RB20改310度カム&インナーシムNA仕様

NER(千葉)

CARBOY2000年1月に掲載された、NERの強烈なNAチューン。

 このエンジンを見てびっくりしたのはふたつの要因がある。ひとつは、スロットルをセットするインマニである。このインマニは、中島さんがインゴットから削り出したもの。それも、リューターで……。このひとつの話で、ぶっ飛んでしまった。そして、もうひとつは、純正風のホース類。ステンメッシュホースを使わずにセットされているホース類は、すべて曲がりや直径等をチェック後、解体車をあさって見つけ出したもの。ちょうどいい角度&口径のものを見つけるには、気が遠くなる程の時間が(笑)

    ※以下、当時のまま掲載させていただきますので※
    ※価格、仕様等は変更されている可能性が大です)※

ナチュラルアスピレーションに凝る!
310度カム&インナーシムNA仕様
サウンドに惹かれてNAレスポンス追求



 ポートを削っている最中に、フッと違うことを考えた。「こういうポート形状のエンジンって、どういう音がするんだろう?」そう考えると、もうダメだった。ターボエンジンにするつもりで購入していた東名パワードのピストン&クランクセット、タービン、それらのパーツを片づけて、NAチューンに180度方向転換してしまった。
 中島さんは、現在25歳。千葉でNER(ナカジマ・エンジン・リコンディション)というチューニングショップのチューナー&オーナーである。リコンディションの意味は、修理する、再生するということだから、エンジンをモディファイすることを主目的にしていることがうかがえる。98年の5月から始められたNERは、バイクのエンジン、そしてクルマのエンジンのNAチューンを中心に活動しているお店なのだ。
 今回紹介するR32スカイラインも、その心臓部にRB20DE改のNAスペシャルバージョンが搭載されている。当初はターボモデルという予定で進行していたのだが(けっこう時間がかかっている)、途中のポート研磨時にNAのエキゾーストノートを聞きたくなったという理由で、NA仕様になったわけだ。
 だから、腰下部分は、ボアアップのみ。本来なら、NAチューン時に排気量も稼いでやりたいところだが、予算の関係もあって、それほど排気量は大きくなっていない。
 だが、なのだ。その分純粋にチューニングという作業、パーツの組み合わせには、ジックリと取り組んでいる。まず、最大のポイントは、ラッシュアジャスター仕様をインナーシム方式に変更していること。


 RB26DETT用のリフターを使い、長めのステム長を持つビッグバルブがセットされている。これにより、正確なバルブタイミングで駆動することができるようになる。
 そして、次なるポイントはピストン。写真で形状を確認してもらいたいのだが、このピストンを選んだ理由は「スキッシュ形状のことと、ピストンのピンハイトが短いことが魅力でした。ちょっとアリアス社製というのがひっかかるんですが(笑)バイクのエンジンをやっていたこともあって、この形状のピストンなら、けっこういい音を聞かせてくれるかな?と思いましたね」
 その言葉通り、もともとがSUZUKIのGSXーR1100用のピストンのピンハイト(ピストンピンからピストントップ部分の寸法のことです)がノーマルの32から25と極端に短くなっている。
 このピストンを使うために、そしてRB20DEコンロッドと組み合わせるために選んだコンロッドが、BMW320用のもの。形を見てもらえばわかると思うが、非常にシッカリとしていて、ノーマルとは思えないほどカッコいいコンロッド。
 これに310度10・8リフトのカムシャフトを2本セットして、NISMOの強化バルブスプリング、そして前述したロングステムのバルブ(IN3φ/EX2.5φビッグバルブ)でNER流のRB20改が完成する。圧縮比は12・2だ。


 と、ここまで聞いていただいたキミに予想してもらいたいのだが、こういうエンジンをどういう方式でコントロールすればいいんだろうか?
 ターボならROMチューンという考えもある。エアフロメーターからの信号を基にして、燃料を決定していけばいいのなら、セッティングは楽になる。だが、こいつは独立吸気方式のNAなのだ。吸入空気量を計測する方法はない。
 一般的にはスロットルポジションセンサーをベースにして、細かくセットアップしていくしかない。おっと、モーテックやハルテックというフルコンを使う手もある。
 だが、中島さんが選んだのはカナダ生まれのDEMS(デムス)というフルコンピュータ(発売元 IRC 043ー255ー6693 NERでも扱っている)である。
 これはコンピュータ本体だけではなく、水温、吸気温、スロポジ、クランクピックアップセンサーやインジェクタードライバー、配線、そして同時点火システムがセットになっている、NAにとっては待ってました!の優れものコンピュータ。
 4気筒なら29万8000円、6気筒は31万8000円。こいつはけっこうその気にさせてくれる価格といっていいだろう(なにしろ、同時点火システムってけっこうするし、配線&センサーまで入っての価格だ)。こいつでコントロールするわけだが、そのセッティング方法を聞いていくうちにわかったことがある。


