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グイグイ村尾という存在

村尾真吾(東京)

ドリコンGPにおいて、貴重な存在というものがある。
優勝したドライバー、画期的な走法を編み出したドライバー、
そして、常識を覆したドライバー……そのひとりが、村尾真吾である。

 

 

勝てなかった。どうしても、勝てなかった。

ドリコンGPが始まって、すぐに参戦。大垂水峠の根性くんと呼ばれた村尾真吾だが、
あと一歩、もう少しのところで、優勝には手が届かなかった。

同じようにドリフトをしていた織戸くんは、アレヨアレヨというまに、
ドリコンの顔となり、その他のメンバーも、ドンドンと有名になっていった。

だけど……勝てなかった。

どうしてだろ? どこが足りないんだろう?

村尾真吾は考えた。
ナニかが足りない。俺に足りないのはなんだ?

1992年エビス。ドリコンGPが始まって4年目の最終戦。
それまでに、村尾真吾が獲得したクラス優勝のトロフィー数は7個になっていた。
だけど、グランドチャピオンが取れない……しかしながら、繰り上げ当選で走った
筑波のオールスター戦に勝ったことで、村尾真吾に変化が起きた。

この日のエビスサーキットの最大の難関は、半分乾いて、半分は濡れている
路面だった。ギャラリーコーナーに入るまでは濡れていて、コーナー途中から
ドライになる。そういうコンディションだった。

村尾真吾が、140km/hからのサイドブレーキを引いたのは、このエビスが最初だった。

勝てなかった村尾真吾が、1992年の初戦で勝ったのは、ストレートを駆け上がってきて、
スピードメーターの針が140km/hを指している時点で、サイドブレーキを引いた結果だった。
いまなら、みんなができる。もっとスピードを上げて、サイドブレーキを引く強者もいる。
だけど、最初のはじめにこんなスピードでサイドブレーキを引いたのは、村尾真吾だったことは、
記憶にとどめておきたいと思う。

考えてみても頂きたい。高速道路を140km/hで走っていて、
そこでサイドブレーキを思い切って引く……考えるだに恐ろしい結末が待っている。

村尾自身も、そんな恐ろしいことは考えたこともなかった。でも、それまでの自分と
決別するためには、どこかで吹っ切れる必要がある。で、1992年の開幕戦エビスで、
ストレートでサイドを引こうと思った……が、引けない。恐怖心が勝ってしまうのだ。
で、最後の最後に、サイドブレーキを引くんじゃなくて、サイドブレーキを握ったまま、
立ち上がってみることにした。「オリャーーーーッ!!」自分自身に気合を入れて、
バケットシートに座っていた状態から、一気に立ち上がった。

もちろん、4点式のシートベルトに固定されているので、
ドライバーが立ち上がるという行為は不可能。
しかしながら、そこは「気持ち」なのだ。立ち上がった「気持ち」で、
一気にサイドを引いた!! その結果としての初戦優勝だった。

 

 

だが、最終戦、グランドチャンピオンを決める戦いでは、この140km/hサイドだけでは勝てない。
そう感じていた。たった1年、いや半年で、140km/hサイドは、常識となり、だれもがチャレンジする技になっていた。

で、村尾真吾が考えたのは、通常なら、140km/hからサイドを引き始め、
ピットレーンあたりから横になってコーナーに進入。そして、
その後にクリップを狙ってブレーキで車速を調整するというのが、これまでのパターン。

だけど、今日の場合は、そういうパターンでいくと、乾いた路面に入ってしまうと、
予想以上に車速が落ち込んでしまい、迫力にかけてしま。おまけに、
今日の村尾シルビアは、タービンブロー寸前。進入スピードを上げることはできないし、
ライバルの中井くんも競りあいでは負けていない。

同点決勝の末、村尾真吾が選択したのは、ノーブレーキ作戦だった。

140km/hからサイドを引き、その後のブレーキング操作による車速調整を止めてしまった。
怖い、たしかに怖い。しかしながら、このときの村尾真吾には、他に方法がなかった。

最後の最後に見せた、根性くんの大博打が成功して、村尾真吾は、1992年度のグランドチャンピオンとなった。

この記事の最後には、こう書かれている。

『このあいだ結婚したばかりの奥さんが、ピットで泣いている……グランドチャンピオンの
トロフィーを積んで家に帰る途中のこと、助手席の奥さんが、ボソッとつぶやいた。
「これで終わったのね。これでもうドリコンに行かなくてもいいのね?」……そのときの
村尾真吾の答えは……聞き漏らしてしまいました』

そんなわけねーだろー。その後の村尾真吾は、ドリコンにチャレンジこそしなくなったものの、
ドリフトにまつわるイベントに、足繁く通うこととなる(笑)

 




 



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