298°、カム駆動はチェーン、キャブはウエーバー48〜50φというもの。

シリンダーヘッドはアルミ合金(AC4C)製。
このツインカムの特徴は、ロッカーアームを介して
バルブを開閉していることだ。

これは4気筒エンジンからのノウハウのひとつといえる。
この例には、ラッシュアジャスターを設けたトヨタの5M-GEUツインカムがあるが、
2輪の世界では、かなりこの方式(鈴木のGSXシリーズなど)が常識化されている。

この最大の利点は、シム調整がいらないことだ。
タペットを調整するのに、ネジでやればいいことになる。
ごく簡単だ。
当然、リフターよりもロッカーアームのほうが重いが、
実際に作動しているときの慣性質量は、ロッカーアムの
ほうが少ない、と言った点に目が向けられたようだ。

もうひとつ特徴的なのは、カムシャフトのジャーナル部を、一体型のホルダーで支持していることだ。
このホルダーが、シリンダーヘッドにボルト締めされる。

燃焼室は、INバルブ35.2φ、EXバルブ30.5φの4バルブを持つペントルーフ型。ポートや燃焼室は
肉を多くつけてあるので、改造範囲は、かなり自由度があるという。加工前のヘッドをコンプリートすることも
可能だと言うから、各チューナーの腕の見せ所かもしれない。

バルブ挟み角は、IN20°、EX20°で、これは4気筒とまったく同じ。
コスワースDFVなど、一連のDOHCの流れをくむ、いま流行りのレイアウトだ。

カム駆動は、チェーンで行っているのはL型と同じだ。ただ、カムスプロケットは、
タイミングプレートと共に、カムに取り付けられている。このプレートの取り付け穴が、
長穴となっており、このプレートを動かしてやれば、無段階にバルタイが取れるようになっている。

現在の排気量は2870ccであるが、ストロークを短くして2.5L仕様も考えているようだ。
これは、アメリカのIMSA仕様として登場する可能性がかなり強い。さらに3Lモデルも
考えているという。

このエンジンは、現在腰下はすべてノーマルかレースオプション品を流用している。

とくに問題なのは、クランクシャフトの剛性だろう。4気筒と6気筒では、
比較にならないほどの力が加わるだけに、現在の加工品では、高回転域では不安があるだろう。

目標のパワーは400馬力だという。当面は、耐久レースを目標に仕上げていくようだ。

当然、前述したクランクシャフトをはじめ、コンロッド、ピストンは新開発していくことになるだろう。

市販は秋以降になる予定だが、ヘッドまわりのキットで約160万円。キャブ、フライホイールを
除くコンプリートで235〜240万円となりそうだ。6気筒エンジンは、4気筒に比べて
使う範囲が広くなるはず。レース、ドラッグレースなど、その仕様もかなり変わるものに
なるはずだ。最終的には、そこまで考えたチューニングをしていく方向という。

 


後半の記事については、たぶんCARBOY初代編集長の橋本さんが書いたものだと思ったのだが、
橋本さんに、ここまでの知識があったか?と思うと、ライターの中田さんかもしれない。
ま、それは、それとして、非常にわかりやすいテクニカル原稿だと思った。
チューニング雑誌をやっているライターのひとで、こういうふうに、平易に、しかも的を押さえた
原稿を書ける人が、どれくらいいるだろう?
取材がしっかりしているのだと思う。

とくに、感心したのは、

シリンダーヘッドはアルミ合金(AC4C)製。
このツインカムの特徴は、ロッカーアームを介して
バルブを開閉していることだ。
この最大の利点は、シム調整がいらないことだ。
タペットを調整するのに、ネジでやればいいことになる。ごく簡単だ。
当然、リフターよりもロッカーアームのほうが重いが、
実際に作動しているときの慣性質量は、ロッカーアムの
ほうが少ない、と言った点に目が向けられたようだ。
これは4気筒エンジンからのノウハウのひとつといえる。

という件。

ライターで、こんなことを知っているヒトはいないと思うから、
岡崎さんからの取材をもとに書いているのだろうけど、
ここ、TC24-B1を語るうえで、非常に重要なポイントだと思う。

一度でも、シム調整をしたことのあるヒトなら、
このポイントを理解していただけるはず。

 

藤本みたいに、適当に聞いて、適当に書いているのとは違って(笑)
しっかりと取材をして、そのメモを見ながら、推敲しながら書いたものだろう。
ちょっとだけ、頭が下がりました。

 

そして、それ以外の記事は、OS技研の岡崎さんが、自身で書かれたものだと思う。
当時の、岡崎さんの情熱が、ヒシヒシと伝わってくる原稿だと思います。
直接、岡崎さんと話したことがあるヒトなら理解できると思いますが、
岡崎さんは、エンジンに関して、非常に独創的な価値観を持ち、
それが、独自のフィールドから出てきていることが、しっかりと感じられるんです。

こういう感じを持ったヒトというと……HKSの長谷川さんと柿本さん……かなぁ。

とまれ、当時、OS技研という側溝に柵のない岡山県の企業が、
作り出したアルミ合金製のヘッドユニット。
東京発表会のときに、岡崎さんと、女優さんのような奥さんが、
誇らしげに会場におられたことを、昨日のように思い出します。

後日、岡崎さんとお会いしたときに、
以前から聞きたかったことを質問した。

「ヘッドのアルミ材質なんですけど、どんな配合だったんですか?」
「…………その辺にあったやつ」

「浸炭は、どんな具合だったんですか?」


「あれだけの大きさのものを浸炭する機械がなかったんで、
知り合いの釜に入れてもらったんだ(笑)」

上記の会話を聞くと、いい加減なような印象を受けるかもしれないが、
岡崎さんという存在を知っているヒトなら、その適当な言葉の裏に、
アルミ素材を凝視したり、叩いてみたり、いろんなことをしている岡崎さんの姿や、
浸炭設備の稼働具合について、知り合いを閉口させたり……ということが浮かんでくるかもしれない。

そんな、こんなの、OS技研製TC24ヘッドであります。
どうか、ご一読くださいませ。

 


OS技研
〒702-8001 岡山県岡山市中区沖464
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