「このコンピュータはキャブと一緒だ!」ということである。もちろん、完全なインジェクションだし、デジタル制御なのだが、セッティングのやり方がキャブみたいなのだ。
 設定された回転数毎に、燃料のセッティングをしていくわけだが、打ち込み方式は256を頂点とする数字。1から255までの範囲で燃料の濃さをセットしていくのだが、10単位、1単位でボタンを押していくことで燃料の増減を行なう。
 といっても、走行中にそういう操作はできない(できなくもないだろうけど、けっこう危険)から、走行中のセッティングは、シフトレバー付近にセットされたミクスチャーノブを回すことで燃料の増減を行なう。そして、その結果、ベストな状態となったら、そのミクスチャーノブの位置に応じて(セッティング開始前はセンターにセットしておく)データを打ち換えてやるのだ。そして確認走行。これでOK。
 ま、もちろんのことだが、各回転毎にセッティングをする必要がある。だが、キャブのジェットを選んでいくような感覚で、走行しながら自由に変更できるというところが簡単感覚で、非常にいいのだ。

 NERのRB20改は、このDEMSコンピュータ制御の6連スロットル仕様。TWM社製の48φ独立スロットルを3箇使い、それに中島さん自身がリューターで削り出したSPLインマニにセットする。
 というところでこのマシンの吸気音はどうか?という話に移ろう。中島さんがこだわりったNAサウンドは……いい具合です。まだまだ最終段階までセットアップされていないということだが、NA独特の吸気音を響かせながら、排気量のことも意識させないほど軽快に走ってくれます。こうです。そうです。NAって、こうなんですよ……絶対スピードじゃターボには敵わないかもしれないけど、全開にする気持ちよさ、吸気音、リニアなトルク変動、NAじゃなきゃ味わえない世界が、『NER流RB20改』には立派に息づいております。やっぱりこだわったNAってのはいいね!! 



写真キャプション1 
●独立方式のスロットルをセットしたRB20DE改。インジェクターは各気筒1本ずつセットされていて、コントロールはDEMSフルコンピュータで行なっている。

写真キャプション2 
●カムシャフトはIN/EX共に素材から削り出された310度の作用角を持つ。リフト量は10.8。NAの魅力をたっぷりと味わうために、このカムシャフトを選択した。

写真キャプション3 
●インテークマニホールドは、3分割の削り出し……というか、アルミの塊を大体カットしてから、リューターで仕上げた(!)。こりゃあもう気が遠くなるほどの手間仕事です!!

写真キャプション4 
●独立式のスロットルはTWM製の48φの口径を持っている。各気筒にセットされているインジェクター用のハーネス等もDEMSコンピュータのセット内容に含まれている。

写真キャプション5 
●スロットルボディが若干上向き気味なのとポート形状が曲がっているせいで、バルブこそ見えないものの、可能な限りストレートポートに近づけられている。

写真キャプション6 
●EXマニは一般市販のタイプがセットされる。今後のセッティング具合によっては、ワンオフ物を考えている。とりあえずは先立つ予算が……大きな問題であります、ハイ。

写真キャプション7 
●DEMSコンピュータのセットには、同時点火システムが含まれている。もちろん、コード、コイルがセットされているので、点火系のセットアップは非常にやりやすい。

写真キャプション8 54*2
●バルブサイズは、ノーマル比でIN30→33φ、EX26.5→29φと拡大されている。INはホンダC32A用、EXは三菱シャリオ用を加工して組み合わせている。

写真キャプション9 
●これが根性リューター仕上げのインマニである。コイツを見て、リューター仕上げと見破る人間はちょっといない……いや、考えもしないよな〜。強烈なインパクトです。

写真キャプション10 
●ヘッドに組み込むパーツが勢ぞろいした。ラッシュ方式からインナーシム方式に変更してあるのだが、リフター&リテーナーはRB26用を流用して長めのバルブセット。

写真キャプション11 
●ピストンはバイクのGSX-R1100用のアリアス社製83φ、それに組み合わせるコンロッドはどこかで見たことがある……BMW320用をブッシュ偏心させてセットアップしてある。

写真キャプション12 
●中島さんがすっかりとハマっているフルコンピュータシステムDEMSの本体。各種コード類はここに接続される。NAコンピュータとしては非常に使いやすい。

写真キャプション13 
●日本精機のNEWシステムであるデイジーチェーン方式でセットするステッピングモーター方式のメーター。その向こうにあるのはDEMSのデーターチェンジ用システム。

写真キャプション14 
●任意の回転数を指定して、その部分の燃料、点火の変更を行なうコントローラー。増減が一目でわかり、セッティングしながらその結果を入れていくことで最適なデータができる。

 

NER HR32SKYLINE TUNE DATA


RB20DET改NA仕様
GSX-R1100用アリアス83φピストン
310度カム×2 10.8リフト
IN33φ/EX26.5φバルブ
NISMOバルブスプリング
圧縮比12.2:1
TWM48φ独立スロットルボディ
オリジナルインテークマニホールド
DEMSフルコンピュータ


NER
〒262-0004 千葉市花見川区大日町
http://www.ac.auone-net.jp/~ner
mail: ner@ab.auone-net.jp


 



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