21世紀CB職人伝
日本には世界に類を見ないほど
細やかで高い技術力と
熱い職人魂がある。
21世紀職人魂!JAPANESE CRAFTSMAN列伝VOL.18……
ONE OFF PARTS
手持ちの設備をフル活用して
だれも作ったことのないPARTS製作に挑む!!
チューニング業界にあって、よそでは製作していないパーツを独自の方法手作り出すデザートイーグルは特異な存在のシヨツブである。
R B25DET 用の6 連スロットルキッ卜や、ワンオフっぽいコレクタータンク、独特のモノコックタワーパー 、インコネル製のEX マニホールド、電動エアポンプ式のキャタライザ……数え上げればきりがない。そして大倉さんが作りあげてきたパーツはどれも、通のチューナーに支持されてきた。
デザートイーグルの設備は、ブロショップのそれとさほど変わらない。だが、それらの機材をいろいろと組み合わせて、独特のパーツを生み出してきた。今回取材時にも「なんだこりゃ?」とびっくりする製品を開発中だった。
それは、消音材を入れなくても消音できるマフラー……であります。
一般的には、エンジンの爆発音を消音するためには、隔壁で仕切ったり、パイプ径を細くしたりするのに加えて、例外なくステンレスウールや、グラスウールで消音を行っている。だが、今回大倉さんが考案したのは、パンチング構造を持つステンレスの板を丸めて、円筒形にしたものを様々な口径で組み合わせて消音効果を得ょうとするもの
。
消音の理屈は非常に難しいのだが、マニホールド→フロントパイプと通ってきた排気が、メインマフラー部分に入ったところで大口径のパンチング部分で膨張。そこでいったん排気の流れを分散し、再度テールエンド手前で集合させるという構造で、排気の流速変化を利用した消音が行われる仕組みだ。
そのため、低回転時はそれほど消音されないのだが、回転数が上がれば上がるほど消音効果を発揮するという結果が得られている。
ノーマルタービン仕様なら、このままで十分保安基準に適合する。だが、チューンドターボの触媒なしではまだちょっと排気音が大きい。現在はこのあたりの問題を改良しているところだという。また、音質の問題も課題のひとつであるようだ。
「私の場合、自-分が納得できるものを作るのが大前提なんです。作り物にしても、製品にしても、自分が「力ツコイイ! 」と思えなければ、本当にイヤになってくるんです。資金力もないですから、新しい機械や複雑な加工ができる機材を導入することができません。今あるボール盤や旋盤、高速カッターや溶接機といった一般的な機材を.とうやって使ってやれば自介主宅える形状、強度が実現できるのか?常に悩んでいます。 たしかに前述したマフラーシステムも、ステンの。ハンチング板をロールさせて溶接する、その繰り返して作られるものだ。
また、膨張管製作にしても、水圧をかける装置さえあれば、あとは自分の考える形状を生み出すためにアルミ板をたたくための鉄の台が必要なだけ。それで、様々な形状のものが可能となる。これを溶接して研磨し、パフで仕上げて溶接の自を目立たなくすればOK なのだ。
昔から職人が作り上げた製品は、「いったい全体どうやって作ったんだ?」と思わせられるものだ。だが、実際の工程を明かされると……「エッ、こんな簡単な工程を組み合わせて作れたの?」とピックりすることも多い。大倉さんのモノ作りは、まさにそういう世界の話である。
チューニング業界は、実際に作業を行うシヨッブに加えて、そこにパーツを売るメーカー、外注で仕事を依頼される専門工場など、様々な職種か絡み合って形成されている。だが、大倉さんのデザートイーグルは、そのどれにも属さないし、どれにも当てはまる要素を持っている。
たった一人で仕事をしているために、いろいろな回り道をすることも多い。後から考えれば、どうしてもっとスムーズな開発速度立夫現できなかったのか?と、自分でもあきれることも多い。
だけど、だからこそ、ほかではお目にかかれないようなパーツや製が生まれてくる。そして、当たり前の加工法や製品であっても、大倉流に処理されるとずいぶんと違ったモノになることも多い。
左上で紹介しているサイドシール研磨機は、もともとはトッブフユーエルレー シングとヤシロエンジニアリングが考案して、ワンオフ的に製作したもの。だが、それを雑誌(CBですよ……)の記事で見た大倉さんは、自分流のアイデアを入れて、まったく違うものを作った。
昨年のTuningPOWERSでライジングのレーザーカットチタンを自にしたときもそう。手切りで同様のものができる冶具的なものを作り、異径チタンパイピングを製作できるようにした。
要するに、刺激を受ければそれをきっかけに、元の製品を換骨奪胎して、デザートイーグル流にモディファイしてしまうのだ。しかも、仕上がった製品は非常に品質か高く、綴密。
今開発中のマフラーシステムが、今後とのような開発経過をたどって、結果的広とんな性能を発揮するのか? そして、その画期的な消音システムがエンドユーザーに受け入れられるのか? 非常に楽しみだ。
膨張管を使ったパルジシステムは、今後のチューニングカーのエンジンルームをガラリと変える可能性を秘めている。そういう意味では、デートイー グルという小さなメーカーは、今後のチューニング傾向の発信地であると考えてもいいだろう。しかもその方向性や製作方法は、たっだけ……存在する。(藤本慎一)
これは大倉さんが考案した、タコ足などの,冶具を作
るための機材。レーザーでカットした円盤を使い、
どのようにエンジンルーム内を通るかを再現する。
マフラー内部と外部の筒の問にセットして断熱する
カーボンウール。カーボン樹脂だけに熱には強〈、
耐久性もあるし遮熱性能も高い。
いろいろ記試してみたステンレスウール。市販のマ
ものも使って見たが、どれも
消音効果と耐久性がイマイチだと半l断した
独特の構造を持つ、ステンレスパンチングの異径円
筒を組み合わせた消音器の内部部品。径の異なる2種
類を紘み合わせてインナーを構成する。
異桂のインナーパーツを、さらにパンチン
グメタルでもう一度くるむ。この外側にカ
ーボンウールとステン板がくる。
アルミ板を溶接してもなか
状にし、水て圧力をかけて
可変口径の膨張管を製作す
る機枕元の形状を変更す
ることで、様々な形のパイ
プが作られる。
ローターのサイドシール研磨機
■なにやら厳しい、アルミの塊から削り出された機械
だが、これは13Bに組み込まれているローターのサイド
シールを研磨する機械。コーナーシールと同径のリュー
ターがセットされ、サイドシールの研磨面にRをつける。
……ここまで聞いて「ウン、そりゃあスゴイ!」とうな
った人は、相当のRE通。ま、初期なじみをうまく取り、
それ以降のクリアランスを管理するためのものだが、こ
んなのを量産(といってもl 日台だけだが)してしまうの
は大倉さんならでは。ピストンリング研磨機にも挑戦し
たが……これは実現しなかった。
大倉忠徳【DESERTEAGLE】
FACTORY DESERT EAGLE
ファクトリーデザートイーグル
TEL&FAX 025-260-1189
〒950-2063新潟県新潟市西区寺尾台2丁目8-4
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